ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争(下) の商品レビュー
ベトナム戦争を扱った「ベスト・アンド・ブライテスト」で有名な著者の朝鮮戦争についての著作。この著作のゲラ刷りに手を入れた後に交通事故で亡くなったという。最後の著作だ。雲山(운산)まで進出した米軍は、1950年11月に鴨緑江(압록강)を越えて攻撃してくる中国軍と衝突したとの記述で始...
ベトナム戦争を扱った「ベスト・アンド・ブライテスト」で有名な著者の朝鮮戦争についての著作。この著作のゲラ刷りに手を入れた後に交通事故で亡くなったという。最後の著作だ。雲山(운산)まで進出した米軍は、1950年11月に鴨緑江(압록강)を越えて攻撃してくる中国軍と衝突したとの記述で始まる。朝鮮戦争開始時点からの時系列ではなく、時期の前後があるので読んでいて戸惑うときもあるが、ワシントン、北京、モスクワ、東京などでの軍人、政治家達の立ち位置、考え、声も拾い、立体的に朝鮮戦争の流れを把握できるように記述している。下巻は、三十八度線を越えて北に進軍した国連軍が中国軍の参入で押し戻された時期から始まる。マッカーサーが誰の意見も聞かず、見たくない情報は幕僚が挙げず、皇帝のように振舞ったあげく、米軍は凍てつく山河で中国軍と死闘を交えた。多くの人のインタービューからその当時の戦闘場面を浮き上がらせている。朝鮮戦争での失敗に米国はベトナムでも、イラクでも、学んでいないのだろうか。
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不思議な本です、朝鮮半島で戦われた戦争の筈ですがそこに住む人は全く影も形も有りません。 朝鮮戦争でのトルーマンとマッカーサーの軋轢に付いては理解出来、戦後の日本人の思ってるマッカーサーとは違う彼の別の面が見る事が出来ます。 でもそこで苦しむ一般の人達や亡くなった朝鮮の人達は全く影...
不思議な本です、朝鮮半島で戦われた戦争の筈ですがそこに住む人は全く影も形も有りません。 朝鮮戦争でのトルーマンとマッカーサーの軋轢に付いては理解出来、戦後の日本人の思ってるマッカーサーとは違う彼の別の面が見る事が出来ます。 でもそこで苦しむ一般の人達や亡くなった朝鮮の人達は全く影も形も見当たりません、その後の歴史が大きく変わった中国の参戦に付いては出て来ますが、戦いで死んだ人達も単なる数で中国兵何千人米国兵何百人と個別の戦いでの死者や負傷者は出てきますが、後は上級司令部のいい加減な作戦で勇敢に戦った米国兵が出てくるだけです。 ベストセラーになった本の様ですが、この本を読むと米国のこの後のベトナムからイラクまで続く戦争の米国の係わり方が見えてくる気がします。 そこに住む人達の為ではなく自分達の利益の為に、それは直接的なものだけではなく勝手に歴史的と解釈するものまで、情報を操作し自分達の都合に合わせて解釈する。 朝鮮戦争から冷戦が終わってもまだ戦争と軍隊で繁栄を待ち望む不思議な国の有り様が見えてきます。 米国に住む人達のかなりの部分と政権に巣くう人達にとっては朝鮮もベトナムもイラクも遥か遠い国でそのこに住む人達は全く関心も無く、そこから自分達がどれだけ利益を有る事が出来るか、自分達の国の若者の死傷者をどれだけ少なくするかだけが関心事なのでしょう。
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すべての戦争は、なんらかの意味で、誤算の産物かも知れない。あの戦争から60年の歳月、遥かなり朝鮮半島。当時、中国は毛沢東、ソ連はスターリン、北朝鮮に金日成、米国はトルーマン、そして東京にはダグラスマッカーサーが居た戦い。世界大戦後、初めて本格的にアジア戦われた米国の戦争。 朝...
