仰臥漫録 の商品レビュー
結核をわずらった正岡子規が、その病床でつづったごく私的な手記です。最初は岩波文庫版をみかけたのですが、イラストがカラーで掲載されているので角川ソフィア文庫のほうを読みました。 この手記はほんらいは公開を意図していたものではなく、生前にこの手記を書いていることを知った高浜虚子...
結核をわずらった正岡子規が、その病床でつづったごく私的な手記です。最初は岩波文庫版をみかけたのですが、イラストがカラーで掲載されているので角川ソフィア文庫のほうを読みました。 この手記はほんらいは公開を意図していたものではなく、生前にこの手記を書いていることを知った高浜虚子が出版を提案した際も、ごく私的なものだとして拒否したそうです。 この手記の全体をしめている内容は、その日の天気、食べたもの、便通、包帯の取り換え、来客、そして日々のなかでよんだ俳句など、ほとんどごく普通の手記のようです。 しかしときどき、死が背後にあるという重みがにわかに姿を現します。衰弱した体を見ざるをえない絶望、体が思い通りにならない苛立ち、そして自殺への欲求。こうした負の感情にさいなまれながらもひたすら食べる。それは生きることへの欲求の強さとも見て取れます。 ただ、この手記をたんに真面目なもの、病床で懸命になって死に抗い続けた物語としてのみ読むことには違和感を覚えます。そうした読み方は、この本にある子規のユーモアを奪い去ってしまうからです。 ではこの手記はなんなのかといわれれば、まさに人間そのものだといいたいところです。介抱する人を思いやりながらも、介抱する人への不満をあらわにする。不安にさいなまれながらそれを明るく笑い飛ばす。人間の複雑な心が現れている本だと思います。
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受験の現代文の問題集に使われていて、ずっと読みたかった一冊。 俳句の知識もまったくなく、子規についても全然知らない私でも面白く読むことができました。 食べ物で生きる意思を繋いでいる様子がなんともいじらしいというかなんというか。 読み進めていくうちにはまっていきました。
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