赤池町の財政再建と財政課長・安武憲明 自治に人あり(2) の商品レビュー
本ブックレットは、当時「日本で唯一の財政再建団体」であった赤池町の財政再建時代に、財政再建をしていた安武憲明氏へのインタビュー記録である。(赤池町は2006年に合併し、福智町となっている) 本書は、安武氏が役場に入る経緯、福岡県庁への出向、自主再建の時代(財政係長)、法再建の時...
本ブックレットは、当時「日本で唯一の財政再建団体」であった赤池町の財政再建時代に、財政再建をしていた安武憲明氏へのインタビュー記録である。(赤池町は2006年に合併し、福智町となっている) 本書は、安武氏が役場に入る経緯、福岡県庁への出向、自主再建の時代(財政係長)、法再建の時代。その後の退職までを回顧している。 赤池町の財政が悪化した原因としては、炭鉱の閉山があげられる。閉山により税収が減少するが、鉱害対策、失業対策、公共事業への投資による財政規模は肥大化した。また、土地開発公社の解散に伴う土地の買い戻しが拍車をかける。さらに、鉱山から引き継いだ町立病院の債務が追い打ちをかける。 赤池町は、自主再建を行っていたが、財政再建団体となり法再建の道を選ぶ。 本書を読むまで、炭鉱の町が法再建に追い込まれたというイメージでいたが、実態としては「赤池町が、主体的にある時期を見計らって法制度を利用した」 という事がわかる。 法再建の一番のメリットは、しがらみを断ち切った事にある。通常、住民や議員から事業を実施を求める圧力があるが、再建団体ということを盾に、圧力をかわす。庁舎の建て替えも、質素なものとし予算を抑える。 よく「無駄な事業を減らせ」という声を聞く、しかし無駄な事業とは何か。人は自分に関係ない事業は無駄だと考えるが、一見無駄な事業に思えても、立場が変われば必要な事業というのは多々ある。限られた財源をどの様に振り分けるのか考えるのが政治であるが、政治家は人気を取るために、事業を無くせとは言わない。(まあ、一時期流行った事業仕分けなんかは、立場が変われば必要という想像力が欠けてたきらいがありますが) 「無い袖は振れぬ」という事実は強く、赤池町は、財政の健全化に向けて、財布の紐を絞ることとなる。 法律の制約を受けるという点では、地方公共団体の方が制約を受けやすい気がする。借金が増えれば、起債が制限され、事業の縮減等支出を抑えることとなる。当然人件費にも手が付けられ、独自に給与カットを行う都道府県は多い。それに比べると、国の方は、政治が決断しない事により安易に借金を増やしている気がする。(今更、給料カットとは遅い気がするし、それを地方に波及させようというのは噴飯ものである。) 本書は、地方の在り方を考える上で、参考となりおススメである。
Posted by
- 1