ミカイールの階梯(上) の商品レビュー
2013.12.14 再読 一回目はとりあえず、圧倒的な情報量に押されて、筋を追うだけで、息も切れ切れに読み終わった感があったが、二回目の今回はある程度、他の部分を鑑賞する余裕があった、と思う。 舞台は中央アジアで、そこではソ連を思わせる共和国と、イスラム原理主義組織を思...
2013.12.14 再読 一回目はとりあえず、圧倒的な情報量に押されて、筋を追うだけで、息も切れ切れに読み終わった感があったが、二回目の今回はある程度、他の部分を鑑賞する余裕があった、と思う。 舞台は中央アジアで、そこではソ連を思わせる共和国と、イスラム原理主義組織を思わせるマフディ教団が互いに覇を争っている。 お互い、政治的なイデオロギーと救済信仰を掲げるまったく相容れない集団と見せかけながら、裏では通じ、必要最低限の戦争状態を保ちながら、微妙なパワーバランスを保っていた。 そのお互いにロスト・テクノロジーを供給することでバランスをとっているのが「ミカイリー(ミカイールの眷属)」と呼ばれる人々だ。彼らは一族のうち、「守護者」とよばれる特殊な遺伝子を持つ者を特に重用し、自らの地位を保っていた。 しかし、マフディ教団内でおこったクーデターをきっかけにバランスは崩れていく…。 一回目は個々のキャラクターの面白さにひかれていたが(それがあったから辛くも読み通せたともいう)、くしくもゼキが「鏡もしくはレンズ」と評されたように、それぞれがそれぞれに何かを背負い、それら背負ったものに動かされている印象が強かった。 現実世界で生きている人間も、突き詰めればそれに近いことが起こっている…ハズ。 1回目も2回目も変わらないのは「女殉教者」のインパクト。 ちょうど、購入したての時に、いまは亡き小田晋先生(精神科医 犯罪心理学に詳しく、著作も多数ある)の、自爆テロに身を投じる若者たちの背景を読んだところだった。 曰く、家庭内で虐待され、そして母親も虐待に違い状態が続いており、子どもも自尊心はカケラほども育たず、それを全て覆すために「聖戦」に身を投じる、という言説であった(タイムリー!)。 「最も虐げられた者が最も残虐な行為に手を染める」、いわば不幸の拡大再生産である。
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登場人物全員に二つの性質がある。 生まれもった性質。状況の変化で現れた性質。隠していた性質。秘密にしている性質。 文明崩壊後の世界を、なんとかつなぎとめている政府ですら、表と裏の顔があるのだから、人間ひとりにあるのは当たり前なのですが。 今までは、フェレシュテたちが逃亡してくる...
登場人物全員に二つの性質がある。 生まれもった性質。状況の変化で現れた性質。隠していた性質。秘密にしている性質。 文明崩壊後の世界を、なんとかつなぎとめている政府ですら、表と裏の顔があるのだから、人間ひとりにあるのは当たり前なのですが。 今までは、フェレシュテたちが逃亡してくるまでは、二つの性質ありながら、上手くやりくりしてきた中央アジアの世界。 フェレシュテ逃亡をきっかけに、二つの性質の均衡が取れなくなった世界。どこへ進むのか。 現状では、人間爆弾による計算された戦争という、灰色の世界に行き着きそうです。どこぞの島の魔女さんが喜びそうな、灰色の平穏。 メキシコのほうの世界は、なかなか救いのない世界でしたので、前へ進んで欲しいです。
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「ミカイールの階梯」では、場所が場所だけにイスラム系のマフディ教団やロシア系の中央アジア共和国なるものが登場。教団内部の勢力争いに自爆テロ。知性機械ミカイールにアクセスできる階梯(ミアラージュ)や赤毛の精鋭部隊(グワルディア)。加えて、殺戮機械パリーサなども入り乱れ、中央アジアは...
「ミカイールの階梯」では、場所が場所だけにイスラム系のマフディ教団やロシア系の中央アジア共和国なるものが登場。教団内部の勢力争いに自爆テロ。知性機械ミカイールにアクセスできる階梯(ミアラージュ)や赤毛の精鋭部隊(グワルディア)。加えて、殺戮機械パリーサなども入り乱れ、中央アジアは動乱の渦の中へと突き進む。天空を巡る12基の知性機械によって封じ込められているが故の微妙な差異。「端末の破壊とネットワークの消滅」。はたして人類に未来はあるのか。
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