ヴォルテールの世紀 の商品レビュー

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2件のお客様レビュー

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2024/08/18

この作品は450ページを超える大作です。ですが一気に読めてしまうほどの面白さがこの本にはあります。著者の劇的な語り口によって、まるで小説を読んでいるかのような気持ちになります。 そして何より、ヴォルテールという人物の魅力!これに尽きます。 『哲学書簡』や『寛容論』、『カンディ...

この作品は450ページを超える大作です。ですが一気に読めてしまうほどの面白さがこの本にはあります。著者の劇的な語り口によって、まるで小説を読んでいるかのような気持ちになります。 そして何より、ヴォルテールという人物の魅力!これに尽きます。 『哲学書簡』や『寛容論』、『カンディード』などで有名なヴォルテールですが、名前や作品は有名ではあってもこの人物がどんな時代に生きて、どんな生涯を送ったかというとほとんど知られていないというのが実際のところではないでしょうか。かく言う私も彼についてはほとんど知らなかったというのが正直なところでした。 ですがこの本を読んで驚きました。ヴォルテールという人物がどれほど革新的で、後の世にどれだけ大きな影響を与えたのかというのかが明らかになります。

Posted byブクログ

2016/01/05

ヴォルテールがフェルネー(近辺)に居を移してからの時期に焦点を当てた本。有名な著作としては『寛容論』などがこの時期にあたるが、本書ではヴォルテールの著作の分析はむしろ後景に退き、書簡のやりとりを通じた彼の多彩な交流、フェルネー時代における実業家的側面、はたまた大コルネイユの甥の娘...

ヴォルテールがフェルネー(近辺)に居を移してからの時期に焦点を当てた本。有名な著作としては『寛容論』などがこの時期にあたるが、本書ではヴォルテールの著作の分析はむしろ後景に退き、書簡のやりとりを通じた彼の多彩な交流、フェルネー時代における実業家的側面、はたまた大コルネイユの甥の娘を養女に迎えての父親としての側面といった、人間ヴォルテールを象徴するようなエピソードが主な叙述の対象となっている。ヴォルテールの抽象的思想よりも、書簡に見られる洒落た言い回し、適切な引用など、啓蒙主義的なヴォルテール像とフランス古典主義の典雅さを引き継いだヴォルテール像の両方が楽しめる。全体の軸となっているのがデファン夫人との書簡のやりとりであるが、彼女はフランス古典主義の正嫡としてのヴォルテールを評価していたのであって、ヴォルテールが啓蒙主義者の領袖に数えられることにはそれほど好感を持っていなかった。それにもかかわらず生涯を通じて彼女との交流が続いたことは、まさしく「偉大なる世紀」と啓蒙の世紀に股をかけるヴォルテール像を象徴している。

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