ユリイカ 詩と批評(2009年10月臨時増刊号) の商品レビュー
映画のこと 原作を一読したことがあったが ここまで肉薄し深刻なところまで突き詰めるとは思わなかった なんと美しい、そして切実な問い 中身がない空っぽなのか 心をもつとはどういうことなのか 見ながら、以下の詩が読み上げられたところで ふいに涙が流れた 欠如を互いに埋めあった日...
映画のこと 原作を一読したことがあったが ここまで肉薄し深刻なところまで突き詰めるとは思わなかった なんと美しい、そして切実な問い 中身がない空っぽなのか 心をもつとはどういうことなのか 見ながら、以下の詩が読み上げられたところで ふいに涙が流れた 欠如を互いに埋めあった日々を思い出して ------------------------------------------------------------ 生命は 自分自身で完結できないように つくられているらしい 花も めしべとおしべが揃っているだけでは 不充分で 虫や風が訪れて めしべとおしべを仲立ちする 生命はすべて そのなかに欠如を抱き それを他者から満たしてもらうのだ 世界は多分 他者の総和 しかし 互いに 欠如を満たすなどとは 知りもせず 知らされもせず ばらまかれている者同士 無関心でいられる間柄 ときに うとましく思えることさも許されている間柄 そのように 世界がゆるやかに構成されているのは なぜ? 花が咲いている すぐ近くまで 虻の姿をした他者が 光りをまとって飛んできている 私も あるとき 誰かのための虻だったろう あなたも あるとき 私のための風だったかもしれない
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