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都市対地方の日本政治 の商品レビュー

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2010/06/12

この本を読み終わってまず頭に浮かぶのが「民主党の大勝利、政権交代」、そして「鳩山政権の急激な内閣支持率下落」、さらに「菅政権誕生による急激な支持率上昇」という『事件』である。 これらの事件は全て、本書で示される「クリーヴィッジと変動率から周辺・地方政治の自律をみる」という分析に逆...

この本を読み終わってまず頭に浮かぶのが「民主党の大勝利、政権交代」、そして「鳩山政権の急激な内閣支持率下落」、さらに「菅政権誕生による急激な支持率上昇」という『事件』である。 これらの事件は全て、本書で示される「クリーヴィッジと変動率から周辺・地方政治の自律をみる」という分析に逆行した現象だ。民主党の大勝利は「中央・都市」の戦略によって強力に完成されたものである。投票の要因も「人から党へ」という傾向が見られた。 鳩山内閣の急激な支持率下落の原因は主として沖縄の普天間の問題にあったといえる。しかしこれは地方の問題(つまり、沖縄の人の生活云々)としてとらえられたというよりかは、都市の視点からの「首相の決断力に対する不満」「国際社会の日本の地位に対する不安」からもたらされたものであろう。 そして菅政権誕生に伴う急激な支持率上昇である。菅政権は高い支持率(朝日60%、日経68%)を確保している。菅政権の方針は地方に配慮するというよりかは、都市・中央の財政を再建させるというものだ。(先月まであれだけ騒いだ普天間問題が置き去りにされていると感じるのは僕だけだろうか。) この現象は本書が危惧する「都市に有利な政治システム」が完成した結果であろうか。それとも、欧州のクリーヴィッジを日本に当てはめることがそもそも無理なのだろうか。「地方型」の政党は姿を消しつつある。 日本の政治は普天間の問題にも見るように、単純な一枚岩では出来ていない。憲法体制と安保体制が矛盾を孕みながら同時に存在している国なのである。そこから生まれる国民感情はかなり特殊なものであると思う。そして民主党の勝利を観る限りではいわゆる「お上」体質が93年以降変わったとも言い難い。日本には日本なりの風土がやはりあるのではないか。日本の政治理論を組み立てるにあたり最も重要なのは55年体制以前の「混乱期」、さらには戦前の政治にあるのではないかと思う。

Posted byブクログ