論語抄 の商品レビュー
中国史を題材に数多くの歴史小説を執筆してきた著者が、孔子の言行録である『論語』の主要なことばを紹介し、その解説をおこなっている本です。 著者は「あとがき」で、「たとえば、私が『阿片戦争』を書いたとき、欽差大臣の林則徐……なら、「君子は器ならず」(為政第二)についてどんな意見をも...
中国史を題材に数多くの歴史小説を執筆してきた著者が、孔子の言行録である『論語』の主要なことばを紹介し、その解説をおこなっている本です。 著者は「あとがき」で、「たとえば、私が『阿片戦争』を書いたとき、欽差大臣の林則徐……なら、「君子は器ならず」(為政第二)についてどんな意見をもっただろうかなどと考えてしまいます。李鴻章……が日本と屈辱的な講和条約を結んで帰国するとき、「身を殺して以て仁を成す」(衛霊公第十五)の句を思いうかべなかったかと創造してみるのです」と述べています。『論語』のことばは、中国の人びとの血肉として、彼らの生きかたの根幹をかたちづくってきたということができるでしょう。 本書には、そうした歴史上の人物のエピソードと絡めて、『論語』のことばの含蓄を著者ならではのしかたで語ってくれることを期待していたのですが、そうした期待はあまり満たされることはなかったように思います。とはいえ、平明な文章で『論語』の内容が紹介されており、おもしろく読むことのできたところもけっしてすくなくはありません。
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