栗田艦隊退却す の商品レビュー
いわゆる学徒動員の直前、著者らは半年繰り上げで大学を卒業し、海軍第三期兵科予備学生隊に入隊した。昭和18年10月1日のことである。最高学府に学ぶ当時としては超エリートの学生たちは、基礎教育・専門教育を受けて海軍予備少尉に任用され、「有史未曾有の国難」の真っ只中に放り込まれる。著者...
いわゆる学徒動員の直前、著者らは半年繰り上げで大学を卒業し、海軍第三期兵科予備学生隊に入隊した。昭和18年10月1日のことである。最高学府に学ぶ当時としては超エリートの学生たちは、基礎教育・専門教育を受けて海軍予備少尉に任用され、「有史未曾有の国難」の真っ只中に放り込まれる。著者は不沈艦と謳われた戦艦大和に暗号士として着任するが、リンガ泊地での訓練を経て待っていたのは、航空支援ないままにレイテ湾に突入するといういわゆる捷一号作戦であった。 本書は著者が戦後書き記したメモや同期予備学生の記録や証言をもとにまとめたもので、彼らが何を考え、どのように行動したかが達意の文章で生き生きと描かれている。それとともに重要なのは、本書のタイトルにもある「退却」の二文字だ。栗田艦隊のいわゆる「なぞの反転」は、捏造された敵機動部隊発見電を理由とする「退却」であったというのである。これが戦艦大和の暗号士としての体験から得た結論であるが、この捏造・退却説については異論も多く、読者諸氏におかれてはぜひ本書を繙いて自らその当否をご判断頂きたい。 なお、著者は帰投後比島に転任し死線をくぐり抜ける。比島での体験については著者の『投降』を参照。
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大和暗号士で予備学生出身の士官、小島清文少尉の本です。 大学を卒業した人たちは予備学生と呼ばれ、 海軍に志願すると准士官の上で少尉の下という高い位を貰い、 訓練終了後に海軍士官たる少尉に任官出来ることになっておりました。 しかし、海軍兵学校出身のエリート士官たちにとっては煙た...
大和暗号士で予備学生出身の士官、小島清文少尉の本です。 大学を卒業した人たちは予備学生と呼ばれ、 海軍に志願すると准士官の上で少尉の下という高い位を貰い、 訓練終了後に海軍士官たる少尉に任官出来ることになっておりました。 しかし、海軍兵学校出身のエリート士官たちにとっては煙たい存在らしく、彼等を「ニセ士官」と呼び、関係は険悪なものだったそうです。 海軍兵学校出身の士官に理不尽な報復をされた予備士官の話も載っておりました。 さて、この本には小島さんと同じ艦に乗り組んでいた兵学校出の士官の都竹中尉が何回か登場しますが、彼は暗号室にいた小島さんに向かって栗田長官はだらしない!と反感を撒き散らしていたということです。 しかし、都竹中尉は小島さんの本はすべて嘘デタラメだと批判しました。 ところで同じ大和にその頃勤務していた深井副砲長は、大和通信士が例のヤキ1カの電文を作ったと仰っておりましたがこれは、小島さんの推理「ヤキ1カの電文は嘘デッチアゲ」というところと合致するのはないでしょうか?ですから私は小島さんの本は都竹さんの仰る「すべて嘘デタラメ」ではないとおもっております。 本とは関係ない感想が混ざってしまいましたが、それにしてもこの通信士。。。どうしてこのような嘘の電文を作る気になったのか動機が知りたいですね。
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