新世界より の商品レビュー

貴志祐介【著】

創造性高い

[平塚 泰司]

小説の世界設定が創造性にあふれ、想像力を刺激されながら満足して読み進めることが出来た。
ラスト部分にも、こちらの予想を超えた新たな事実の提示があり、更に読後の満足感を高めることができた。

2024/06/07

アニメ作品を先に見てから原作へ。
閉鎖的な管理社会、能力者と非能力者…
緻密で壮大な世界観を描き切った作品だと思う。

年齢と共に想像力が低下しているのを感じている。
SFとか想像力をフル回転しながら解釈するものについては本当に弱くなっているのを感じる。今回はアニメと小説、両方を楽しむことで「新世界より」の世界を満喫することができた気がする。
原作に忠実なアニメだったと、後から小説を読んで思った。
アニメで曖昧なままになっていた部分、端折られていた部分が小説を読むことで補われスッキリ。

読みがいのあるSF小説だった。

2024/02/28

めちゃくちゃ分厚い上に1ページが上下段になってて読みきれるかしらと不安だったけど楽しかった。
SF、冒険、ファンタジー、ホラー、成長小説など様々な要素が…と作者談の通り、色んな面白さがあった。
でもちょっと膨らませすぎ…？とも思っちゃった。
読むの時間かかっちゃったけど楽しい時間でした。

2018/12/10

貴志祐介さんの本は初めてでしたが、ネット上の『読んで面白かった本』か何かで存在を知り読んでみました。

まず、この本の厚さに怯んでしまいそうですが、読み始めると世界観が独特で面白く、文章も読みやすいので一気に読めてしまいます。この本がきっかけとなって貴志祐介さんの本は他にも５作品ほど読みました。どれも面白いのですが、今のところこの本が一番です。

読んでいる間、独特の世界に引きずりこまれます。

2018/11/13

1週間ほどかかって読了。
分厚さと濃さは、京極作品にも匹敵しそう。
とにかくいろんな要素がてんこ盛りで、エンタメ作品として上々の仕上がりだと思う。

ただ、これを一つの作品としてまとめる意義がよく分からなかった。
幾つかのエピソードごとに分冊することは充分に出来たはず。
これだけのボリュームを一気に読ませる筆力は素晴らしいと思うのだけど、だからこそ、要所要所で冊自体を分けることによって、明確な区切りを付けた方が、メリハリがよりしっかりと付けられたのではないかと思う。

あと、壮大な世界観の割に、それを充分に活かし切れていなかったような気がする。
前半の勢いというか、多彩性が中盤以降ではあまり見られなかった。
スピード感はぐんぐん増しては行くのだけど、その速度に「物語」がついて行けていない感じ。
それは、物語の方向性が大きく変わったからに他ならないのだと理解は出来るのだけど、であればこそ、やはり分冊するべきだったんじゃないかなと思う。

と幾つかケチを付けてはみたものの、大作であり秀作であることは確か。
きっちりと骨太で、何より「読ませる」手法の見事さに感服した。
何より、勘所で見せる「演出」の巧みさが素晴らしい。

随所に見られる粗々しさを、魅力として馴染ませることが出来るかで、さらに大きく化けるような気がする。

2018/10/08

133：回想形式の物語。生産とも呼べそうな徹底的な管理体制、自由の剥奪、選民思想に背筋が寒くなりつつ、すばるのエピソードは泣けました。い、いぬネタはずるい……！　背後で不穏な気配が高まり、下巻へ。

2018/10/23

今まで読んできた貴志祐介の作品の中で一番入れ込んだ。読了後、暫く仕事が手につかないほど。
多くのレビュー通り冒頭はかなり読み辛く、数ページ読んでは寝落ちを繰り返していたが、ある箇所から止まらなくなり23時からそのまま4時までノンストップで読み終えた。翌日普通に仕事なのに。
作り込まれた世界観は、作者がデビュー前から温めていたのも納得の完成度。設定がどこそこのあれこれに似ている……との声もあるが、ここまで消化され練られているなら問題ないと思う。
あまりに真に迫る作り込みに作品の世界から長いこと抜け出せず、レビューや解説サイトを巡回しては「家路」を歌い、人間って何だろうと自問し、その後２週間かけて３回読み返した。読み返す度に初めは入って来なかった言葉や描写が理解できて、何度読んでも面白い。
育ってきた環境所以と思いながらも、語り手らにはあまり好感を持てないが、一人一人がちゃんと多面性を持つ人間として丁寧に描かれているのも良かった。それにしても、最後まで生き方が一貫している奇狼丸には惚れ惚れする。スクィーラには頭の固い爺と罵られているが……
ずっと手元に置いておきたい作品。