すべての戦争は、なんらかの意味で、誤算の産物かも知れない。あの戦争から60年の歳月、遥かなり朝鮮半島。当時、中国は毛沢東、ソ連はスターリン、北朝鮮に金日成、米国はトルーマン、そして東京にはダグラスマッカーサーが居た戦い。世界大戦後、初めて本格的にアジア戦われた米国の戦争。 朝鮮→ベトナム→イラク→アフガン へと続くアメリカの戦いの一つの原点、朝鮮戦争であります。 ハルバースタムの遺作、読み応えあり。
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上巻に引き続き、一気に楽しませてもらった。中国兵目線の挿話が無く、あくまでアメリカ兵目線で話が進む本なので、次は逆の観点から朝鮮戦争を描いた本を探してみたい。 個人的には巻末の後書きや解説が充実しているのが嬉しい。ハルバースタムの著作をまたたどってみたくなる。
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共産主義国家のアジアにおける台頭を抑えるというアメリカの大義名分で始まった戦争が、いつしかエウリピデスのいう「神々は滅ぼそうとするものを先ず狂わせる」、そのマッカーサーの狂気と彼に追従する政治家が朝鮮戦争を泥沼化していったのだ。 ソ連はアメリカの参戦はないとの誤算により、金日成に...
共産主義国家のアジアにおける台頭を抑えるというアメリカの大義名分で始まった戦争が、いつしかエウリピデスのいう「神々は滅ぼそうとするものを先ず狂わせる」、そのマッカーサーの狂気と彼に追従する政治家が朝鮮戦争を泥沼化していったのだ。 ソ連はアメリカの参戦はないとの誤算により、金日成に南への侵攻を促し、アメリカは中国は参戦しないという確信のもと鴨緑江まで進撃、毛沢東は兵士の政治的純粋さと革命精神がアメリカ軍の兵器の優位より重要と信じ、損害を膨らませた。ここには理性のかけらもない。唯々悲劇あるのみ。
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トルーマンにマッカーサー、毛沢東、金日成、スターリン。上巻で主要な 役者が出揃った。それにしても上巻は読みにくかったな。翻訳のせいも あるのだろうが。 朝鮮戦争は実質、アメリカvs共産中国の戦いだった。しかし、両軍共に 機能不全に陥って行く。 アメリカ側の原因は朝鮮へ足...
トルーマンにマッカーサー、毛沢東、金日成、スターリン。上巻で主要な 役者が出揃った。それにしても上巻は読みにくかったな。翻訳のせいも あるのだろうが。 朝鮮戦争は実質、アメリカvs共産中国の戦いだった。しかし、両軍共に 機能不全に陥って行く。 アメリカ側の原因は朝鮮へ足を運ぶことのなかった最高司令官・ マッカーサーだ。本書は「マッカーサー物語」と言っても過言ではない。 数々の戦いで大いなる功績を上げた高齢の将軍も、その威光は仁川 上陸作戦までだった。 「クリスマスまでには帰国できる」。兵士たちはそう聞かされて朝鮮半島 に赴いた。だが、そこで待ち受けていたのは中国共産軍の人海戦術と、 朝鮮半島の過酷な寒さだった。 誰もが成功に疑問を持った仁川上陸作戦を成功させたマッカーサー ではあったが、現場指揮権の分割と、中国参戦せずの予想が裏切 られ、現場の兵士たちはより激しい戦闘にさらされ、ワシントンは 政治的発言が増えて行く将軍に対して不信感を抱く。 ワシントンの言うことにも、統合参謀本部の言うことにも耳を貸さず、 自分を崇拝する者で周囲を固めた老将軍は、占領下の東京・第一 生命ビルに独自の帝国を作り上げた。 戦時の軍隊を機能不全に陥らせたのはマッカーサーだけではない。 共産中国の毛沢東もマッカーサーに引けを取らない。しか、片や 一将軍、片や共産中国の最高指導者。マッカーサーは最高司令官 解任という失脚の運命にあったが、毛沢東は逆に現場の指揮官を 自分に歯向かったとして、後に粛清する。 マッカーサーに限らず、中国軍の猛烈な攻撃に晒された際のアメリカ軍 には人種差別に根差したアジア人蔑視もあっただろう。「自分たちは アジアの野蛮人たちの救世主だ」。これは朝鮮戦争だけに限らない。 後のインドシナでの泥沼に足を突っ込んだ時にも、アメリカにはそんな 考えがあったのではないか。 そして、第二次世界大戦後の日本占領の成功がアメリカを、ひいては マッカーサーを勘違いさせたのではないだろうか。 中国も、朝鮮半島も、それまで世界の列強(勿論、日本も含む)に支配 されて来た植民地であった。そんな土地で、新たな支配を確立させよう としても反発を食らうだけだったろう。 その勘違いは、今もアメリカが絡んだ戦争で既視感のように繰り返され ているのではないかと思う。 著者は本書のゲラに最後の手を入れた5日後に交通事故で亡くなって いる。