ジャイアントフィールド の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
瀬尾育生が言った「反復変容体」というのはかなり言い当ててる感あって、詩でもなんでもそうなんだけれど、ぼくたちはくり返される名詞の指すものを一つにまとめたがり、そうした言葉たちが大きな場所(の言葉)の枠のなかであそびはじめると、勝手に現実にものを当てはめて本当にそこでそれが行われてると思いがちだ。ていうか、対象がゆらぐことはよほどのことがな限り許されてはいけない。そう思いこまないと詩はぎりぎり大丈夫にしろ、小説なんてとてもじゃないけれど読めたもんじゃない。 彼の作品が物語的な形式を持つのも、小説的な語りを導入するのも、そうした架空の場所を想起させることが目的の土台にあるからだ。そこで名詞を暴走させ、言語間の連結を断ち切り、組み換え、反復させることによって、これまでの詩にはなかった独特の展開を可能にした。太郎と次郎でなければいけないのは、そこに太郎と次郎という二人の人間がいるという「原則」としての「文法」があって、それに則っていなければ二人は溶解してしまう。山田亮太は嘲笑うように、あるいは頑なに表情を崩さずたんたんと溶解と変容の作業をつづける。ぼくたちはそれに眩暈せずにはいられない。 彼はおそらく同時代においてはかなりいい仕事をしたし、これからもしていくだろう。そう思う。それだけのエネルギーが彼の詩篇からは感じられる。余談だけれど彼による彼自身の詩の朗読をぼくはいちどお目にかかったことがあって、そのとき彼は休日の代々木公園で「ぺぺ」を、声をはりあげてうたっていた。正直、あの空気はかなりやばかった。
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まさにテクニカルな詩だ。 反復変容体:反復して徐々に変容するのだ。 それは遠くはない未来のあなたなのです。 遠くはない未来のあなたなのです、それは。 それは未来の、遠くはない未来の、あなたなのです。 遠くはない未来のあなたはそれなのです。 中略 遠い未来に、それはあなたではない...
まさにテクニカルな詩だ。 反復変容体:反復して徐々に変容するのだ。 それは遠くはない未来のあなたなのです。 遠くはない未来のあなたなのです、それは。 それは未来の、遠くはない未来の、あなたなのです。 遠くはない未来のあなたはそれなのです。 中略 遠い未来に、それはあなたではないのです。 未来の、遠くはない、それは、あなたなのです。
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