誰がヴァイオリンを殺したか の商品レビュー
ヴァイオリンに関することばかり書いてあるのかと思いきや、ストラヴィンスキーの「兵士の物語」や、タルティーニの「悪魔のトリル」など内容は多岐に渡っていた。 ヴァイオリンの銘器である、ストラディヴァリウスやグァルネリの話は、全223ページの内48ページ(約2割)とそう多くない。割合...
ヴァイオリンに関することばかり書いてあるのかと思いきや、ストラヴィンスキーの「兵士の物語」や、タルティーニの「悪魔のトリル」など内容は多岐に渡っていた。 ヴァイオリンの銘器である、ストラディヴァリウスやグァルネリの話は、全223ページの内48ページ(約2割)とそう多くない。割合で言えば、一番紙幅を割いているのは、65ページ(約3割)に渡るパガニーニ伝である。 本書で著者が主張しているのは、かつての悪魔的魅力を誇ったヴァイオリンの音(ヴァイオリンという言葉は象徴であって、これを「音楽」に置き換えても良い)は、文明の進化と共に失われてしまって、今ではもう聴けないということである。 これは一見、悲観論的思想や懐古主義のように見えるが、私はそれよりも、ロマン主義的思想(手に入らないものへの憧れ)が根底にあると感じた。 石井氏は文章が巧く、読ませるので一気に読める。本書はクラシック音楽の演奏について考える良い材料になるので、クラシック音楽ファンにはお勧めしたい。
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