海松 の商品レビュー
(2009.07.02読了) 神さんが本の表紙に惹かれて、読んでみたいというので図書館から借りてきました。神さんの感想は、いまいちということでした。神さんの好きな作家は、村上春樹、堀江敏幸、川上弘美、宮部みゆき、等々です。 せっかく借りてきたので、神さんが読んだ後に読んでみました...
(2009.07.02読了) 神さんが本の表紙に惹かれて、読んでみたいというので図書館から借りてきました。神さんの感想は、いまいちということでした。神さんの好きな作家は、村上春樹、堀江敏幸、川上弘美、宮部みゆき、等々です。 せっかく借りてきたので、神さんが読んだ後に読んでみました。面白いわけでもないけど、つまらないというわけでもありません。うまく表現できませんので、NHK週刊ブックレビューの内容紹介を拝借しておきましょう。 「今年度、川端康成文学賞を受賞した表題作を含む、四つの短編を収めます。東京で働き続けることに不安を抱き始めた、40代後半の女性が主人公。志摩半島の一角に小さな土地を買い、家を建て、忙しい仕事の合間を縫っては通う日々の中で、自らの新たな一面を見つけ出していきます。美しい自然描写と、静かな語り口の向こうに、力強い物語の世界が立ち上がってきます。」(7月4日に放映されました。) 四つの短編は、「海松(みる)」「光の沼」「桟橋」「指の上の深海」です。 「海松(みる)」と「光の沼」は、同じ主人公です。愛知県の実家を離れ、都心のマンションで一人暮らしを始めてから二十年が過ぎようとしていた。(14頁)というのが11年前の5月ということと友人の葬式であった年上の男が元全学連ということなので、志摩半島に土地を買い家を建てたのが40代で、現在は50代後半の著者と同じくらいの女性ということになります。(NHK内容紹介者は、ちょっと読み違えたようです。) 志摩半島の家には、一件に住んでいる弟の家族と同居する母親、東京に住んでいる妹と主人公が自分たちの都合のつくときに訪れて、何日か滞在してゆくという使い方をしている。都会にはない自然の姿に接して活力を取り戻し、いつもの生活に戻ってゆく。 主人公は、猫を飼っているので、志摩半島の家に来るときは、猫も一緒に連れてくる。猫もここに来ると外に出てゆき、夕方になってから帰ってくる。 東京から志摩半島まで移動する間に猫が粗相をするのではないかと心配したが、一度もそのようなことはない。(我が家の猫も、帰省のとき連れて帰るが、移動の途中は籠の中で、おとなしくしており、粗相をしたことは一度もない。) 主人公は、フユイチゴを摘んでジャムを作ったり、ヘビの抜け殻を眺めながら思索にふけったりして過ごしている。 「光る沼」では、家の周りに繁茂する植物を刈り払うと道が現れ、水路が現れ、沼が出現する話。住み始めた周辺の歴史を不動産屋であれこれたどってみたり、現れた道をたどってみたり、という話。沼からヒメボタルが現れる。 著者 稲葉真弓(イナバ・マユミ) 1950年、愛知県生まれ 1973年、「蒼い影の傷みを」で女流新人賞を受賞 1980年、「ホテル・ザンビア」で作品賞を受賞 1992年、「エンドレス・ワルツ」で女流文学賞を受賞 1995年、「声の娼婦」で平林たい子文学賞を受賞 2008年、「海松」で川端康成文学賞を受賞 (2009年7月4日・記)
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稲葉真弓さんの作品は初めて読みました。 図書館でよく目についていましたが、なかなか手に取る機会がありませんでした。 「週刊ブックレビュー」でこの作品の紹介があり、図書館に行くと書棚に並んでいたので、借りて読みました。 表題作の「海松」「光の沼」「桟橋」「指の上の深海」の4作品か...
稲葉真弓さんの作品は初めて読みました。 図書館でよく目についていましたが、なかなか手に取る機会がありませんでした。 「週刊ブックレビュー」でこの作品の紹介があり、図書館に行くと書棚に並んでいたので、借りて読みました。 表題作の「海松」「光の沼」「桟橋」「指の上の深海」の4作品から成ります。 「海松」と「光の沼」は連作です。 この2作品と「桟橋」は三重県の志摩半島の背後は山という町が舞台です。 主人公の50台と見られる女性は、愛知県出身で東京のマンションで一人暮らしをしています。 東京が好きかどうかわからなくなって、志摩半島に70坪の土地を買って別荘として利用するようになります。 バージニア・ウルフの作品が出てきます。 ウルフはイギリスの作家で投身自殺をしています。 ウルフの名前は知っていました。 トワエモア、ビリーバンバン、宇崎竜童、浅川マキ、サイモン&ガーファンクル、など懐かしいです。 「海松」(みる)というのは、海藻の名前ですが、古語としては特に和歌で「見る」との掛詞として用いられるようです。 万葉集にもこの用例があるということです。 「聲」という漢字が使われています。 「声」でなく「聲」とはっきり区別しています。 稲葉真弓さんは、言葉の使い方に細かい気配りをなさっています。 土地とは何だろうかという問いかけが「光の沼」ではなされています。 「桟橋」も舞台は志摩半島ですが、中身は前の2編とは違っています。 志摩半島のリアス式海岸の岩場の様子がリアルに描かれています。 この女主人公は夫とのいさかいから志摩半島の別荘地に来ます。 志摩半島の海の様子が素敵に描かれています。 読んで、志摩半島に憧れを持ちました。三重県には行ったことがありません。 稲葉真弓さんは愛知県出身ということで、主人公と重なるところがあるようです。
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