イエメンで鮭釣りを の商品レビュー
eメール、手紙、報告書や日記による表現方法は小説の展開として非常にユーモラスで飽きがこない。何よりもはっきりとした滑稽な人物描写と真理を説くような言葉選びはそのギャップに感嘆さえ感じたくらいだ。きっと映画も面白いだろうが、この作品はぜひ小説で読みそして実感して欲しい。砂漠で鮭が釣...
eメール、手紙、報告書や日記による表現方法は小説の展開として非常にユーモラスで飽きがこない。何よりもはっきりとした滑稽な人物描写と真理を説くような言葉選びはそのギャップに感嘆さえ感じたくらいだ。きっと映画も面白いだろうが、この作品はぜひ小説で読みそして実感して欲しい。砂漠で鮭が釣れるか否かを !!
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砂漠で鮭釣り、前代未聞の計画に翻弄される人々。不可能だと思われることも信じることで、変わっていく。手紙、メール、日記、新聞、議事録など様々な文書から奇想天外なプロジェクトの顛末が明らかにされていく。
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Podcastの「books A to Z」を聞いて読んでみようかなと思った。そうじゃなきゃ、タイトルだけでは絶対に手にとらない本。 日記や手紙、Eメールさらに議事録やインタビューが本のかなりの部分を占めたちょっと変わった構成となっている。英でベストセラーになったらしいけど、正直...
Podcastの「books A to Z」を聞いて読んでみようかなと思った。そうじゃなきゃ、タイトルだけでは絶対に手にとらない本。 日記や手紙、Eメールさらに議事録やインタビューが本のかなりの部分を占めたちょっと変わった構成となっている。英でベストセラーになったらしいけど、正直それほどの小説か?というのが感想。誇張した性格(役どころ?)を配した風刺小説だと思う。読んでいて面白かったけれど、読後には何だったけ?と思ってしまう本だった。英の人はこういう物語が好きなのかな。
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いやあどきどきしたなあ。しかしあんな最後になるなんて。イギリスのユーモア感覚?ってほんとにこういうこと平気でするから呆れちゃうね。なんで売れたのかちっともわからないけど、それでも楽しく読みました。
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鮭の養殖場の描写が興味深い。鮭といえば澄んだ川で生まれ、大海へと泳ぎだし、再び生まれた場所の清流に戻って一生を終えるという、生き物の壮大な物語を思い浮かべる。そのイメージを裏切るような、生臭さだけが漂う醜悪な描写。 でも、大概の生き物はそういう環境で生きているのかもしれないな...
鮭の養殖場の描写が興味深い。鮭といえば澄んだ川で生まれ、大海へと泳ぎだし、再び生まれた場所の清流に戻って一生を終えるという、生き物の壮大な物語を思い浮かべる。そのイメージを裏切るような、生臭さだけが漂う醜悪な描写。 でも、大概の生き物はそういう環境で生きているのかもしれないな。 近代化や効率化という名を借りた無味乾燥な大量生産・消費社会や、色々な思惑が渦巻き過ぎて、すっかり澱んだ空気の中に閉じ込められて、生きている。ほんの少しの地位や名声や富を膨大な利益と勘違いしながら、その無味乾燥で澱んだ世界を膨らませることに、日々励んでいるだけなのかもしれない。 だからこそ、逆に日々のささやかな探究心や趣味、遊び心が人生には必要なのだろう。澱んだ空気の中でのユーモア。それがあるから、皆生きていける。生まれた川へは戻れないかもしれないけど、いつかどこかに生きていく場所を見つけることができる。 手紙、eメール、日記、新聞や雑誌記事、議事録…淡々とした無味乾燥なコミュニケーション手段が重なるほどに、逆にそこで登場人物が感じる喜びや悲しみ、虚栄心や策略が浮かび上がってくるという、シニカルなユーモアに満ちた小説。悲劇的結末なのに、どこかしらハッピーエンドっぽい感触が残るのは、登場人物それぞれが辿り着くべき場所に戻っていったからだろう。 養殖場で醜くうごめく鮭のように。
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イエメンの川に鮭を遡上させ、釣り好きのイギリス人に鮭釣りをさせる、というとんでもないプロジェクトにかかわることになった学者のフレッドの顛末を、日記・メール・報告書などの形式で語る。 まじめな水産学者と、経済アナリストとしてのキャリアアップに熱心な妻との食い違いと、プロジェクトの結...
イエメンの川に鮭を遡上させ、釣り好きのイギリス人に鮭釣りをさせる、というとんでもないプロジェクトにかかわることになった学者のフレッドの顛末を、日記・メール・報告書などの形式で語る。 まじめな水産学者と、経済アナリストとしてのキャリアアップに熱心な妻との食い違いと、プロジェクトの結末をユーモアと皮肉たっぷりに描いている。
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イギリスの国立研究所に勤務する、ごくごく堅実な水産学者、アルフレッド・ジョーンズ博士のもとに、ある日突然、途方もない案件が飛び込んでくる。「砂漠の国、イエメンの川に鮭を導入し、鮭釣りが出来るようにしたい。ついてはぜひご協力いただきたい」。ジョーンズは、およそ成功するとは思えないこ...
