【廉価版】山猫の夏 の商品レビュー
船戸与一の作品は、熱がある。本作もしっかりとこの熱を継承し存在感ある作品になっている。彼の作品には、老獪で強いボスとちょっと頼りの無い若者が、描かれる作品が多く、その周りを死と欲が血生臭く色取る構成が多い。本作は、ブラジル北東部の旱魃地帯のエルクウという町が弓削一徳、通称山猫が現...
船戸与一の作品は、熱がある。本作もしっかりとこの熱を継承し存在感ある作品になっている。彼の作品には、老獪で強いボスとちょっと頼りの無い若者が、描かれる作品が多く、その周りを死と欲が血生臭く色取る構成が多い。本作は、ブラジル北東部の旱魃地帯のエルクウという町が弓削一徳、通称山猫が現れたことにより、町を二分する抗争がおこるという、なんとも現実離れしたストーリーである。何年間もいがみ合い、お互いに決して相手を許さない、アンドラーデ家とビースフェルト家、駆け落ちを失敗する跡取りの子供たちの悲劇は、船戸版ロミオとジュリエットであり、このプロットだけでもなかなかの読み応えである。町に渦巻く狂気の中である面爽やかとも言える振る舞いを見せる山猫の存在感が主人公の青年の目からみた描写を通して迫ってくる。文章に熱があるのである。
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