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コミュニティ自治の理論と実践 の商品レビュー

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2020/01/26

ピックアップと一言: ・町内会をめぐる理論三段階…「近代化論」「文化型論」(近江哲男・中村八朗)→生活集団論(鈴木榮太郎・有賀喜左衛門)→「住民自治論」(中田実) →町内会は近代化に逆行すべきもので、解体されるべきものであるという「近代化論」、町内会の存続の根拠を、住民生活に不可...

ピックアップと一言: ・町内会をめぐる理論三段階…「近代化論」「文化型論」(近江哲男・中村八朗)→生活集団論(鈴木榮太郎・有賀喜左衛門)→「住民自治論」(中田実) →町内会は近代化に逆行すべきもので、解体されるべきものであるという「近代化論」、町内会の存続の根拠を、住民生活に不可欠な生活機能を果たすことにあるとする「生活集団論」、地域社会を人間の能動的行為を拘束したり、抑制するものとしてではなく、逆に、個別化した現代の生活営為を計画的な共同行為へと転換するための、独自の意味をもつ領域として描く「住民自治論」は、敵対する議論ではなく、時代の流れであったことがよく分かりました。考え方を固定せず、常にバージョンアップしていかなくてはいけませんね。 ・コミュニティ自治の動きを基盤として、さらに2000年代に入った現在、それが市政に大きく反映されることとなるに至っています。かつては自治体がノータッチであった、コミュニティ計画などを市が支援したり、まちづくり協議会とその自主的施設運営をサポートしたり、さらには公職選挙法を用いてのアマチュア議員制の設置という点で、コミュニティの動向が市の一般制度に組み込まれているということです。現在、「地方分権一括法」を進めてきた官官分権的動向、「新たな地域住民運動」、そして、自治基本条例制定にみられる市町村での「自治立法」のムーブメントが並走しています。 →「地方分権一括法」が上からの改革、「自治立法」が下からの改革、自治体のOSを本格的に変えるような、これまで未曽有の展開が起きている、ことにワクワクしますね。 ・現在、アメリカ中の10万人規模以上の市の70%が、条例等で公式に承認された「ネイバーフッド・カウンシル」(コミュニティ市民議会)を立ち上げており、コミュニティ・プランニング(住民の手によるコミュニティ計画)を採用しているとされています。 →本書ではアメリカの事例が多数載っていますが、とても先進的で参考になります。 ・「すべての公共サービスを行政が担うことは不可能になりました」。我孫子市は2006年3月、市のホームページに、この衝撃的な一文を載せて、市のすべての仕事(1,185事業)の内容や事業費などを公開し、代わりに引き受けてくれる企業やNPOを募集し始めました。 →実際に採用すべきとされた提案は34件になったそうです。まさに住民自治(協働)が大きな動きとなって現れ始めました。 ・日本の自治基本条例は、団体自治(行政+議会)と住民自治(住民)の両輪で進むことを大前提としています。これまで多く話題になってきた「顧客」の視点からの行政経営・行政評価を超えて、住民が行政を「所有」しつつ、地域社会をコントロールするという最新で、かつ根本的な哲学と通底したものを踏まえていると、世界的にも高く評価できると考えます。 →NPO法人公共政策研究所(http://koukyou-seisaku.com/)によると、全国の自治基本条例設置数は390自治体(2019年12月1日現在)となっています。条例制定まで必要かという議論はあろうかと思いますが、地方自治のあり方が変わってきていることはまちがいありません。 ・顧客中心主義、とりわけ「住民によって所有される行政」を起点としての本質的な行政改革を行うためには、地域における健全なまとまり(市民の地域公共圏と地域公共利益の体現)が作られるというコミュニティ自治が極めて大きな要素です。 →新しい時代についていける、住民自治組織(自治協、自治会、町内会)であるために、より一層の努力が求められますね。 感想等: 住民自治(コミュニティ自治)の最近の動向から生まれる、自治基本条例の制定について、理論展開しており、制定に至る実際の現場の作業や様子、具体的なスキームや計画事例などを掲載。自治体職員が自治基本条例や協働に関する業務に携わることになれば、必ず読んでおきたい一冊。 今後地方自治は、団体自治と住民自治の両輪で進むことは時代の流れであり、しっかりとした住民自治の確立になお一層取り組んでいきたいと思う。

Posted byブクログ

2009/11/23

 新しい公共の担い手が待望されている。とりわけ、コミュニティの役割は大きい。その理論と実践をコンパクトにまとめた入門書である。地域経営の変革の道標の一助となることが期待される。

Posted byブクログ