つながりゆるりと の商品レビュー
NPO「もやい」傘下のサロン・ド・カフェ こもれびと自家焙煎コーヒー誕生のいきさつと人間模様が描かれている。 湯浅さんの著書はほとんど読んだ。本書は、湯浅さんのことも書かれているかもしれないからちょっと読んでみようという軽い気持ちで読み始めた。正直期待はしていなかった。しかし、...
NPO「もやい」傘下のサロン・ド・カフェ こもれびと自家焙煎コーヒー誕生のいきさつと人間模様が描かれている。 湯浅さんの著書はほとんど読んだ。本書は、湯浅さんのことも書かれているかもしれないからちょっと読んでみようという軽い気持ちで読み始めた。正直期待はしていなかった。しかし、読み始めたら止まらなくなった。そして、何もわかっていなかったことに気付いた。 著者は、大学の課題である3日間のボランティアをする場所として「もやい」を選んだ。「もやい」はホームレスの人達が住居を借りる際の保証人を引き受けている。著者は、その方々がアパートに引っ越した後どうしているか、家庭訪問を始める。そこで、アパートを借りると、ホームレスの頃より孤独になったという話を聞き、居場所作りを始める。そうしてできたのがサロン・ド・カフェ こもれびである。 居場所ができるとそこに人々が集う。その人たちで何かできないか? そうして始めたのが自家焙煎コーヒーの製造販売。複数の人が集まれば、ちょっとした行き違いやいざこざは絶えないようだ。そして、そこに集(つど)う人々は家族と音信不通になっている人が多いので、墓も作ったという。著者の行動力に脱帽する。 さて、湯浅さんに関する記述が2点あった。著者が自家焙煎コーヒープロジェクトを立ち上げようとして回り中に反対された時、稲葉剛、湯浅誠両氏だけは賛成してくれたという。両氏は「もやい」を立ち上げるとき、おなじように無謀だといわれて何人もの人に反対されながら、当人達は「失敗したら自己破産すればいい」と開き直り、みなを呆れさせたそうだ。 湯浅さんも稲葉さんも、支援される人達を見下すような支援者という立場には立たないという。この点は、湯浅さんと福島みずほ社民党党首との対談でも語られていた。また、湯浅さん自身もテレビで語っていた。著者は支援する者とされる者との間に、厳然と一線を画していたというが、それが一般的な気がする。しかし、一方的に支援される者は居場所のなさを感じてしまうことに著者は気付く。 この国で起きていることが生き生きと感じられる1冊である。
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