向田邦子全集 新版(8) の商品レビュー
人間観察したエッセイという意味では、前作の『無名仮名人名簿』と同じスタイルかな。 でも、この『霊長類ヒト科動物図鑑』には、さらに点描のような人間の奥底にあるものをさらっと描き出しているような気になる。 言葉遣いとか柔らかいし、でもちょっと皮肉?のようなところもあるし、面白おかしく...
人間観察したエッセイという意味では、前作の『無名仮名人名簿』と同じスタイルかな。 でも、この『霊長類ヒト科動物図鑑』には、さらに点描のような人間の奥底にあるものをさらっと描き出しているような気になる。 言葉遣いとか柔らかいし、でもちょっと皮肉?のようなところもあるし、面白おかしく読みました。 また、いつか再読したい。
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物書きを生業とし、しかも脚本家ということでTV関係者や著名人との繋がりが多い精で、殊更様々な経験があり、面白ハプンングが多いのは当たり前で、エッセイのネタには事欠かない・・・と思いがちであるが、著者のエッセイを読むごとにそれだけではないと気付かされる。 他の人と見ているところや、...
物書きを生業とし、しかも脚本家ということでTV関係者や著名人との繋がりが多い精で、殊更様々な経験があり、面白ハプンングが多いのは当たり前で、エッセイのネタには事欠かない・・・と思いがちであるが、著者のエッセイを読むごとにそれだけではないと気付かされる。 他の人と見ているところや、感じているところが全然違うだ。 そしてどのエッセイにも必ずオチがあって、成程なオチ、冗談で締めくくりのオチ、ちょっとホロっとするオチと様々なオチに関心するのである。 起承転結の名人である。 印象的だったのは「紐育、雨」。 NYへ行った際に、レーガン大統領の暗殺未遂事件が勃発。 ニュースでは”街が騒然・・・”という例のフレーズが飛び交っているが、当時治安の悪かったハーレムでは黒人達が相変わらず、虚無的な表情であるし、マンハッタンのデリカテッセンでは皆ハムを買うのに並び、お決まりの時間には犬を散歩している。 どんな事件が起きようとも自分の1日はやってくる。 著者のご尊父が亡くなった日の翌朝についても同じであった。 私は、身の回りで起きる様々な厄介事、天地がひっくり返るほどの悲惨な出来事にのたうち廻ったとしても、世の中は全く変わらないのだ。 馬鹿馬鹿しくもあり、そうでなけらばやっていられないという思いに、涙が出そうになった。 著者の様に色眼鏡(いい意味で)で周りを見ていると、面白い発見もあるが、何とも不気味に感じることもある。 先日、ショッピングモールの憩いの広場にあるベンチには、沢山の男女学生や主婦などが座っていたのだが 皆、一様にスマホを弄繰り回しながら下を見ているのである。 4~5人のグループであってもそれぞれおしゃべりに饗する事もせず、黙々と。SNSで誰かと繋がりたいと思いながらも、目の前の友達との繋がりはゼロなのである。 その光景にゾッとしながら、向田さんなら今の世の中をどんな風に綴ってくれたのだろうかと、時々早すぎる死を悔やまずにはいられない。
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