2017/06/04

一冊でこんな分厚い本を読んだのは初めてですね。
貴志さんの本は初めて読みましたが、読みやすかったです。
小説の世界にどっぷり嵌りたい、時間のあるときに読むといい本かな。読み終わってハリーポッター+AKIRAな感じでした。
やや冗長な部分もありましたが、その分読んでいて世界観が確立され、いろいろな事を考えさせられました。

ややご都合主義的な展開もありましたが、上手くまとめていたと思います。

2016/05/06

・3/28 満を持して読み始めてみるけど、これかー、読み始めると止まらなくなるのと同時に読み切っちゃうのがもったいなく思うのは．確かにこういうハラハラドキドキのSF作品は、「七瀬ふたたび」以外今まであまり読んだ覚えがないもんね．歴史物やミステリーとはまた違った面白さで夢中になれる．もったいないのでわざと我慢しながらゆっくり読んでいきたい．
・4/3 半分読了．なんだかもったいないまま半分が終了してしまった．他の人のレビュー見てても後半から怒涛のような展開らしいから、ますます大事に読みたくなってきた．特にこれだけ分厚い本を読む機会はそんなにないから、読み応えも楽しみながらにしようと思う．
・4/22 やばい．後半に入ってますます止まらなくなってきた．確かに怒涛のように展開しそう．読むのを止めるのに一苦労だ．なんとかしないとあっという間に読了してしまいそう．うーん、悩ましいな．
・4/27 とうとう最後の章まで来てしまった．かなり我慢してゆっくり制御して読んでるのに、もう結末近いと歯止めが効かなくなるような気がする．
・5/3 やばい、終わってしまう！そう思って漸くの思いで読むのを止める（出勤時間が迫ってたのもある）．結末が近いと思うと逸る気持ちを抑えるのがかなり困難になってきた．いよいよエンディングか．本当に終わってしまうのが惜しい．
・5/5 ついに読了．なるほど、そういうどんでん返しなのね．いやー、評判通り面白かった．このままアニメも見てみようかな．それにしてもなかなかよく考えられてると思う．この人の他の本も読んでみよう．

2016/02/06

　夕方、子どもが帰る頃の時間となると、ドヴォルザークの「家路」が放送される。私が子どもの頃、それは「夕焼け小焼け」だったけれど、「家路」が流れる町に住んでいたこともある。そんなちょっと昔懐かしい町、神栖66町に住む渡辺早希が千年後の人々に当てた手記、という体裁の小説。ところが、神栖町という町名に異物のように差し挟まれた「66」が示すように、ここはちょっと昔懐かしい町ではない。千年後の未来である。

　人類の中から超能力者が現れ、マイノリティとして迫害され……といった話はヴァン・ヴォートの『スラン』以降、最近なら映画『Ｘメン』にまで引き継がれているＳＦのおなじみのテーマだけれど、超能力者（あるいは新人類あるいはミュータント）と人類との抗争の末の遙か未来を書いたＳＦというのはこれまであったのだろうか？　生き残った超能力者たちが結界に囲まれた小さなコミュニティを作っている、それが神栖66町であり、ここには超能力者たちの社会はいかにして可能かという思考実験が周到に凝らされている。
　神栖66町では超能力（といってもそれは念動力、サイコキネシスである）は呪力といわれ、学校で子どもたちは呪力を制御することを学び、呪力を使ったスポーツ（？）大会の様子なども描かれる。つまり、ＳＦに抵抗のある読者は貴志版『ハリー・ポッター』だと思って読むといい。ハリー・ポッターのように魔力を使う人間のダークな面もこれでもかと描かれている。かなりの部分は冒険小説であり、また主人公の成長物語であり、そして「超能力者たちの社会はいかにして可能か」という回答が徐々に明かされていくミステリーでもある。他方、呪力をサイコキネシスと呼ぶＳＦの層も保たれており、ＳＦの読者をも満足させるだろう。ちょっと言及されるだけだが、人間原理的宇宙論さえ臭わせている。呪力が物理的に世界を動かす力に限られ、認知系の超能力（読心力、未来予知、透視力）などを含まないのは、現代の物質文明のアリュージョンとも読める。

　単行本が出てから１年半ほどで、２巻本を京極夏彦張りの分厚い１巻の新書にしてしまった版で私は読んだ。ただただ、その厚さで買ってしまった私としては、文庫版がせこせこと3巻本で出ているのはちょっと寂しい。