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昭和戦前期の宮中勢力と政治 の商品レビュー

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2013/06/22

 1930年代の「宮中勢力」の動向について、本書のような精緻な考察は読んだことがないと驚いた。  1990年代以降に刊行された、宮中官僚の日記や書簡、文書類を活用しての本書の内容はまさにリアルタイムにその時代を見るような迫力に満ちている。  「西園寺公望」や「牧野伸顕とそのグルー...

 1930年代の「宮中勢力」の動向について、本書のような精緻な考察は読んだことがないと驚いた。  1990年代以降に刊行された、宮中官僚の日記や書簡、文書類を活用しての本書の内容はまさにリアルタイムにその時代を見るような迫力に満ちている。  「西園寺公望」や「牧野伸顕とそのグループ」、「木戸幸一」や「近衛文麿」の詳細な「政治的動向」を読むに連れて、その後の歴史を知っていると、まさに「破綻への道」へ国家機構が進む時は、組織と人がこのような動きとなるのかと感嘆した。  本書で登場する大日本帝国の要人は、すべてそれなりの勢力の代表者であるし、それぞれ主義主張もある。それが複雑に絡み合って結果として「戦争」と「帝国の破綻」へと流れ込んでいく。  この本書で扱っている過程は、国家システムに問題があったのか、それとも指導者に問題があったのかといろいろと考えさせられてしまう。  しかし、ここまで詳細・精密な考察となると、相当この時代に精通していなければ内容が理解しにくい。本書はやはり「学術的な研究書」と言えるのかも知れない。  本書で取り扱っているのは「宮中」であり「昭和天皇」ではないが、本書を読むとこの時代の指導者で一番リベラルであったのはひょっとすると「昭和天皇」だったのかもしれないと思ってしまった。  「帝国の破綻」についての「政治的な面」の研究書は数多くはないが、やはり負けた戦争にこそ多くの教訓があると思う。  本書は、戦前の「政治システム」の欠陥を教えてくれるのみではなく、この時代には、混迷の中で指導層が「コキザミ」になって情勢が流動化するが、これはひょっとすると日本的な特徴かも知れないと思った。  本書は、1930年代の歴史と共に、日本という国家の特徴を教えてくれる良書であるが、あまりにも専門的な内容でもある。  この時代の理解が深まることは、日本人の「歴史認識」を深めることにもなると思うので、今後本書の内容を生かした多くの本がだされることも期待したい。

Posted byブクログ