艶麗なる下僕の求愛 の商品レビュー
確認先:目黒区立八雲中央図書館 配置だけを見ると「王子様であるがそれを隠している攻め」と「王子様であることで逆境に置かれる受け」というのは、結構多いのかなという思いを感じる(評者が見ただけでも、吉田珠姫『冷たい瞳の騎士』、若月京子『海賊と囚われの王子』などがとっさに出てきた)。...
確認先:目黒区立八雲中央図書館 配置だけを見ると「王子様であるがそれを隠している攻め」と「王子様であることで逆境に置かれる受け」というのは、結構多いのかなという思いを感じる(評者が見ただけでも、吉田珠姫『冷たい瞳の騎士』、若月京子『海賊と囚われの王子』などがとっさに出てきた)。そのなかでどのような差異を展開するか―ありがちな設定ゆえに課せられた課題に加納はどのように対応したのだろうか。 結論から言えば、まさしくタイトルのとおり『下僕(しもべ)』としてのかいがいしさを兼ねそろえた騎士に「なりそこねた」男を描くことによって、「自分には手の届かない位置にいる王子」ではなく、男のみっともなさ(下僕という位置づけが果たしてこのような結論になるかについては異論もある)を可視化することで差異を計ったといえるだろう。しかしこれは、多くのオーディエンスには「ウザがられるだけの男」と印象付けてしまい、その先に進むための思索を閉じてしまう危うさもにじませる。 加納が意図した部分が箱庭に受け入れられなかったのか、はたまたわかりにくかったのか、結論はまだ見えない。
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