本当に絶筆になってしまった作品だ。翻訳の読みにくさを差し引 いても◎な良書なのだが、当時の韓国大統領の姿がまったく見えて 来ないのが気になる。 いくらボンクラとは言え、もうちょっと触れられてもよかったのではないか。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争」読了。この本を読むことによって、これまで私が抱いていた朝鮮戦争観やその戦争の指導者達へのイメージが音を立てて崩れていったというのが正直な感想です。 今まで私が知っていたことといえば戦争の推移だけであり、関係者たちが何故その決断を下したのか、その決断をするに至るまでのプロセスや決定者の人間性といったものが徹底した当事者に対するインタビューにより得られた豊富なエピソードたちによって明らかにされていったときの驚きは想像を超えたものでした。 この戦争は「まさに軍事司令官のもっとも基本的な教義を適用しなかった典型的な事例だった。その教義とは、汝の敵を知れ、ということ」という米軍パイロットの言葉が何故ここまでの苦戦を強いられたのかを端的に表しているように思えます。前線の現実を司令部がねじまげ、その現実をもとに作戦を策定したこと。種々の偏見から敵を侮り慎重に行動しなかったことなど、敵を各種のフィルター越しにしか見ずにいたこと、敵の真の姿を見ようとしなかったこと、自分たちの見たい現実しか見ようとしなかったことが最大の原因なのではないかと私は考えます
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これは「負ける物語」である。 上巻は、なぜアメリカ軍が負けたかを丹念に書いた。 将軍たちのエゴ。政治的な争いによって兵士たちが豆がザルから落ちるようにざらざらと死んでいく。 アメリカ軍が負ける物語を書いた後、下巻では中国軍が負ける訳と……マッカーサーの凋落。そして北朝鮮...
これは「負ける物語」である。 上巻は、なぜアメリカ軍が負けたかを丹念に書いた。 将軍たちのエゴ。政治的な争いによって兵士たちが豆がザルから落ちるようにざらざらと死んでいく。 アメリカ軍が負ける物語を書いた後、下巻では中国軍が負ける訳と……マッカーサーの凋落。そして北朝鮮の驕りと……アメリカが強くて正義だということを示している。 (著者の見方があやっているというわけでもなく、インタビューした人々はやはりアメリカ人がメインになるだろうし、中国や北朝鮮の人がフラットな意見を示すとも思えないから当たり前なんだけど) アメリカ軍攻撃された! 反撃した! と書いているけど、中国兵や北朝鮮兵も死んでいるんだよね。 これを読んで私が感じた朝鮮戦争って、「ソ連と中国が、自国の威力を見せるために北朝鮮を利用した」ものなんだよね。そこにアメリカが「正義」を振りかざしてやってきたという。 北朝鮮と韓国だけだったら、どうなっていたんだろう……そもそもこの戦争が「朝鮮戦争」という名前であることが恐ろしい。朝鮮は舞台になっただけで主役じゃないのだ。なぜなら、この本には韓国人のインタビューってほとんど載っていない。(北朝鮮はは国として無理なんだろうけど) 「アメリカによる介入によって、韓国は北朝鮮の脅威から守られた」というのは、アメリカから見た「大儀名分」もしくは「心理的にそうとでも思わないとやってられないこと」なんだろうなと思う。だからこそ、マッカーサーを徹底的に悪役とするために、彼の愚作と凋落を描いたんだろうし。 この本に書かれている負けるルールは実にシンプルだ。 指導者が己の虚栄やプライドやエゴを守るために権力をふるい、それらを守るために、本来見なければならない情報から目を逸らしているから、である。このパターンしかないことに驚く。 勝った人は、情報を集め分析し地道に……なんだろうけど、そこについてはあまり深く掘り下げられては居ない 中国軍がなぜ勝ったかを丹念に分析した書物も読んでみたいものだなぁと。 読み物として面白い作品です。活字中毒ならオススメ。 そうして、現代のリーダーシップと言われる「強い発言」を繰り返す人々が、過去の失敗したリーダーと重なるのは穿った見方なんだろうか。各人が「分かりやすい」「強いリーダーシップだから」と支持をすると、この本に出てくる兵士たちのように、あっという間に死んでしまう気がしてならない。
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デイヴィッド・ハルバースタム 『ザ・コールデスト・ウインタ- 朝鮮戦争(下)』読み終える。 ハルバースタムは21冊目となる最後の著書で、 歴史から忘れ去られた戦争、朝鮮戦争を取り上げる。 戦争は始まりと終わりの時点より その遂行にこそ狂気が顕われることが理解できる。 指揮官に不...
