われ巣鴨に出頭せず の商品レビュー
読ませる。とにかくグイグイ読ませる筆力に圧倒される。否、筆力というよりは「物を語る力」というべきか。『快楽(けらく) 更年期からの性を生きる』(2006年)とは桁違いである。 https://sessendo.blogspot.com/2020/03/blog-post_28.h...
読ませる。とにかくグイグイ読ませる筆力に圧倒される。否、筆力というよりは「物を語る力」というべきか。『快楽(けらく) 更年期からの性を生きる』(2006年)とは桁違いである。 https://sessendo.blogspot.com/2020/03/blog-post_28.html
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すっきりしない読後感である。著者の焦点は戦犯とされた近衛の 名誉回復なのだろう。 GHQから戦後日本の復興に協力を仰がれた公爵が何故、戦犯と されたのか。原因は戦中に公爵が天皇の前で披露した上奏文に あるとしている。 それは日本での共産勢力の拡大を危惧する内容だった為、戦勝国...
すっきりしない読後感である。著者の焦点は戦犯とされた近衛の 名誉回復なのだろう。 GHQから戦後日本の復興に協力を仰がれた公爵が何故、戦犯と されたのか。原因は戦中に公爵が天皇の前で披露した上奏文に あるとしている。 それは日本での共産勢力の拡大を危惧する内容だった為、戦勝国 となったソ連の意向を受けた日本人マルクス主義者が主体となり 公爵に戦犯の汚名を着せたという内容だ。 しかしなぁ。本文中に「なのだろう」との表記が目立つので分かる 通り、この論は推測の域を出ていないのが残念だ。ロシアの公文 書館に関係書類とか残っていないのだろうか。どうせなら、そこ まで検証して欲しかった。 五摂家筆頭であり、天皇家に一番近しい者として昭和天皇の前で もゆったりと椅子に腰かけ足を組んで話をする公爵の姿なんての は好きだな。 公爵自殺の報に触れた昭和天皇が「近衛は弱いね」と呟いたように、 本書を読んでも公爵の弱さ、優柔不断さは否めない。良書なのだが 推測部分が多いのが気にかかる。 それにしても表紙の公爵の写真は、やはり岸部一徳にしか見えない。 恐るべし、ドラマの影響力!
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2009年(底本2006年)刊。日中戦争開戦時首相、戦後、戦犯容疑逮捕前に自決した近衛の伝記。途中、何度読むのを止めようかと思ったか…。理由は、研究者でもない著者が一次資料(英文・露文)の検討・検証をしないまま、争いある歴史的事実に関して滔々と意見を述べる件に疑問を感じたからである。例示すれば、「マオ」だけを根拠とする等だ(ただし引用したのを開示しただけマシかも)。近衛の家庭人としての人となりや裏面を知るにはまぁまぁの内容。中でも10章(東條退陣工作)、12章(特に戦略爆撃調査団調書)はまずまず。 また、最近余り叙述されないが、本書には憲兵の親玉たる東條英機の面目躍如の記述があり、久々に見た。あるいは、近衛の目線ではあるが、木戸幸一の問題点も触れられており、この点は視点の多様化に資すると思う。しかし、「一億総懺悔」を説明するにあたって、民間・民衆と官・軍との情報の非対称性を看過した著者の叙述や立ち位置は、些か公平でないと思うが、どうだろう?
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近衛文麿は何故貶されるのか。筆者と同じような感覚を私も持っていた。本書に丁寧に描かれていることが正しければ、近衛は戦争の回避を念頭に置き、東条内閣の暴走にあたっては首相暗殺もやむなしと考えた人だ。最後の最後まで最後の一撃や本土決戦での奇跡を夢見た陸海軍に比べたら余程現実が見えてい...
近衛文麿は何故貶されるのか。筆者と同じような感覚を私も持っていた。本書に丁寧に描かれていることが正しければ、近衛は戦争の回避を念頭に置き、東条内閣の暴走にあたっては首相暗殺もやむなしと考えた人だ。最後の最後まで最後の一撃や本土決戦での奇跡を夢見た陸海軍に比べたら余程現実が見えていたと言えるだろう。天皇だって原爆を落とされて伊勢神宮までアメリカの手に落ち「国体の護持」が本当に危うくなって初めて降伏の意思を示したことを考えると、なんらかの期待があったのではないか。 そんな近衛が戦後アメリカの手のひら返しにあったとすると、陰謀論めいているが、共産主義への近衛の態度がソ連シンパのハーバートノーマンに陥れられたというのも本当なのかもしれない。木戸幸一やある意味昭和天皇のしたたかさから見れば「近衛は弱いね」という論評は正しいのかもしれない。でも私はそんな弱さも含んだ近衛文麿を憎むことができない。
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