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倒壊する巨塔(上) の商品レビュー

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14件のお客様レビュー

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2011/01/19

9.11同時多発テロに至るまでを、イスラム原理主義側からと、CIA,FBIのアメリカ側からの両側から書いた本。著者の膨大なインタビューを元に、事細かに書かれていて、主観は挟まれていない。イスラム過激派を批判しているわけでもない。 上巻では主にイスラム原理主義が生まれた背景と経過が...

9.11同時多発テロに至るまでを、イスラム原理主義側からと、CIA,FBIのアメリカ側からの両側から書いた本。著者の膨大なインタビューを元に、事細かに書かれていて、主観は挟まれていない。イスラム過激派を批判しているわけでもない。 上巻では主にイスラム原理主義が生まれた背景と経過が述べられている。イスラム原理主義の発端となったクトゥブはアメリカで人種差別、性の解放などの誘惑を目の当たりにし、アメリカへの敵意を募らせた。敬虔なイスラム教徒で、厳戒な戒律主義をとっていた彼には西洋の近代化は悪に見えたのだ。その感情は増していき、西洋の完全拒絶、さらにはイスラムか、ジャーヒリーヤか・・・要するにイスラム教が支配するか、完全に滅ぶかの二者択一を唱えた。彼は殺されるのだが、彼が最後に書いた本が後々の若者に受け継がれることになる。 ザワヒリは名門の家系。幼少の頃より伯父からクトゥブの話を聞かされる。地下組織を作りそこで厳戒なイスラム教を信仰する。エジプトの刑務所で拷問を受け、抑圧的なエジプト政権と、さらには西洋に対しても復讐心を抱くことになる。 そして有名かもしれないが、ビンラディン。彼は伝説的な企業家の元に生まれる。彼もまた敬虔なイスラムである。殉教の概念も彼の周辺で発生した。後に9.11のテロを計画することになる。そのきっかけは自国に居座るアメリカ軍への嫌悪だった。 歴史に「もし・・・だったらどうなっていた」はないわけだが、これを読んでいると思わずそういう考えが頭をよぎる。ただこの9.11同時多発テロは首謀者がビンラディンでなければ起きていなかったのかも。それだけ彼がどれだけカリスマ性を持ち、アメリカに対して執念を燃やしていたかが読み取れる。ただクトゥブもザワヒリもビンラディンに共通している点は、敬虔なイスラム教徒であるということだ。ビンラディンも、プライベートでは子供と遊んだり温和な一面が書かれている。「神」の解釈の数だけ宗教があるのかもしれないが、9.11は本当に起きなければならなかったのだろうか。一読して、なにかもの悲しさを感じてしまった。

Posted byブクログ

2010/11/07

⇒ http://thomas-aquinas.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/200910-f127.html

Posted byブクログ

2010/08/21

9.11アメリカ同時多発テロを終着点として、単に9.11までの過程を取り上げているだけでなく、テロリズムが生まれる社会背景、テロ組織の成立過程まで書かれている。 長所→非常に細かい取材で、TVを見ているだけでは、決して触れることのない、イスラム世界の情勢が書かれていて非常に、勉強...

9.11アメリカ同時多発テロを終着点として、単に9.11までの過程を取り上げているだけでなく、テロリズムが生まれる社会背景、テロ組織の成立過程まで書かれている。 長所→非常に細かい取材で、TVを見ているだけでは、決して触れることのない、イスラム世界の情勢が書かれていて非常に、勉強になった。 短所→こういう問題にまったく興味をもてない人が、「なんとなく本屋で手にとって読んでみた。」という感じで読んでも楽しめないかも。(でも結構売れた・・・) 読後の変化→非常に抑圧されたイスラム世界の若者のエネルギーのはけ口として、ただそこにテロがあっただけ。というのが読んだあとの私のテロ組織に関する感想です。

Posted byブクログ

2009/12/26

9.11に至るまでのアルカイダを含むイスラム過激派とCIA、FBIの軌跡を追ったノンフィクション。上巻は、サウジ王家やアフガン戦争のジハードについて詳しく書かれています。 いわゆるイスラム過激派と呼ばれるグループのメンバーの、死を恐れないどころか、殉教による死こそを望む思想を...

9.11に至るまでのアルカイダを含むイスラム過激派とCIA、FBIの軌跡を追ったノンフィクション。上巻は、サウジ王家やアフガン戦争のジハードについて詳しく書かれています。 いわゆるイスラム過激派と呼ばれるグループのメンバーの、死を恐れないどころか、殉教による死こそを望む思想を持つに至るイスラム社会の背景が抑制が効いた筆致で丹念に描かれています。もちろんイスラムの教義を信じるロジックについても、著者は共感や理解を示しているわけではないですが、ひとつの世界観として決して否定的でなく描かれています。 ビンラディンについても、その家族や失敗への対応も含めて、その人物像に焦点を当てて描写していて非常に興味深いです。読み応えありです。

Posted byブクログ