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レキシカル・グラマーへの招待 の商品レビュー

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2018/05/29

 多くの文法用語と多様な用法を整理するだけの「旧来の英文法」を、認知言語学の知見を活かして再編成し、今の英語教育に求められる「『わかる英文法』であり、そして『使える英文法』」(p.4)を目指す。具体的には「レキシカル・グラマー」という、語彙のコア的な意味を、構文に当てはまることに...

 多くの文法用語と多様な用法を整理するだけの「旧来の英文法」を、認知言語学の知見を活かして再編成し、今の英語教育に求められる「『わかる英文法』であり、そして『使える英文法』」(p.4)を目指す。具体的には「レキシカル・グラマー」という、語彙のコア的な意味を、構文に当てはまることによって文法を説明しようとするもので、つまりbe, haveを説明することでアスペクトや態を、makeやgetを説明することで使役構文を、といった具合に説明する。be, have, give, make, get, to, ing, wh-, a, the, it, that, can, may, must, should, will, would, used to, for, of, witih, asが取り上げられている。  この2人の著者は、実は今うちの学校でも使っている桐原のPRO-VISIONの著者でもあり、教科書の文法説明なんかも既にこの本で書かれているような形になっている。ただ正直に言ってしまうと、本当に教えにくい。「行為者が背景に退く受動態」とか、「doingには継続性と一時性の意味合いが含まれる」とか、分詞構文には「分断感がなく」とか、その通りだし分かるのだけれど、英語が苦手な生徒にとってはこういう抽象的な説明がかえって分かりにくいんだよなあ、と思う。例えばこの本にもforの説明のところで「期間のfor」の説明はこうなっている。「期間を表すのになぜforを使うのかにわかにピンとこない。これはむしろ、『時間が経過する流れを指さして』という意味合いでforを使っていると考えるとわかりやすい。すなわち、「1年目→2年目→3年目」と時間が流れていく中で中国語の勉強が進展するという意味合いで、時間が経過していくその流れにそって指さす感じでforが使われているのである。」(pp.181-2)とか、こんなの説明し出したら生徒は寝るだけなんじゃないかと思う。この説明を1回する間にfor three yearsを音読させて期間を示す表現をいっぱい練習させる方がどう考えても「使える」という風にはならないのだろうか。  コアミーニングの話は面白いけれども、それはあくまで「分かった人」が「後から」知れば「目からうろこ」とか「腑に落ちる」といった感覚になるものであって、全てを語彙のコアだけで説明していくには限界もあり、結局は覚えてね、で終わるものなんじゃないだろうか。五文型批判なんかも書いてあるが、別に五文型はそんな色んな文に対して厳密に使うためのものではないと思う。あくまで典型的な文の表面的な形が分かればいいだけのものだと考えれば、別にこの構文は何文型なのにこれは何文型で分かりにくい、ということをイチイチ考えることもないのではないかと思う。分かりにくいように使うから分かりにくい訳で、そもそも五文型の厳密さにこだわるのも変だと思う。文型のための文型ではないのだから。タイトルは「新しい教育英文法の可能性」とあるが、この著者たちはどれだけ現場の中高生に直接英文法を教えたことがあるのだろうか。教育英文法というのは、はっきり言って「いいとこどり」をしたらそれでいいのではないかと思う。つまり認知言語学的な考え方を取り入れれば分かりやすいことはそういう風に教えて、細かい事項だけれども重要だと思えばその項目はトレーニング的に教えるとか、あるいは後から実はこういう考え方になっているんだよ、とコアを教えるとか、ある意味で教える状況によって使い分けられるというのが教育英文法と呼べるのではないだろうか。そういう意味での体系化はもしかすると個々の教師が行うことなのかもしれない。とにかく学者肌の人がコアでコアで、と押していった教材を作ってしまうと、現場は混乱する。  ということで批判をしてしまったが、例によって英語について色んな事実を知れること自体は面白い。canとbe able toの違いを説明する状況(p.143)とか、What's in your mind?とWhat's on your mind?の違い(p.199)とか、as much as I hate to admit it(自分で認めたくはないことだけれど)(p.214)という表現とか、勉強になった。(18/05/27)

Posted byブクログ