シリーズ 明日の教室(5) の商品レビュー
「明日の教室」研究会編集『シリーズ明日の教室 学級経営・基礎の基礎』(ぎょうせい,2009年)の全5巻がそろった。 第1巻が刊行された際、私はこのBlogで本書についてずいぶんと皮肉めいたことを書いてしまったが(というか、それは、いつものことだけれど…)、全5巻が揃って改めて...
「明日の教室」研究会編集『シリーズ明日の教室 学級経営・基礎の基礎』(ぎょうせい,2009年)の全5巻がそろった。 第1巻が刊行された際、私はこのBlogで本書についてずいぶんと皮肉めいたことを書いてしまったが(というか、それは、いつものことだけれど…)、全5巻が揃って改めて執筆者陣をみれば、教育界の最前線で活躍している実践者研究者が一堂に会した感がある。錚々たるライター陣というのにふさわしい。 この全5巻のシリーズ、第1巻が学級経営や授業論や生活指導ではなく「教師の仕事術」についてまとめているというのは、現在の教師という仕事の困難性をあらわしていると思うし、第5巻は「担任一人で悩まない・抱えない」というテーマで、保護者との対応について多くのページが割かれているのも、今の時代を象徴しているなあと思った。 ただ、こうやって教師の仕事をこれだけ細分化して多くのライターで分担してしまうと、各ライターが拠って立つ教育観の違いで議論に矛盾が生じてしまうのも事実。例えば、子どもへの「誉めかた」のページの先に「ほめない」ことへの議論がなされていたり、生活指導の微細はライターによってとらえ方が違っていたりしている。まさしく教育の仕事というのは論者によっていかようにも議論できるものだとつくづく思った。 本書を、学級経営術のマニュアル本として読むなら、この全5巻をしっかり読めば多くの教師は救われるであろう。けれど、多様な執筆陣のなかで、もし自分の感性や教育観になじむライターがいれば(というか、誰か必ずいるはずだ)、そのライターの単著を読むことをおすすめする。どのライターもこれまで多くの単著を出している人ばかりであるから、より深くそのライターの教育観に触れることができる。 また、本書は参考文献も豊富に紹介されている。これらの参考文献、若い教師向けというコンセプトに沿って、奇をてらうことなく、まさしくスタンダードをあげているから、とりあえず気になった文献を読んでおけば自分の仕事に役立つであろう。ちなみに、私がその昔、共著として刊行した本もシリーズ全5巻のどこかに参考文献として紹介されています。自分の本が参考文献として紹介されているのは嬉しいことだけれど、あの本、もうとっくに絶版になっていると思いますが。
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