薔薇空間 の商品レビュー
ルドゥーテをとりまく植物画のありよう、歴史について触れることもでき、また、種別に分類構成されているので、モチーフとして絵画を楽しむ以上の価値があります。
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隅から隅まで薔薇で埋め尽くされた、薔薇好きにはまさに垂涎の一冊。2008年にBunkamuraザ・ミュージアムで行われたルドゥーテ生誕250周年企画を本にまとめたものだそうだが、返す返すも悔やまれるのはこの展示を実際に見に行けなかったこと…。 かなり大判な本だけあって、装丁も上...
隅から隅まで薔薇で埋め尽くされた、薔薇好きにはまさに垂涎の一冊。2008年にBunkamuraザ・ミュージアムで行われたルドゥーテ生誕250周年企画を本にまとめたものだそうだが、返す返すも悔やまれるのはこの展示を実際に見に行けなかったこと…。 かなり大判な本だけあって、装丁も上品だし、見ごたえも抜群。絵画としての華やかさと図版としての写実性との間に、「薔薇」というモチーフを通じて橋を掛けたルドゥーテの技量を存分に味わえる。まだまだ薔薇初心者の自分には、見ていて「これは○○だ」とか「あれは××系だ」とかそんな詳しいことは分からなかったけれど、そうした読者向けに薔薇の系統の歴史や植物画の変遷についての解説なども載せてあるところは親切仕様だ。個人的には、ルドゥーテより後の時代のパーソンズのリトグラフや日本人植物細密画家・二口義雄の『ばら花譜』、他にも絵だけでなく写真の薔薇まで収録してあったのは嬉しかった。描き手の愛情がダイレクトに伝わってくる絵画も良いけれど、写真の薔薇も写真の薔薇でまた異なる魅力がある。 主な内容はルドゥーテの『薔薇図譜』なので、モダンローズの絵はあまりなく、どちらかというワイルドローズやオールドローズの各種が中心。とはいえ、現在伝わっていない古い薔薇(特に美しかったのはルドゥーテの名前を冠したという淡いピンクの薔薇。あれが現存していないなんて何ともったいない!)が見られるのは面白いし、特にどちらかと言えばモダンローズ志向だった自分が考えを改めさせられるぐらい素敵な野生種の絵が数多く掲載されているのは嬉しい。みずみずしい輝きに満ちたそれぞれの絵に、ルドゥーテと彼に仕事を依頼したジョゼフィーヌ妃が本当に心から薔薇という花を愛していたことがひしひしと伝わってくる。加えて、一口に薔薇と言っても、本当に数え切れないほどの種類があること、棘がないもの、なんか毛が生えているようなの、花の中からもう一つ花が出て来るもの(!)も、素朴で可愛らしい五枚花弁からトンデモびっくりな種類の薔薇まで、本当に尽きることがない「薔薇」という花の可能性に圧倒させられる。これだけ種類があると、見ただけで名前が分かるようになるまでどれぐらいかかるのかと若干気が遠くなるが、とりあえずぱらぱらとめくって読んでいくだけでも、薔薇愛好家になったような気分になれる充実の一冊。
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