コーパスへの道(1) の商品レビュー
7編収録の短編集。 短編全体を通して思ったのは、ハード・ボイルド調のいわゆる”乾いた文体”であること。 そしてそうした文体と、人間の暗い部分の描写のマッチング具合がまた絶妙です。言葉にしがたい劣等感やコンプレックスを、犯罪や暴力とにしっかりと結び付けています。 単な...
7編収録の短編集。 短編全体を通して思ったのは、ハード・ボイルド調のいわゆる”乾いた文体”であること。 そしてそうした文体と、人間の暗い部分の描写のマッチング具合がまた絶妙です。言葉にしがたい劣等感やコンプレックスを、犯罪や暴力とにしっかりと結び付けています。 単なるミステリやサスペンスのアイテムとして犯罪を使うのではなく、人間の闇の部分を描くために犯罪を使う、まさに”犯罪小説”なのだと思います。 「犬を撃つ」と表題作の「コーパスの道」はまさにそんな小説。前者は殺人に至るまでの人間ドラマが印象的です。主人公の現状から、友人との思い出、友人の暴走、幸せの味を知ってしまった不幸な男の末路を、男年の友情と絡めて描く、読後は少し寂しくなるのですが、その寂しさがなぜか心地よく感じさせられます。 後者は若者たちの暴力衝動がテーマ。鬱屈した感情、将来への絶望、そうしたなかなか言葉にしがたい若者たちの感情をしっかりと描いていると思います。 ミステリとしては「グヴェンに会うまで」「コロナド――二幕劇」が印象的。「コロナド」は「グヴェンに会うまで」を戯曲化したもので、グヴェンのエピソードに至るまでの様々な登場人物たちの顔を見ることができます。 前者はミステリとしての展開が気になるとともに、恋愛小説のうまみもある力作。後者は前者に設定やエピソードを付け足しただけ、という作品ではなく、ミステリとしての仕掛けもしてあって両方合わせて、一つの世界観が完成したのだな、ということがわかる作品です。 デニス・ルへインさんは『ミスティック・リバー』『シャッター・アイランド』など、映画化されている作品も多いので、いずれそうした作品にも手を伸ばしてみたくなりました。
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ルヘインは好きな作家なのですが、読むと重くてすごく疲れるのです。 短編集も凄いです。描かれているのは、ろくでもない人々なのですが、そこにもほの暗くさす光が。 実際に上演された戯曲も含まれていいます。これは見たかったな。 いや~重たい。おもしろい。天才だな。
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内容は「犬を撃つ」「ICU」「コーパスへの道」「マッシュルーム」「グウィンに会うまで」とその戯曲作である「コロナド」そして「失われしものの名」の7つの短編から構成されております。 どの作品もデニス・ルへインワールド全開の人間の闇や狂気といったものを独特の暗い世界観で深く描かれてお...
内容は「犬を撃つ」「ICU」「コーパスへの道」「マッシュルーム」「グウィンに会うまで」とその戯曲作である「コロナド」そして「失われしものの名」の7つの短編から構成されております。 どの作品もデニス・ルへインワールド全開の人間の闇や狂気といったものを独特の暗い世界観で深く描かれております。 「グウィンに会うまで」は読んだときにはいまいち内容がよく分からなかったのですが、「コロナド」を読むと内容がスッキリよく分かって、これは良かったですね! どの作品も面白かったのですが、私的には「犬を撃つ」が一番デニス・ルへインの作風っぽくて好きですね。 アンダーグラウンドの過激な言いまわしとかが、ちょっと受け入れにくい人もいると思いますが、はまる人ははまる作風です!
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ルヘイン、うまいな。 短編は初めて読んだけれど、ひりひりするような、ざわざわするような、そして哀しくてやさしい。
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ルヘインの短編集。 戯曲を含めて7編収録。 どれも独特の味を持ち、ルヘインの世界の多様さを見せ付けられる。 「グウェンに会うまで」とそれを戯曲化した「コロナド」はミステリとしてもよく出来ているけれど、それ以上にある種の恋愛小説としてそれ以上の出来だと思う。 どちらもラストが切な...
