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泥棒と犬 の商品レビュー

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2014/03/07

 1961年発表。エジプトの作家、ナギーブ・マフフーズ著。サイードは富を再分配するという思想のもとに泥棒をしていたが、妻と彼の手下により密告されて逮捕。出所後、その二人と、更に彼にそのような思想を教え込んだ元革命家のラウーフを殺そうと企む。  文章自体は非常にあっさりとしていて読...

 1961年発表。エジプトの作家、ナギーブ・マフフーズ著。サイードは富を再分配するという思想のもとに泥棒をしていたが、妻と彼の手下により密告されて逮捕。出所後、その二人と、更に彼にそのような思想を教え込んだ元革命家のラウーフを殺そうと企む。  文章自体は非常にあっさりとしていて読みやすかった。ストーリーも特別複雑ではない。しかし主人公の独白や老師のセリフになると、少しイスラム圏っぽい雰囲気が出てくる。特に老師は短いながらかなり意味深長な言葉をつぶやく。「この世の悪党どもが三人だけだったとしたら、おめでたいことじゃ」というセリフは印象深かった。サイードと老師の見渡すスケールの違いがよく表れている。  比喩には鼠や犬など動物がよくあらわれる。逆に都会的なモチーフは見受けられない。エジプトという環境がそうさせるのだろう。  また、墓場の描写が興味深かった。小説全体の暗喩になっている。悪党を追うサイード、サイードを追う犬。犬にしてみたらサイードは悪党なのだろうが、サイードは、出所後の行動は犯罪だとしても、本来悪事のために盗みを行っていたわけではない。そう考えるとそれら三者の行動が全て不毛に思えてきて、老師だけがジッと物事を見据えているようでならない。

Posted byブクログ