密教の神々 の商品レビュー
仏教美術のなかで、密教における月天、観音、聖天、明王をとりあげ、それらの図像学的な意味についての考察をおこなっている本です。 著者自身のことばを引用すると、本書の目標は「密教の神々の幾つかをとりあげて、その民俗的な土台を明らかにし、それによって密教のもつ文化史の一側面に焦点をあ...
仏教美術のなかで、密教における月天、観音、聖天、明王をとりあげ、それらの図像学的な意味についての考察をおこなっている本です。 著者自身のことばを引用すると、本書の目標は「密教の神々の幾つかをとりあげて、その民俗的な土台を明らかにし、それによって密教のもつ文化史の一側面に焦点をあて、解明への鍵を得たい」と説明がなされています。とくに、古代インドにおける土着の信仰のありかたに密教美術を理解するための手がかりを求めているのが特徴で、柳田國男らによって創始された日本民俗学の立場から伝統的な信仰を理解する試みと同様のことがめざされているといえるように思います。 ただし、これも著者のことばを借りるならば、著者の関心は「神秘的・宗教的なインドや哲学への興味にあるのではなく、古代インドの科学・技術の探究にあった」と述べられており、本書を読むにあたって、そのことを踏まえておく必要があるかもしれません。また、著者はマルクス主義の唯物史観に依拠しており、密教における呪術的な儀軌にかんしてもそうした立場からその意味と問題点が指摘されていることも、いちおう留意しておいたほうがよいと思います。 とはいえ、著者自身、本書のような試みはこれまであまりなされてこなかったと述べており、仏教美術の図像学を構想するという非常に興味深い試みがなされていることの意義は評価されてよいのではないでしょうか。
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聖天さん.馬頭観音.不動明王など、多くの日本人に親しまれてきた多彩な密教の神々を、インドの古代文化に遡って、文化的、歴史的意味を解き明かす。 -20101202
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