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2011/11/14

 家柄も教養にも関係ない妻ある貧乏画家と激しい恋をする物語。 冨岡多恵子の自伝といえる作品。貧乏画家とは無名時代の池田満寿夫である。   主人公の江見子はタケゾーのことを母親にこう説明している。  『なんにもないひとよ、学問もない、教養もない、家柄もない、お金もない、仕事もない...

 家柄も教養にも関係ない妻ある貧乏画家と激しい恋をする物語。 冨岡多恵子の自伝といえる作品。貧乏画家とは無名時代の池田満寿夫である。   主人公の江見子はタケゾーのことを母親にこう説明している。  『なんにもないひとよ、学問もない、教養もない、家柄もない、お金もない、仕事もない、あるのはヨメはんだけ』  さりげない文章だが、いかにも冨岡多恵子の考えが凝縮されている言葉だ。  結婚の条件として挙げられる、金、家柄、仕事、教養…。若い男女は愛しているから結婚するというが、彼らは結婚をビジネスとして割切っているめではあるまいか。別の本で冨岡は一婦ー夫の結満制度を批判してこう言ってているが、恋にはそうした条件は一切関係がない。柑手にナニカを感じたら、どんな男であろうと好きなことに変わりはない。恋と結婚とは根本的に違っているのだ。   今や有名な画家となった池田満寿夫は冨岡と暮らした日々を述懐してこう言っている。『無名な男の……成功の過程が彼女との生活のなかにすべて含まれている」と。   池国満寿夫が世に出る陰で、富岡の果たした役割は大きかった。

Posted byブクログ