精神障害者をどう裁くか の商品レビュー
【目次】 第一章 刑法39条――「心神喪失」犯罪とは―― 第二章 精神障害者はどう扱われてきたか? 第三章 「座敷牢」から「病院任せ」の時代へ 第四章 池田小事件と「医療観察法」の誕生 第五章 刑法39条に対する批判 第六章 裁判員制度と精神鑑定
Posted by
触法精神障がい者に対する処遇の「現実」なのだろう。だけど、あれこれと批判しているばかりで善後策というものが見つからない。
Posted by
精神障害者の処遇の歴史から、現在における39条運用の問題点まで。そもそも明らかに責任能力がなさそうな被疑者(知的障害者、認知症の高齢者等)であっても、精神鑑定が行われるのは例外的なケースであるという記述が衝撃的だった。無責任能力者が健常者として扱われた結果刑務所が劣悪な収容所状態...
精神障害者の処遇の歴史から、現在における39条運用の問題点まで。そもそも明らかに責任能力がなさそうな被疑者(知的障害者、認知症の高齢者等)であっても、精神鑑定が行われるのは例外的なケースであるという記述が衝撃的だった。無責任能力者が健常者として扱われた結果刑務所が劣悪な収容所状態となるのは明らかにシステム上の欠陥である。医療観察法不処遇者の対応とともに早急な改善が必要だ。
Posted by
仕事で必要に迫られて読む。 精神障害者に関する歴史、法律や法律の考え方が整理されており、精神保健福祉法や医療観察法を理解する入門書としてとても役に立った。 著者の考えが保安処分を許容する傾向にあることは少しきになるが、精神科医と弁護士との考え方の違いは否めない。 また、歴史や制...
仕事で必要に迫られて読む。 精神障害者に関する歴史、法律や法律の考え方が整理されており、精神保健福祉法や医療観察法を理解する入門書としてとても役に立った。 著者の考えが保安処分を許容する傾向にあることは少しきになるが、精神科医と弁護士との考え方の違いは否めない。 また、歴史や制度の説明が主題なので、自分や家族に精神障害が認められた場合や被害者になってしまった場合にどうすべきか、将来制度をどう改善すべきかについてまでには議論が及んでない。 他方で、現在の(出版当時の)精神医学の水準についての説明(多少抽象的ではあるが)や具体的事例における精神鑑定結果の批判的検討が分かりやすく参考になる。 最新の統計や事例がアップデートされたら改訂版も買って読みたい。
Posted by
精神障害者には罰を下さず治療を優先。 罪に問わず強制入院させるのであれば、実刑判決したあとに治療に専念すればいいのでは?
Posted by
精神障害者についての基本的な事項が整理されていて、とても分かりやすい本です。精神障害者問題についての歴史的経緯を概観することができます。歴史的経緯を知らないと、今起きている問題をきちんと理解することはできないと思いました。 精神障害者問題は古くからあって、今なお解決策が見出され...
精神障害者についての基本的な事項が整理されていて、とても分かりやすい本です。精神障害者問題についての歴史的経緯を概観することができます。歴史的経緯を知らないと、今起きている問題をきちんと理解することはできないと思いました。 精神障害者問題は古くからあって、今なお解決策が見出されていない問題。触法精神障害者は、犯罪の加害者であると同時に病に苦しむ人でもあるという言葉が印象に残りました。社会にとって、本人にとって、一番いい方法は何なのでしょうか。少なくとも、今の時代において検討されるべきは、司法と医療が、協力してこの問題に取り組むことなのかなと考えました。
Posted by
精神鑑定について、一般の人に説明するのに示唆に富んだ内容だった。司法精神医学に影響を与えた精神分析の悪い面についても、反省させられた。(って、私が反省することじゃないけど…)
Posted by
暗澹たる思い。問題はここに至るまでに手が打たれないこと、そして、精神障害者の居場所が無い社会か…。その一手一手は小さくとも、打たずにいた結果に対して払わされる代償が大き過ぎる…。
Posted by
岩波明氏の本は二冊目。 最近興味を持っていた精神障害者の法律について書かれていたので、読みました。 措置入院、医療保護入院や、最近できた医療観察法、昔の精神障害者の扱われ方から現在に至るまでの歴史など、とても勉強になった。 たまに挿絵や写真が載っていて、当時を想像することがで...
岩波明氏の本は二冊目。 最近興味を持っていた精神障害者の法律について書かれていたので、読みました。 措置入院、医療保護入院や、最近できた医療観察法、昔の精神障害者の扱われ方から現在に至るまでの歴史など、とても勉強になった。 たまに挿絵や写真が載っていて、当時を想像することができました。。
Posted by
刑法は,心神喪失者の行為は罰しない,心身耗弱者の行為はその刑を減軽する,と定める。この刑法39条にまつわる本。殺人などの凶悪犯罪では,精神障害者が加害者になることがかなり多い。 従来,統合失調症,あるいは躁鬱病と診断されると,犯行時にどのような精神状態であろうと責任能力はまっ...
刑法は,心神喪失者の行為は罰しない,心身耗弱者の行為はその刑を減軽する,と定める。この刑法39条にまつわる本。殺人などの凶悪犯罪では,精神障害者が加害者になることがかなり多い。 従来,統合失調症,あるいは躁鬱病と診断されると,犯行時にどのような精神状態であろうと責任能力はまったくないと判断する慣例があったが,近年の厳罰化傾向で批判が多かった。個々の症例ごとに,犯行時の精神状態や行動を十分検討すべきとの考え方が最近は支配的。 そもそも,古今東西を問わず,精神障害者は健常者と区別して取り扱うことが行なわれていた。近代刑法が自由意思と責任という概念を導入する以前から,精神障害者の犯罪に対しては,通常の刑をもって臨まない。古くは隔離が,19世紀以降は治療が試みられた。 日本でも危険な精神障害者は,基本的には隔離されていた。ただ近代化以前は大規模な収容施設はなく,私宅の座敷牢に監禁されるのが常だった。明治に入っても,しばらくの間は,座敷牢を許容する経過措置がとられた(精神病者監護法)。 この辺の人権感覚は現在とはかなり違う。18世紀にはイギリスなどに精神病院があったが,一種の観光名所になっていたという。病院は「狂者」たちの姿を一般公開し,見物人から入場料をとった。患者をつついて興奮させるための杖まで持ち込み可だったというから驚く。 近代化以降,日本では法整備が進むが,精神科領域の法規も徐々に拡充された。その流れは,ジャーナリズムを賑わす事件が牽引した。精神病者監護法は相馬事件,精神衛生法の改正はライシャワー事件,精神保健法は宇都宮病院事件,医療観察法は池田小事件が強く影響した。 医療観察法では治療が困難な患者を,マンパワーの整った良好な医療環境で治療するが,その強制性から批判が後を絶たない。しかし,従前の治療,短すぎる入院期間では,症状の改善が充分できず,病気の再発阻止が難しかった。精神科医の著者は,弁護士会にも理解を求めたいとする。 また,精神医学に対する批判として,得られる鑑定は果たして科学的なのか疑わしいというのがある。鑑定者によって結果がまちまちになったりして,信用ならないというのだ。これについては,精神医学における主要な疾患(統合失調症・パニック障害)については,診断はほぼ一致すると反論。 問題なのは,注目される大事件については,慎重な精神鑑定がおこなわれるが,大多数の注目されない事件では,鑑定もなされず,精神病者が有罪判決を受け収監されていく現実がある。鑑定には多大な時間と費用がかかり,裁判所も弁護士も避けたがる。そのしわ寄せは収容する刑務所に。
Posted by
- 1
- 2