日本史を変えた播磨の力 の商品レビュー
播磨の力を再認識させてくれる2冊《赤松正雄の読書録ブログ》 この夏の終わりに姫路城の知られざる逸話を聞く機会があった。いわば「逆説の日本史」ならぬ「逆説の姫路史」ともういうべき面白い中身だった。今まで、姫路は明治維新を境に苦境を強いられ、神戸に首座を明け渡してきた。その背景の...
播磨の力を再認識させてくれる2冊《赤松正雄の読書録ブログ》 この夏の終わりに姫路城の知られざる逸話を聞く機会があった。いわば「逆説の日本史」ならぬ「逆説の姫路史」ともういうべき面白い中身だった。今まで、姫路は明治維新を境に苦境を強いられ、神戸に首座を明け渡してきた。その背景の秘密を説く『姫路城開城』を表した藤原龍雄さん自身による講演は実に興味深いものだった。元中学校の校長をされていた氏はその後、播磨学研究所員として地味ながら研究を続けておられる。 その藤原さんの務める播磨学研究所の所長で元神戸新聞論説委員長の中元孝迪さんによる『日本史を変えた播磨の力』を勧められて、読んだ。風土記がほぼ完全な形で残っているのは、出雲風土記と播磨風土記ぐらいといわれる。輝かしい風土記を持ちながら、その地で生きる政治家が今一歩その歴史・風土のよってきたるところを知らない事実を恥じ入った。 例えば、姫路の北部から福崎、市川町に至る西光寺野地域における食料自給に向けての壮大な明治のプロジェクトの存在や、たつの市における畳を使っての揖保川の氾濫を防ぐ堤の由来などは凄い知恵だ。こうした地域に根ざす手立てをしっかりと知って宣揚していきたい。 この書のようなものはもっと全国ネットの出版物であることが望ましいが、残念ながら地元新聞の出版物のためインパクトが弱いのが惜しまれる。合わせて、この本の最後の部分に「人国記」が掲載されているが、「文高政低」との位置付けが気にかかる。文化人に比べて政治家が今一歩弱いと言われるのだ。確かに、柳田国男、三木清、三木露風、和辻哲郎から池内紀らに至る錚々たる文化人の系譜に比べると政治家は貧弱に見える。しかし、通常の尺度と角度を違えて見れば、結構この地の政治家も捨てたものではないと思うのだが、あまりこれを強調すると、いかにも我田引水の譏りを免れないのでこれくらいにしておく。 ともあれ、播磨の復興を考えるにあたって、この2冊の果たす役割は大きい。これから、様々な機会にその効用を訴えていきたい。
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