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ヤーコプ・グリムとその時代 の商品レビュー

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2014/06/27

ヤーコプ・グリムを中心として、その前後でヘーゲルとハイネが論じられるという構成をとっている。まず、ヘーゲルにおける「ポジティヴィテート」概念の両極性が論じられる。すなわち、若きヘーゲルにおける宗教の「既成性」への批判と、『法哲学綱要』における「実定性」に対する積極的評価から、ヘー...

ヤーコプ・グリムを中心として、その前後でヘーゲルとハイネが論じられるという構成をとっている。まず、ヘーゲルにおける「ポジティヴィテート」概念の両極性が論じられる。すなわち、若きヘーゲルにおける宗教の「既成性」への批判と、『法哲学綱要』における「実定性」に対する積極的評価から、ヘーゲル法哲学を「実定性」概念を中軸にして読解される。それから、実定法や当時の普通法(ローマ法)に背を向け、ひたすらドイツの固有法にこだわるグリムの法学が紹介される。もちろん、グリムにおいては法・言語・歴史の研究は一体を成しており、ゲルマン法の研究はそのままドイツ語・ドイツ(民族)史の研究を意味した。それをグリムは三月前期に「ゲルマニスティク」と定式化し、総合的な文化学を樹立することになる。そのような三月前期の法学の諸相を踏まえたうえで、歴史法学(サヴィニー)と哲学的法学(ヘーゲル、ガンス)に対して距離を取りつつ法学の「悪夢」にとりつかれ続けたハインリヒ・ハイネの法思想が紹介されることになる。ハイネの詩作活動には、とりわけ改宗して「ヨーロッパ文化への入場券」を手に入れたガンスに対する批判、それを通じた自己批判が投影されているとされる。

Posted byブクログ