天孫降臨の夢 の商品レビュー
第1部 『日本書紀』の構想(“聖徳太子”の誕生;『日本書紀』の虚構;実在した蘇我王朝;王権の諸問題) 第2部 天孫降臨の夢(“天皇制”成立への道;藤原不比等のプロジェクト;天孫降臨神話の成立) 天皇制をめぐって 著者:大山誠一(1944-、東京都、日本史)
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久しぶりに面白い本を読んだ。 この分野は門外漢だが、筆者の説得したい内容やその熱い思いがひしひしと伝わってくる。 テレビで紹介されて気になって購入したものだが、既存の文学観に抗い、テキストに書かれたものから歴史を信じるのではなく、読み解いて、発見するという姿勢に感銘。 ちょいち...
久しぶりに面白い本を読んだ。 この分野は門外漢だが、筆者の説得したい内容やその熱い思いがひしひしと伝わってくる。 テレビで紹介されて気になって購入したものだが、既存の文学観に抗い、テキストに書かれたものから歴史を信じるのではなく、読み解いて、発見するという姿勢に感銘。 ちょいちょい入る、学者への批判が辛口スパイスをきかせている。 氏の説は、ロマン派たちになかなか受け入れられないのだろうか、と勘ぐってしまうところも面白さの一つ。
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聖徳太子は実は存在しなかった! 立派な日本史学者による大真面目な議論です。日本書紀の中に出てくる聖徳太子は権力者であった藤原不比等が「大王」蘇我馬子の功績を天皇家の功績にするために用明・推古・崇峻天皇らと一緒に創り上げた架空の偉人!日本書紀以外には、隋書が日本の大王を男子と思わせる書き方をしていることから、推古ではなく、馬子としか思えないという推論。その他、に聖徳太子の功績とされるものを一つずつ論破していきます。反論がないので、定着したと本人は主張しており、説得力があります。このように、古代史が一つの歴史書のみに書かれている場合に、その真実性はもっと疑われて良いことなのかも知れないと思います。少なくとも聖書の記述に対する研究の(疑いの)深さを考えるときに、記紀万葉をもっともっと疑うべきですね。
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日本の王権(天皇制)の性格の環境決定論的理解や、「藤原不比等の陰謀」に還元する記紀神話形成史論など、仮説の上に仮説を重ねていて疑問が多い。
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「聖徳太子はいなかった」 「用明・崇峻両天皇もいなかった」 「蘇我馬子は大王だった」 衝撃的な内容が書かれていた本書。 自分は日本史が専門ではないので、事の真偽はわかりません。 痛感したのは歴史学の科学としての難しさです。 歴史は人間がつくるもの。 歴史を学問として扱うとき、...
「聖徳太子はいなかった」 「用明・崇峻両天皇もいなかった」 「蘇我馬子は大王だった」 衝撃的な内容が書かれていた本書。 自分は日本史が専門ではないので、事の真偽はわかりません。 痛感したのは歴史学の科学としての難しさです。 歴史は人間がつくるもの。 歴史を学問として扱うとき、 その根拠となるのは古文書などの文献と発掘される考古遺物です。 しかし、古文書に書かれていることが事実とは限りません。 勝者は自らを正当化しますし、 勝者に限らず自分に都合のいいことしか書かないでしょう。 正しい正しくないで割り切れるものばかりではありませんし、 個人の日記に客観性を求めることはできません。 国家が編纂する歴史書と言えども、 自分たちにとって正しいことが歴史なわけですから、 それが事実かどうかは問題ないわけですね。 事実じゃなくても真実になってしまうわけです。 歴史は創造されるんですね。 それをやったのが藤原不比等、だそうです。 中身の話のおもしろさはもちろん、 歴史って何だろう? と考えられる本です。
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筆者はあの聖徳太子は実在しなかったという説を唱えた人だった。前半で十年前のその学説を振り返っているが、限られた資料を基にした議論は丁寧で違和感はない。千年以上前のことだから聖徳太子が実在したのか否かを実証するのは難しいだろう。本書では天孫降臨神話も藤原不比等によって創られたとする...
