ウラノルマ(3) の商品レビュー
最後まで愛情が得られなかった悲劇の終焉
人には3つの“自分”があるという。自分が知る自分(本心・核心)、周りが知る自分(本音と建前)、そして社会が知る自分(地位・名声・外面)。そして、大概においてこれら3つは調和が取れておらず、そのギャップに悩んだりコンプレックスを持ったりする。本シリーズのヒロイン国枝あおいは最後まで...
人には3つの“自分”があるという。自分が知る自分(本心・核心)、周りが知る自分(本音と建前)、そして社会が知る自分(地位・名声・外面)。そして、大概においてこれら3つは調和が取れておらず、そのギャップに悩んだりコンプレックスを持ったりする。本シリーズのヒロイン国枝あおいは最後までこのギャップに苛まれ続けたのであろう。特に3つ目が突出しているからこそ2つ目まで装うこととなり、遂には1つ目の自分自身さえ喪失していく。1つ目を知れば知るほど解らなくなる。そのギャップの大きさを認識して解らなくなる悪循環。父という偉大な存在が根底にあり、これに第1巻冒頭の“罪”が加わる。生まれ持った美貌はもとより女であることすら嫌悪して掴んだ地位や名声さえも自分自身を最後まで満たすことができない哀しみが描かれている。こうした強烈な孤独を癒す存在が最後の最後に登場するのだが、これさえもかつての失敗が脳裏に浮かんで躊躇する。どうしていいか分からないと右往左往しながら、それでも次第にその答えが見えてくる。本当の自分のままでいいんだと諭されて気付く。教えてくれる、解ってくれる、ありのままの自分を委ねてもいい人が出てくる。どこかで狂った歯車をリセットしてやり直したいと思い始める。そんな一筋の細い細い光明が見えかけた時、悲劇が訪れる。ストーリーが元ネタをトレースしている以上、この結末は外せないだろう。痛々しくて哀しい物語の終焉である。「愛され方を知らないままに愛されたかった」と作者は結んでいるが、最後まで自分が中心だったあおいには得られない矛盾なのであろう。 本巻も多くをあおいの過去描写に費やしており、ストーリーも結末に向かってぐんぐん進んでいく流れにあって、いわゆる「実用的」な場面はあまり描かれていないので、そちらを求める諸兄にはおすすめしない。
DSK
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