歴史のなかのカースト 近代インドの〈自画像) の商品レビュー
インドにおけるカースト制はとにかく複雑です。 古代インドにもカースト制はありました。ですが、そのインド土着のカースト制を一変させ、より強固なものに変えてしまったのがイギリス植民地政策だったのでした。そしてさらに難しいことに、イギリス植民地統治を生き抜くために自分たちのカーストを...
インドにおけるカースト制はとにかく複雑です。 古代インドにもカースト制はありました。ですが、そのインド土着のカースト制を一変させ、より強固なものに変えてしまったのがイギリス植民地政策だったのでした。そしてさらに難しいことに、イギリス植民地統治を生き抜くために自分たちのカーストを利用したという、インド人側からの働きかけもあったことをこの本では知ることになります。 イギリスをはじめとした西欧諸国と現地のインド人、その双方向の作用があって現在のカーストに繋がっている、そのことを詳しく見ていけるこの本はとても貴重です。 著者はインドのカースト制度は単純化されて語られがちであるということを本書で指摘していました。この本ではなぜそうした単純化したカースト制が語られてしまうのかを歴史的な背景から解き明かしてくれます。
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カーストは常に否定的に捉えられてきたわけではなく、ある人にとってはそれはインド文明の精髄にして最良の分業体制だった。 カーストという概念は明らかにポルトガルをはじめとするヨーロッパ人によって近代に構築されたものに他ならない。 インド社会には近代ヨーロッパの市民社会に見られるような...
カーストは常に否定的に捉えられてきたわけではなく、ある人にとってはそれはインド文明の精髄にして最良の分業体制だった。 カーストという概念は明らかにポルトガルをはじめとするヨーロッパ人によって近代に構築されたものに他ならない。 インド社会には近代ヨーロッパの市民社会に見られるようなアトムとしての個人が存在せず、人はまずもってカーストに生まれることで社会的存在を獲得すると見做された。 村落共同体は小さな共和国であり、その欲するもののほとんどすべてを自らの内にもち、外部との関係からほとんど独立している。
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