デイヴィッド・ハルバースタム 『ザ・コールデスト・ウインタ- 朝鮮戦争(下)』読み終える。 ハルバースタムは21冊目となる最後の著書で、 歴史から忘れ去られた戦争、朝鮮戦争を取り上げる。 戦争は始まりと終わりの時点より その遂行にこそ狂気が顕われることが理解できる。 指揮官に不適格な人間がいったん配されれば 軍や政治がその誤りを修正するには大変な時間がかかる。 その間にも、多くの生命が危機にさらされ傷つき失われる。 誰が正しく、誰が間違っているか、 さらにはかつて正しい決断をした人間が いつも正しい決断をし続けるとは限らない。 歴史は理路整然と見えた決断に狂気を見出し、 混沌とした事実に筋道をつけてゆく。 1963年に著者がある軍人と交わした会話から構想が始まる本書は、 無数の事実とインタビューを網の目のように組み立て 過ぎ去った時間をひとつの建造物として僕たちに提示する。 ほんの60年ほど前、隣りの国で起きた忘れられた戦争について 僕たちは考察する機会を与えられるのだ。 上下二冊を読み終えて、ダグラス・マッカーサーという将軍が とても奇妙な軍人エリートであったことが深く印象に残った。
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下巻では、本来軍最高司令官として考慮すべきすべての警告を無視したマッカーサーが固執する無謀な北進を行った米軍と中心とした国連軍が、中国軍の参戦・反撃により壊走し、その後何とか立て直して元の38度線を境にして「Die for a Tie」と呼ばれる膠着戦に至るまでを描いています。 ...
下巻では、本来軍最高司令官として考慮すべきすべての警告を無視したマッカーサーが固執する無謀な北進を行った米軍と中心とした国連軍が、中国軍の参戦・反撃により壊走し、その後何とか立て直して元の38度線を境にして「Die for a Tie」と呼ばれる膠着戦に至るまでを描いています。 ハルバースタムは、数多くの従軍した兵士にインタビューし、多くの史料を紐解き、かの戦争で起きたことを再構成しています。その手腕はさすがです(長いけど...)。自身ベトナムの従軍記者でもあったことから、常に戦いに臨む兵士の視点で紡がれています。 一方、最高司令官であったマッカーサーの独善や、上官であるマッカーサーの期待に合わせることに汲々とし、兵士の命を軽視した(とハルバースタムにみなされた)将軍ネド・アーモンドや情報責任者のチャールズ・ウィロビーに対しては辛辣です。彼らの評価は、ハルバースタムの主観が強く入ったものであり、誇張されてフェアでない部分もあると判りながらも、こういう状況はいろいろな組織で多かれ少なかれ発生するものであるからという納得感もあります。いずれにせよ各戦闘を縦糸とすると、マッカーサーとワシントン(大統領トルーマン)との確執が横糸となり、事態が推移していく様が描かれています。 --- 最後の「なされなくてはならなかった仕事」と題されたエピローグにおいて、その後のベトナムに触れた後、激戦となり戦いのひとつの転換点ともなった砥平里の戦いで小隊長を務めたマギーの近況を語り、マギーの思いとして「つまるところ、あそこへ行って戦ってよかった。それはなされなくてはならない仕事だったのだ。それ以上でもなければ、それ以下でもない。考えてみると、それ以外に選択の余地などあまりなかったのだから―。」という独白で本書は締められています。兵士の目線で語ることを努めたハルバースタムが、兵士の独白を借りたその言葉によって何を意味しようとしたのか、実は本当に分かっていないのかもしれません。
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