イギリスの国立研究所に勤務する、ごくごく堅実な水産学者、アルフレッド・ジョーンズ博士のもとに、ある日突然、途方もない案件が飛び込んでくる。「砂漠の国、イエメンの川に鮭を導入し、鮭釣りが出来るようにしたい。ついてはぜひご協力いただきたい」。ジョーンズは、およそ成功するとは思えないこの依頼を一度は強く拒絶する。だが、この件に官邸が興味を示したことから、話がどんどん大きくなって、引き受けざるを得なくなる。 自身の結婚生活にも問題を抱える中、渋々引き受けたジョーンズだが、依頼人であるシャイフ・ムハンマドの魅力に触れ、次第に彼の熱意に感染していく。 わからずやの上司、シャイフのもとで働く美女、合理的だが温かみに欠ける妻、軽薄な首相広報官といった人物と渡り合いながら、イエメン鮭プロジェクトに邁進するジョーンズ。 プロジェクトの成否や如何に。 寓話的で独特の魅力のある1冊である。 冒頭は、ジョーンズ博士への電子メールで始まる。以後、およそ荒唐無稽なこの計画の顛末が、手紙や日記、新聞記事、事情聴取、未刊行の書籍などの様々な文書を通じて、徐々に明らかになっていくという仕掛けは、まるでノンフィクションを読んでいるようでもあり、小気味よい。 最初はまったく関心を示さなかったジョーンズが、プロジェクトに巻き込まれていく描写は、何だかリアリティを感じる。物事が始まるときというのは、自分の手に負えないところで、小石のように小さなものが動くのがきっかけになるのかもしれない。そして物事が終わるときもまた、些細なことの積み重ねで、どちらに転ぶのかが決まるのだろう。 ありえない話なのに、よくある話を聞いているような気がしてくる。それは多分、このお話がきれいな大団円で完結していないことも大きいだろう。 語り口はシニカルだがブラックではない。ずっしりくる重さではなく、軽いペーソスが漂う悲喜劇である。 ハッピーエンドとはいいにくいが、不思議な爽快感のある1冊である。 *広報官、ピーター・マクスウェルの造形が絶妙。 *アラブの大人物、シャイフの語りもまた素晴らしい。啓示的で象徴的。目の前で話をされたら、私もこの人について行ってしまうかもしれない。
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中東のイエメンに イギリスの鮭を泳がせるという、 一個人の想いからはじまるプロジェクトが、 やがて国家をも巻き込み・・・ っていうストーリーや、 設定や構成が、とっても面白そうで、 その「面白そう」っていうのはずっと続くのだけど ついにその波にのれないまま、読み終わってしまいま...
中東のイエメンに イギリスの鮭を泳がせるという、 一個人の想いからはじまるプロジェクトが、 やがて国家をも巻き込み・・・ っていうストーリーや、 設定や構成が、とっても面白そうで、 その「面白そう」っていうのはずっと続くのだけど ついにその波にのれないまま、読み終わってしまいました。 最後、あんな風におわるとは、思わなかったな〜
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「イエメンで鮭釣りをしたい」 という唸るほど金を持っている中東のシャイフにイギリスの水産科学者が巻き込まれてゆくお話。 メールや日記、議会記録等などによって構成されており、地の文章が存在しない、面白い小説。 それでも物語は進むんだからすごい。 処女作とは思えないできばえ...
「イエメンで鮭釣りをしたい」 という唸るほど金を持っている中東のシャイフにイギリスの水産科学者が巻き込まれてゆくお話。 メールや日記、議会記録等などによって構成されており、地の文章が存在しない、面白い小説。 それでも物語は進むんだからすごい。 処女作とは思えないできばえなのは、着想勝ちなところもあるのかな。 そんなこと無理! とはじめは首を横に振っていた主人公だが、大きな力に翻弄され(ここはちょっとかわいそう)研究を進めてゆくうちにシャイフに根差す「信仰」や仕事上の同僚となった魅力的な美女(遠距離恋愛中)によってこれまでの質実剛健といっては聞こえがいいが代わり映えのない、ぱりぱりに乾ききったこれまでの人生を振り返るきっかけを得ることになる。 いろんなことに振り回されっぱなしの人生だったけれど、最終的に行き着いた先は自分で選び取った道、と割り切ることができたとしたら、信仰は取り戻せなかったかもしれないが、それにすこし近づけたのだとしたら彼の人生は決して間違ってはいない。 9.11で世間が賑やかだったあたりにこの本を読み終えたのは何かのメッセージを含んでいるのだろうか。 作者がこの小説を書き上げたとき、彼はまだこの問題が片付いていないと踏んでいただろうか。事実は小説より奇なりとしか言いようがない。 この小説で描かれていることは在り得べき話であり、語られなかった物語である可能性だって、ある。 映画あるいは2時間ドラマとかにしたら面白そうだ。 女王陛下といい、イギリス小説は懐が深い
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実験的な作品というよりは意欲作と言った方がしっくりくる。 それはここに情熱がひそかにあるからだ。 イエメンで鮭を釣る、ってイエメンがどこだかピンとは来ないが中東の国だよね。 それに対してノルウェーとか、カナダとかで釣れる鮭ってのはあまりに遠い。 要はプロジェクトエックスなストー...
実験的な作品というよりは意欲作と言った方がしっくりくる。 それはここに情熱がひそかにあるからだ。 イエメンで鮭を釣る、ってイエメンがどこだかピンとは来ないが中東の国だよね。 それに対してノルウェーとか、カナダとかで釣れる鮭ってのはあまりに遠い。 要はプロジェクトエックスなストーリーが一つ。 あとは恋愛と、軽いミステリー要素を突っ込んでシェイクして マティーニのできあがり。ってのはさておき。 読後一週間ほどして、もう一度めくると、サグラダファミリアを彷彿とさせる匂いがある。 アントニオ、君はいつまで未完の城に立て篭もって死に長らえるのか。 記憶に値する、信仰についてのメモ。 それがこのエンターテイメント的暗号文「イエメンで鮭釣りを」 ということになるのかな。
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