ルヘインの短編集。 戯曲を含めて7編収録。 どれも独特の味を持ち、ルヘインの世界の多様さを見せ付けられる。 「グウェンに会うまで」とそれを戯曲化した「コロナド」はミステリとしてもよく出来ているけれど、それ以上にある種の恋愛小説としてそれ以上の出来だと思う。 どちらもラストが切ないよ。
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巧い。とても良質な短篇集。 ヒリヒリとした乾いた描写が、 短編という形式を最大限に利用して、 読み手の心を掴んでくる。 圧倒的な筆力を持った優れた作家だと思う。
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十分に読み応えはある。しかし、なにしろルヘインだ。並の書き手なら★4つは躊躇ないところだが、彼の長編(パトリック&アンジーシリーズ)に比べるとどうしても点が辛くなる。興味深いのは、本書の最後に収録されている「失われしものの名」(The names of the missing)。...
十分に読み応えはある。しかし、なにしろルヘインだ。並の書き手なら★4つは躊躇ないところだが、彼の長編(パトリック&アンジーシリーズ)に比べるとどうしても点が辛くなる。興味深いのは、本書の最後に収録されている「失われしものの名」(The names of the missing)。これがレイモンド・カーヴァー〜言うまでもなくアメリカが生んだ最良の短編作家の一人〜の作風にとてもよく似ているのだ。主人公の名前が「レイ」というおまけまでついて、おそらくは亡きレイモンド・カーヴァーへのオマージュなのではないか。ってのは、うがちすぎかな。
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結果をおそれる必要もなく、欲しいものがなんでもすぐに手に入ったら、わたしたちどうなると思う?刑務所に入れられたり、社会から非難を浴びたりする心配がなかったら?犠牲者が都合よく消えて、彼らの姿を見なくてもいいとしたら?そしたらどうなる?わたしたちが愛の名のもとに、心の求めるままにし...
結果をおそれる必要もなく、欲しいものがなんでもすぐに手に入ったら、わたしたちどうなると思う?刑務所に入れられたり、社会から非難を浴びたりする心配がなかったら?犠牲者が都合よく消えて、彼らの姿を見なくてもいいとしたら?そしたらどうなる?わたしたちが愛の名のもとに、心の求めるままにしでかすことに比べたら、スターリンの罪なんて色褪せてしまうでしょうね。だから、殺人より悪いことは何かなんて訊くんじゃないわよ。
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ルヘインの短編集。短編を読むのは初めてだ。 ルヘインは初期のパトリック&アンジーシリーズの頃好んで読んでいた(なお、パトリック&アンジーは角川文庫で出ていたのだが、その頃は「レヘイン」のよう)。ルヘインの印象は、最初、軽いハードボイルドという意識だったが、徐々に良くなり、『ミ...
ルヘインの短編集。短編を読むのは初めてだ。 ルヘインは初期のパトリック&アンジーシリーズの頃好んで読んでいた(なお、パトリック&アンジーは角川文庫で出ていたのだが、その頃は「レヘイン」のよう)。ルヘインの印象は、最初、軽いハードボイルドという意識だったが、徐々に良くなり、『ミスティック・リバー』で驚愕。すごく良かった。その後の『シャッター・アイランド』ではひねりすぎでピンと来なかったが...。 というように、作品によって印象も様々なルヘインだが、どういった短編を書くのだろうと思い、手に取ったのが本書。 本編は、舞台劇のシナリオも含まれるちょっと変わった短編集。冒頭の「犬を撃つ」はさすがルヘインと思わせる味で一番のお気に入り。後の作品もなかなかの出来で、再びルヘイン作品を読んでみたいと思わせるものだった。
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