誘惑 の商品レビュー

北原亞以子【著】

2013/09/28

江戸時代・天和年間に京で起きたおさんと手代・茂兵衛が不義密通する実在の事件が題材。咲き誇る藤棚の下、今小町と謳われた飛脚問屋の娘おさんは、暦を開板する特権を朝廷から得ている家柄・大経師の浜岡権之助に見初められ嫁入りした。権之助は暦作成を主導しようとする幕府の動きを知り、家の存続と拡大を画策を始めた…。一方おさんは想い人の姿を忘れられない。登場人物が多く読み進めるのに時間がかったが、読者の胸を打ち心を揺さぶる大江戸の情を描く作品。『慶次郎縁側日記・深川澪通り木戸番小屋シリーズ』読んだ方なら是非。

2012/06/01

Ｌ

大経師浜岡権之助の元に嫁いだ若き娘おさん。おさんには嫁ぐまえから想いを寄せる手代茂兵衛がいた。商いに夢中の夫を尻目に茂兵衛への想いを募らせるおさん。茂兵衛と同郷で幼馴染、おさんに仕える女中のおたまもまた茂兵衛に想いを寄せ、茂兵衛の元の店主の娘おみつは店を代わった茂兵衛につきまとう。茂兵衛とそれぞれの女たちの顛末。一方夫の士官を望み商家に囲われるあやめ。やがてあやめは夫の士官先を見つけるが囲われていた男の子を身ごもってしまう。あやめの生きる道は。

女って怖いね、したたかだし。
男は女に振り回される。
たまに出てくる井原西鶴が思い出す妻おふじが息抜き。

2010/07/05

『天地明察』ではサイドエピソードとして語られていた“おさん茂兵衛”を中心に据えた物語。
こちらは逆に“改暦”は脇へと追いやられています。

『天地明察』を読むまで浅学にして知らなかったのですが、この元になった事件は結構有名なもので、井原西鶴が『好色五人女』の一つとし、近松門左衛門が「大経師昔暦」の題名で芝居に仕立てたものなんだそうです。
おかしいなぁ、『好色五人女』は読んだはずなんだけど…。

でも、こういう読み方も面白いです。
そもそも“改暦”自体にそれほど興味はなかったのですが、『天地明察』がきっかけで、『姫の竹、月の草』を読み、『誘惑』を読み、次は『好色五人女』か？（笑）

それにしても、読むのには手こずりました。
何日掛かったかな？
まぁ、史実ですから悲劇に終わるのは確定しているわけで、読み進めるのがつらいというのもあったのですが、主人公のおさんが肌に合わない。
もう少し大人になれよ、って言いたくなるんですね。
男性目線だって怒られそうですけど。

でも、不義を働いてからのおさんは、なんだか男らしくて（笑）嫌いじゃないです。
後半はスルスルッと読むことができました。

2011/07/19

「天地明察」の春海が出てますよ、と教えていただき読みました。（*^_^*）まだ頭の中で、「天地明察」がぐるぐる回っているので、暦の話や春海自身が登場してくるととてもうれしい。ただ、この「誘惑」は、京都の大経師（暦の製品化・販売の実権を握る要職とか）に嫁いだおさんと、その店の手代、茂兵衛の話と途中からわかり、それだったら行く先は心中じゃないの・・と、急に気持ちが重くなった。とはいえ、井原西鶴、近松門左衛門も狂言回し的に時折顔を出し、また、おさん付きの女中、おたまの健気な奮闘にほろりと切ない思いにさせられるなど、物語の奥行きが楽しめたし、また、なんといっても暦に関わる商人や武士、公家の思惑が面白かった。おさんと茂兵衛はなんとか幸せになってくれないかなぁ、と期待したりもしたのだけど、それは「史実」どおりで、そりゃそうだよね・・・。仕官を焦る浪人とその妻、茂兵衛の元の奉公先の主人や娘、など周りの人物たちもよく描かれていてその意味でも楽しめた一冊だった。

2011/09/17

恋に狂った乙女の情念の狂おしさを井原西鶴などの戯曲家から見た感じの話。親に決められた縁談で、奉公人に恋をして…もう少し丸く立ち回るということができない女達の一途さが哀れだった。

2011/08/19

登場人物が皆「これが最善策」と思って行動しているのに全てが良くない方向へ進んでしまう。それは皆、自分のことしか見えていないから。唯一、自分の事以上にお主の事だけを思って逝ったお玉が不憫。