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経済成長という病 の商品レビュー

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27件のお客様レビュー

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2012/07/07
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エマニュエル・トッドら人口学者らの調査の中で、民主化の進展と識字率の上昇によって女性の社会進出が旺盛となり、同時に出生率が低下していくことが指摘されている。即ち際限なく人口が減り続けるということはなく、必ずどこかで止まる。社会の適正人口で均衡するということである。また、出生率が低下し人口が減少していく社会は決して暗いものではなく、寧ろ社会の適正人口に向かい出生率が自然回帰するプロセスであるともいう。経済もその社会に応じた適正規模というものがあるのであって、必ずいつかはその右肩上がりが止まる時が到来する。今こそ我々は経済成長という呪縛を解き放ち、右肩上がりが止まった後の社会の作り方を冷静かつ具体的に考想しておくべき。経済成長を至上命題とし飽食した市場に商品を投入し、その結果として、人々が過剰消費、過剰摂取に明け暮れる光景は滑稽を通り越して悲惨なものがある。経済成長が社会の発展プロセスのひとつの様相であれば、経済均衡もまた社会の発展プロセスのひとつである。均衡段階において無理やり経済成長を作りだそうとするその様は珍妙奇天烈以外のなにものでもない。

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2012/04/29

現代は少子化が進んでいるのではなく、むしろ今までの人口増加が異常で、今は正常な出生率に戻りつつあるんだ、という意見がおもしろい。そして納得! 震災があった今、この本を読むと、いろいろと考えさせられます。

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2012/01/18

(「BOOK」データベースより) 金融危機は何を意味するのか?経済は成長し続けなければならないのか?なぜ専門家ほど事態を見誤ったのか?何が商の倫理を蒸発させたのか?ビジネスの現場と思想を往還しながら私たちの思考に取り憑いた病と真摯に向き合う。

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2012/01/09
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経済成長がすべて、という今の流れには自分も違和感を感じるし、これからの高齢社会、人口減少した社会に見合った経済規模にシュリンクすべきというのもわかる。ではどのようにしたらよいのか、という点がはっきりせず、もどかしい読後感でした。企業が海外進出をやめて国内で雇用創出してくれるまで待てばいいのか、僕らが余計なモノを買うのをやめたらよいのか・・・。

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2012/01/22

読み応えのある、とても、味わい深い本でした。 著者と全く同い年(青年から熟年まで、高度成長時代と低成長の時代を生きて、今や「成長の限界」を感じている世代)なのと、大学違えど工学部出身でありながら、エンジニアではなく、ビジネスの世界に身を置いて来たので、言葉に出来ない何かの共通項...

読み応えのある、とても、味わい深い本でした。 著者と全く同い年(青年から熟年まで、高度成長時代と低成長の時代を生きて、今や「成長の限界」を感じている世代)なのと、大学違えど工学部出身でありながら、エンジニアではなく、ビジネスの世界に身を置いて来たので、言葉に出来ない何かの共通項があるのか、本書の内容には深く共感できた。 私も一時期、ITハード系のビジネスで秋葉にしばしば通っていたのだが、著者と接点はなかったは残念。 目次 ------------------------- 序章 私たちもまた加担者であった 第一章 経済成長という神話の終焉  リーマンの破綻、擬制の終焉  宵越しの金は持たない 思想の立ち位置  専門家ほど見誤ったアメリカ・システムの余命  経済成長という病  グローバル化に逆行するグローバル思想  イスラムとは何でないかを証明する旅  「多様化の時代」という虚構  限りなく細分化される個人    第二章 溶解する商の倫理  グローバル時代の自由で傲慢な「市場」  何が商の倫理を蒸発させての火  私たちは自分たちが何を食べているか知らない  ギャンブラーの自己責任論  街場の名経営者との会話  寒い夏を生きる経営者  ホスピタリティは日本が誇る文化である 第三章 経済成長という病が創り出した風景  利便性の向こうに見える風景  暴走する正義  人自由主義と銃社会  教育をビジネスの言葉で語るな  テレビが映し出した異常な世界の断片  雇用問題と自己責任論  砂上の国際社会  直接的にか、間接的にか、あるいは何かを迂回して「かれ」と出会う 終章  本末転倒の未来図

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2011/09/07
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「実感の無い景気回復」と言われたのが数年前でしたが、それを実現させたのが所謂「泡銭」で、出資と経営の分離云々が叫ばれて、やがて至上資本主義が暴走を始めた… これから先は経済成長に囚われることなく、「地に足をつけた社会にしましょう」と謳う著者。 それを敷衍して秋葉原の事件や人口減少の前途を「経営者」の視点から述べています。数々の偽造事件の主犯は、恐らくは家族想いで立派なお父さん。であっただろう。人間一人が善悪を持ち、どちらかに傾倒している人はいない云々ははっとさせられました。 あちらこちらに「なるほど」と思わせる箇所があり、その思考は瞠目に値します。 が!後半にある人口減少の節。 「今までが異常であるため、人口減少して落ち着いてくるのが妥当」「経済成長のために出生率を上げる等と言う政府のはいかがなものか」云々ありましたが、前者に対しては全体人口のバランスが肝要であり、人口ピラミッドが総崩れしている現状には触れていないこと。そして後者に対しては経済成長を主軸に据えて発しているが、一番考えなくてはいけないことは「生みたくても生めない経済力の現状」にその問題の根底があるように感じます。何の本だったか忘れましたが(笑)、現在日本の出生率と経済力には相関関係が見られるという統計もあるようです。その箇所が一番腑に落ちませんでしたが、総合的には良書と言えます。尚、この本は論題がやや漠然としているので、 それを詰めて具体論を展開している、広井良典著「定常型社会」を併せて読むと曙光が見えてくると思います。また山岸俊男著「安心社会から信頼社会へ」では 平川さんの「商倫理」節に関して深く鋭く入り込めるようになると! 思いますた!

