帝国ホテルの料理の流儀 の商品レビュー
何かを突き詰める人のこだわりを知れる本。帝国ホテルという第一線で活躍するシェフとしての矜持が詰め込まれている。 簡単に書いてあるけれど、とても情熱がないと耐えられないような仕事観で、尊敬すると同時に自分にはできない、と思ってしまった。容易でないからこそのプロ、その事実はやはり重い...
何かを突き詰める人のこだわりを知れる本。帝国ホテルという第一線で活躍するシェフとしての矜持が詰め込まれている。 簡単に書いてあるけれど、とても情熱がないと耐えられないような仕事観で、尊敬すると同時に自分にはできない、と思ってしまった。容易でないからこそのプロ、その事実はやはり重い。
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今の帝国ホテルの「パークサイド・ダイナー」の前身 「ユリーカ」は、幼い頃から好きなお店でした。 ふわふわのパンケーキ、上品なハムサンド。 真夏ならカレーフェアも楽しいです。 観劇の前後にこちらでお茶やお食事をして ガルガンチュワでプリオシュを買って帰るのが 楽しいお決まり。 ...
今の帝国ホテルの「パークサイド・ダイナー」の前身 「ユリーカ」は、幼い頃から好きなお店でした。 ふわふわのパンケーキ、上品なハムサンド。 真夏ならカレーフェアも楽しいです。 観劇の前後にこちらでお茶やお食事をして ガルガンチュワでプリオシュを買って帰るのが 楽しいお決まり。 大人になって好きなワインを見つけたのもここ。 その頃このお店のシェフをしていらしたのが 田中さんと、この本を読んで初めて知りました。 帝国ホテルというホテルでは、ただ上手なお料理を 作れたら良いというだけの名シェフでは、 何かが足りないのだろうと、漠然と思ってきましたが やはり田中さん、他でお仕事なさっても名料理人に おなりでしたでしょう。 でも、何かが全く違う…事になったと思います。 それは、どっちが悪いか良いかということではなく 帝国ホテルの料理人という、確固たる生き方がある そういうことなのだと思います。 メニューの繊細な命名 出すぎないのにこころに触れるサーヴ。 そして何より、ひと皿のお料理、一杯の飲み物 でも、それに対して満足して席を立てるお味。 コースならコースの、ゆったりと満ち足りたおいしさ。 これだけしかないの?とか やっぱりこっちにしておけば…とは思わない。 出てきたお料理が、きちんと出された分だけで 満足できる。 これはすごいことです。 ある日、ちょっとの用事で帝国ホテルに 飛び込んだ私、普段着で車から降りて とてもあのロビーにはそぐわない服でした。 でも、おなかはぺこぺこ。 めまいはひどくて人を連れてて、 どこかでごはんを頂いて休まないと倒れそうで。 お化粧室で顔を洗い、戻ってみると 連れのお相手をしてくださっていたベルボーイの方。 事情をきくとにこやかに。 「お召し物のお気遣いまでありがとうございます。 お客様。お気兼ねなくお好きなレストランやお店に お進み下さいませ。お好みがございましたら ご案内させて頂きます。 お店までお送り致しましょうか?」 これ、ほんとに嫌味も営業もなく 暖かな笑顔で気持よくおっしゃられた言葉で。 この本にも、良い料理人であることと 帝国ホテルのホテルマンであることを両方 大事に。誇りを持ってと語ってある言葉を読んで ああ、こういう方があの頃、レストランでも お料理してくださってたのね、と全てが 一本の線で繋がったのでした。 そして、興味深かったのは、一流の方々は 国籍が違っても同じ料理人としての共通の シンパシーがあること。心のやさしい方々だと いうこと。美味しいものを食べさせてあげるって 愛情が根本にあるからでしょうね。 明るく元気で、ひとに愛情があることが 良いシェフの条件だということも…。 ああ、とこころに落ち着きました。 それぞれのホテル内のレストランが どんなお料理を目指してるのか…それも個性や 明確な理由…があって。お客はそれを知ってて お料理を楽しむと、また違う角度からも食事が 楽しめることもよく分かりました。 地下の「ラ・ブラッスリー」で今度お願いして みたいなと思うお料理が見つかり、今から どんな時に行こうか胸が弾みます。 偉ぶらない口調で書かれたこの本 面白くてあっという間に読みました。
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日本のホテルの最高峰といえば帝国ホテルではなかろうか。 どのようなサービスにおいても気を抜くことなく一流のもてなしがなされる。大きな印象を残すであろう料理ならなおさらだ。 帝国ホテルを厨房より支えた男の半生はまさに”いぶし銀”である。
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本書は、フランス料理の名門である帝国ホテルの総料理長を務める著者による、自らの料理人としての半生をまとめたものである。元々は「下から2番目のブービー」(p.11)であったと言う著者であるが、その口調は、自叙伝にありがちな成り上がり物語といった風ではなく、むしろ、重点はフランス料理...
本書は、フランス料理の名門である帝国ホテルの総料理長を務める著者による、自らの料理人としての半生をまとめたものである。元々は「下から2番目のブービー」(p.11)であったと言う著者であるが、その口調は、自叙伝にありがちな成り上がり物語といった風ではなく、むしろ、重点はフランス料理の魅力や料理人の世界の知られざる実態を伝えることに置かれている。 特に面白かったのは、著者の思考法に関する記述である。著者が料理について考える際、よく出てくる単語が「頭の中にある引き出し」(p.179)である。これまでの経験や学んだ情報を「ファイル」として「引き出し」にストックし、状況に応じて、それらの「ファイル」を取り出し、組み合せることで独創性(オリジナリティー)を出していくという。その他にも、どんな時にメニューを思い付くのか(p.197)、あるいは、構想を練っていく時の注意点(p.204)など、これらの点は料理人を志望する者でなくとも、役立つアドバイスであろう。 独創性とは、0から何か生み出すのではなく、過去の経験や情報の組み合せの中から生まれてくるものであると言う著者のアドバイスは-常にオリジナリティーを求められる料理人の世界を生きてきたからこそ、説得力のあるものだと言えよう。その他にも、帝国ホテルがたどってきた歴史や、料理人特有の世界の実態なども書かれており、読み物としても単純に面白い一冊である。
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