筆者はあの聖徳太子は実在しなかったという説を唱えた人だった。前半で十年前のその学説を振り返っているが、限られた資料を基にした議論は丁寧で違和感はない。千年以上前のことだから聖徳太子が実在したのか否かを実証するのは難しいだろう。本書では天孫降臨神話も藤原不比等によって創られたとするが、そもそも神話はその国民によって語り継がれるうちに着色され膨らまされ歪められるものであり、多かれ少なかれ作り話であることは自明である。学問的に解明し尽くすことは永遠に出来ない(数年前に起きた事件の真相さえわからないことが多いのだから)。 頭から聖徳太子は実在したと信じ込み検証作業さえタブー視する思考停止症候群よりも遥かに健全な自国史に対する姿勢だと思う。僕のような素人日本史ファンを養うにも役立つ。
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[ 内容 ] 隋唐帝国の出現により中国は巨大な龍となった。 おびえる朝鮮諸国と日本。 百済・高句麗が滅び、白村江で敗北した日本の運命は…藤原不比等は新しい王権を夢見る。 その王権は草壁・軽・首の三人の皇子に託される。 日本書紀の中に隠された不比等の政治哲学。 天皇は天孫降臨神話で「神」になり、聖徳太子で「聖」になる。 その「神聖」なる天皇を藤原一族が呑み込む。 藤原不比等の企み、その呪縛は今もなお続く。 [ 目次 ] 第1部 『日本書紀』の構想(“聖徳太子”の誕生;『日本書紀』の虚構;実在した蘇我王朝;王権の諸問題) 第2部 天孫降臨の夢(“天皇制”成立への道;藤原不比等のプロジェクト;天孫降臨神話の成立) 天皇制をめぐって [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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「天皇」はどのようにどうして創られたのか?日本書紀の虚実と成立過程を分析することにより導き出した大胆な仮説を論じる。持統の夢である草壁系の皇統を確立するための権威として産み出された天孫降臨神話。最終的には藤原不比等は、「天皇制」という権威の形で藤原氏権力の盾や飾り、そして都合のよ...
「天皇」はどのようにどうして創られたのか?日本書紀の虚実と成立過程を分析することにより導き出した大胆な仮説を論じる。持統の夢である草壁系の皇統を確立するための権威として産み出された天孫降臨神話。最終的には藤原不比等は、「天皇制」という権威の形で藤原氏権力の盾や飾り、そして都合のよい道具とし、「律令制」という枠組みを統治の手段に使った、という論旨だと理解した。 前半は、著者の以前よりの持論である、創られた「聖徳太子」論が中心であったが、それは「日本書紀」編纂にて必要となった聖人君子的王権としての創造物だという論理であった。 奈良以前の古代史は、史料制約が大きすぎてそれこそ百家争鳴の体であるが、本論では推理の域を出ないものの論理的には受け入れられると感じた。古代史は名前読みや史料の読みが難しく、自分にとってはほとんど言われるがまま状態なんですけどね。(笑) 聖徳太子のほか、用明・推古も存在せず、蘇我馬子王朝があり、隋の裴世清が会った倭王の多利思比孤とは馬子であったとの推論はとても興味深く、そう言われたらそうかもしれないですね、と思ってしまった。高校時代の知識で、自分は漠然と聖徳太子だなと思っていたので、それこそ全否定されました。(笑) 本書の終章では天皇論のあり方というか歴史を研究する態度について、著者のこれまでの思いが込められた話となっており、歴史学を勉強した者なら感じる違和感をまとめている。学生時代、教授が「(天皇は)何でイヤって言わない(言えない)んだろうネ!」と言っていたのを思い出しました。
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「(厩戸皇子はいたけど)聖徳太子は実在しなかった。」という説から始まる、まるで謎解きのような史実。 誰が何のために、聖徳太子信仰を生み、そして天孫降臨神話を創作したか?そこから導かれる古代王権と天皇制の真の姿とは? 現在まで続く万世一系の神話は、実は藤原不比等が、自らと一族の...
「(厩戸皇子はいたけど)聖徳太子は実在しなかった。」という説から始まる、まるで謎解きのような史実。 誰が何のために、聖徳太子信仰を生み、そして天孫降臨神話を創作したか?そこから導かれる古代王権と天皇制の真の姿とは? 現在まで続く万世一系の神話は、実は藤原不比等が、自らと一族のために創作したという事実はかなり衝撃的。
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