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2011/08/29

難しい本です。経済哲学と呼んでもいいかもしれません。 著者は表面的にはサブプライムローン問題、リーマンショックに端を発する金融危機を取り上げ、経済が暴走する様子を批判しているように見えます。本書で著者が書いているように、本来の商売とはモノやサービスと金銭との交換で、それが経済を...

難しい本です。経済哲学と呼んでもいいかもしれません。 著者は表面的にはサブプライムローン問題、リーマンショックに端を発する金融危機を取り上げ、経済が暴走する様子を批判しているように見えます。本書で著者が書いているように、本来の商売とはモノやサービスと金銭との交換で、それが経済を構成しているべきモノだという考え方には賛同します。 ですが現実には、実態のない金融商品に値段がつけられ、その値段に根拠がないことが露呈して価値を失うという現象が起こっていました。本来の金融商品は、現物(実際のモノ)の相場が乱高下して大きな金銭的損失を被るリスクを小さくするために考えられた商品でした。それが本来の意味を離れ、投機としてお金を生む手段と変容したことが、今回の金融危機を生んだといえるのではないでしょうか。 ですが作者が批判したいのは、そんな表面的な部分ではないでしょう。現代社会が大前提としている、「経済は成長しないといけない」という概念をも疑ってかかっています。経済成長を追い求めてきたことで、私たち現代社会に住む人は皆、もっと大事なものを失ってしまったのではないか、という主張が見えます。 私たちが何を失ってしまったのか、どうあるべきなのかは明確には示されていません。そのことが本書の読解を難しくさせているのですが、答えを自分たちで考えていかなければならないのでしょう。作者が答えを隠した意図は別のところにあるのかもしれませんが、自身の見解を示すことで、それが正しいか正しくないかの議論になってしまい、私たち一人一人が答えを考えなくなってしまう、という意識が働いたのかもしれません。 作者は「少子化」という表現にも疑問を呈しています。十分に安全な社会で、産んだ子供の生命が脅かされる可能性が非常に低くなったのであれば、多く子を作る必要はなく、現状の日本が自然な状態なのではないか、むしろこれまでの出生率が異常だったのではないか、ということです。日本の人口は減少に転じていきますが、それは成熟した社会において自然な姿ではなかろうか、そのように論を進めています。 人口減少が自然化と問われると疑問に感じる部分はありますが、政府や自治体が進めている少子化対策が的外れな印象を受けたり、実際に全く成果が上がっていなかったりすることを考えると、少子化問題の根本は、案外作者の意見に近いところもあるのかもしれません。 さて、日本社会、あるいは世界経済は、今後どうあるべきか。社会全体の資産を増やし、経済的に成長していくことだけが正解だとはいえなくなってきているでしょう。日本は東日本大震災の後、お金では測れない幸福や安心といったものに価値観を求めつつあります。米国はリーマンショックから立ち直ったとはいえず、モノを持つよりもシェアすることに意義を見いだす人々も現れてきました。欧州はギリシャの経済危機や、英国の暴動など、やはり先の見えない状態が続いています。 小さい範囲で、自分のことを考えてみますが、お金に頼らない生活を模索していくことが、1つの答えになるのではないかと思います。お金をかけなくてもできる生活や娯楽はありますから、そういったところに着目する。また仕事の上でも楽してもうけようとはせずに、地に足をつけた働き方をしていく、そういったことが求められているのでしょう。

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2011/07/14

2年越しでようやく読めた本。 読み進むにつれ、社会システムにまで言及されていて、真ん中をすぎたあたりから読むのが止まらなくなりました。 話題は少し古くなってしまったけど、そのことを差し引いても今のタイミングで読むことができてよかったと思いました。

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2011/06/03

リーマン・ショックやそれと共に起こった世界的な不況が起こった原因をあれこれ分析する本は何冊も出ているが、この本はそうした原因の追求ではなく「内的な必然」を考える、つまり社会のメンバー全体が一連の「事件」にどこかで加担してきたことを確認する本だと言えるかも知れない。社会のあらゆる問...

リーマン・ショックやそれと共に起こった世界的な不況が起こった原因をあれこれ分析する本は何冊も出ているが、この本はそうした原因の追求ではなく「内的な必然」を考える、つまり社会のメンバー全体が一連の「事件」にどこかで加担してきたことを確認する本だと言えるかも知れない。社会のあらゆる問題への処方箋が経済成長という言葉でまとめられることへの疑問の呈示。人口が減少し、経済が均衡するのは原因ではなく結果ではないか。経済が右肩上がりを止めた後の社会の作り方を考えるべきではないか?そういう視点を与えてくれる本。

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2011/04/16
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この本の注意すべきところは、経済成長そのものを悪だといっているわけではないということ、また現実的な代替案を述べているわけではないということである。 経済を成長させるといったことを前提に議論を続けることにいったん疑問を持つ。そもそも経済成長を妨げる要因に市場の縮小であったり少子化があげられたりする。だがこれは原因と結果が逆転してはいないか?経済が成長し社会が成熟してきたからこそ少子化が進んできたのではないだろうか。そうであるなら人口減少していくのは当然のこととしてこれからの社会の設計をすべきではないか、というのが筆者の主張である。

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