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地球生命は自滅するのか? の商品レビュー

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2018/06/07

ガイア仮説とそれに基づく盲目的な環境保護主義を批判し,生態系や地球のシステムは生命にとって望ましい環境をむしろ破壊する方向に作用すると述べる,メデア仮説を主張した一冊.ガイア仮説の中でも特に,「母なる地球は自然な姿であれば,環境を生命にとって望ましい方向に変化させ,また保っていく...

ガイア仮説とそれに基づく盲目的な環境保護主義を批判し,生態系や地球のシステムは生命にとって望ましい環境をむしろ破壊する方向に作用すると述べる,メデア仮説を主張した一冊.ガイア仮説の中でも特に,「母なる地球は自然な姿であれば,環境を生命にとって望ましい方向に変化させ,また保っていく」という発想や,それから派生したニューエイジ的な考えに対する批判を展開する.生命は基本的に個体の生存と増殖しか考えていないことから,それ自体最終的に自身の生存に適した環境の破壊をもたらすというのが著者の主張.実際に,過去度々起こった大量絶滅をもたらした環境変動も,元を正せばその時代の生命によってもたらされていた.地球史の中でも相当長い期間に渡って,細菌の活動により,ほとんどの生物にとっては生存できない,硫化水素の海(キャンフィールドの海洋)が形成されており,それによって進化が停滞していた可能性があるというのは知らなかった.自身の生存に適さない環境下で,環境に合わせてダーウィン的進化により適応する真核生物に対して,化学物質の放出などを通して環境の変革を試みる原核生物という対比を出し,その意味で人類は原核生物的であると述べているのが面白いと思った.目下の二酸化炭素上昇に伴って予想される環境変動で,現在の生態系が大打撃を被るのは確かであるが,長期的に見ると地球そのものは太陽の活発化によって気温が上昇し,生物を通じた炭素の地殻固定が促進されることから,5億年ほど後には大気から二酸化炭素が枯渇することで植物が絶滅し,生態系は終焉を迎える.それを防げるとすれば人間の工学技術が必要であり,メデア的地球に対してそれこそが反メデア的なものとして作用すると結論する.ただ,生物が恒星間を移動し新たな星で存続するためには,物理学的障壁が大きすぎ,それは人間の工学技術で解決が望めそうもないことであるから,そのような形で地球生命が存続することには懐疑的である.

Posted byブクログ