難波鉦異本(上) の商品レビュー

もりもと崇(著者)

かっこいい和泉姐さん！

[なにわ式部]

江戸時代初期の大坂新町遊郭のお話です。それだけでも特異ですが、もっと特異なのは主役の遊女和泉姐さんです。
たいていの遊女物、特に男性誌のものは、か弱く泣きぬれ、それでも男に頼らないと生きていけない女たちが、やっぱり男に裏切られてさらに不幸に落ちていく…なんてうんざりするような展開が多いですが。
和泉姐さんは違います。
男なんてハナッからあてにせず、情に流されずに蓄財に長ける。頭もよければ腕っぷしもいい。生命力の強いたくましい女性です。
今ならインターネットで、日本中の博物館や学者の論文など調べ放題でしょうが、掲載当時は大変だったでしょう。衣装や髪形も吉原ものとは全然違うし、相撲などの文化も今とは違うので興味深いです。
でも男性読者には、泣くだけで頼りない遊女の方がよかったのかなあ。レディコミだったらもっと続いてたかも、と思うと残念です。

2020/02/18

　大坂新町　作者が「資料の圧倒的な少なさ」で選んだ大坂の遊郭。他の遊郭と違ひ、遊女がいろいろでお外へ行ける、てふかすごいところにあったので美人のおねいさんを一般庶民が冷やかしに、江戸や他のと違って比較的容易に、できたとか。
　さう言ふ、一応きちんと地獄で、ちゃんとしたサーヴァイヴをしないと普通に死ぬ、処の、天神で止まってゐる和泉さんと、その禿、簓の周りの、お女郎な生活。

　ささらどんのおでこがよい。

　その地獄での、お女郎同士のどろどろと、娘さん同士の友情が、いかにも見てきたやうに書かれる。

　ちゃんとカヴァー取ると黄色い。うむうむ。

　お相撲さんの関係と言ったら、南方熊楠が、英国アカデミーで「まだ出てないシチュ」を捜す会にあった時、そこでは「娘によるホモ行為の強制」は出てゐた(後にアラビアンナイトにあるのが判明)とか言ってゐたが、あー、なんかー、似てる感じがー。

　井原西鶴さんの、厳密には二代目も、使はれ方がおもしろい。

2013/11/10

一六八〇年に刊行された大阪新町遊廓の遊女評判記『色道諸分 難波鉦』を底本とした漫画です。虚実織り交ぜて描かれた遊女の世界に、夢中になりました。京都・島原、江戸・吉原（新吉原）とも異なる、独特の立地と空気と遊び方。場所柄・職業柄、エロ描写も登場しますが、そちらよりむしろ、文化への興味を刺激されました。微細な描き込み。大胆な構図。とても面白いです。

2010/01/30

「難波鉦異本」ついに念願の完全版！！
　この日を首長竜になって待ってました！
　おまけに単行本初収録作品やら対談やら収録されていて、ファンも大満足！の内容なのですが、‥‥もそっと装丁は何とかならんかったんだろうか？
　ちょっとレジに持って行き難いです。前の方が良かった。