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ヒトラーの経済政策 の商品レビュー

3.6

37件のお客様レビュー

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2023/04/08

巧みな演説で大衆を扇動した独裁者、諸外国相手に自らの理想の帝国を築こうとし、ヨーロッパ全体に戦火の嵐を巻き起こした男、ホロコーストで大量のユダヤ人を虐殺した男、そして最後は追い詰められて自らピストルで頭を撃ち抜き、波乱の人生の幕を閉じた。その様なイメージしか思い浮かばないヒトラー...

巧みな演説で大衆を扇動した独裁者、諸外国相手に自らの理想の帝国を築こうとし、ヨーロッパ全体に戦火の嵐を巻き起こした男、ホロコーストで大量のユダヤ人を虐殺した男、そして最後は追い詰められて自らピストルで頭を撃ち抜き、波乱の人生の幕を閉じた。その様なイメージしか思い浮かばないヒトラーだが、近年はその政治的経済的手腕を評価するような書籍も多くあり、過去の暗いイメージとは大分変わってきている。勿論、ヒトラー始めゲーリング、ゲッペルスにヒムラー、そしてアイヒマン等、後世に悪名を残す人材に支えられた国家社会主義ドイツ労働者党、通称ナチスがしてきた事実は人類史上恐るべき悪事である事に変わりはない。 その様なヒトラー及びナチスがどの様にして表舞台に現れ、その後どうやって第一次大戦後のベルサイユ条約下で荒んだ国家を短期間で建て直していくか、主に経済・財政政策を中心に見ていく内容。 当時ドイツは前述の条約により天文学的な賠償金を課され、永久的に諸国の奴隷になるしか選択肢の無い様に見えた時代。よく知られるアウトバーン建設などの大規模公共工事による失業対策に始まり、労働環境の改善、海外資本を呼び込み復活した工業力や輸出産業、政治の面でも力で近隣諸国を押さえつけて来たのかと思いきや、意外にも当初は驚くほど平和的に領土拡大を成功させていく。その手腕たるや現代政治家ではまず居ないだろうと読み進める中ではっきり認識する。勿論その背後には様々な経済施策を繰り出したシャハトに代表されるように、その道の大家を積極的・効果的に登用し、現代社会にまで残る数々の輝かしい制度作りを推進できた事が評価に繋がっている。ベルサイユ体制下のドン底の生活状態、世界恐慌、そして周辺諸国(特にフランス)の決して上手くない仕返し等、どれも現在の状況とはあまりにかけ離れており、当時の様な極端な状態だからこそ上手く行った点は多いだろう。とは言え、有給休暇制度に定期健康診断、従業員の福利厚生、8時間労働などの今では当たり前の制度がここナチスによって作られてきた事実には、最初に書いた様な、単なる悪の組織というイメージだけが戦後に敢えて作られたと言う記述に納得感もある。 繰り返すがナチス・ヒトラーを単純に賞賛する内容とは違う。冷静に手腕を評価し、現代社会がそこから何を学ぶべきか考えるための書籍である。 読み終えた皆さんは今後オリンピックを見るたびに総統(フューラー)の姿をスタジアムに見るのではないだろうか。

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2022/01/09

なるほどと思わせ、読みやすい。まあ、一面では優れていても、時代特有の要因もあるから、汎用性のある理論じゃないかもしれない。ヒトラーの秘書官の話題は初めて知ったので勉強になった。

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2020/01/02

いやね、読みやすいです。分かりやすいのだと思います。だから楽しいです。 年末の作業で疲れましたぁ!ちょっと途中でお休みいたします!すいやせん! 主張が明確ですよね!敢えてナチスを引き合いに出して みんなが思っているような異常さはねえぞ! ちゃんとその営みや過程を吟味しないといけま...

いやね、読みやすいです。分かりやすいのだと思います。だから楽しいです。 年末の作業で疲れましたぁ!ちょっと途中でお休みいたします!すいやせん! 主張が明確ですよね!敢えてナチスを引き合いに出して みんなが思っているような異常さはねえぞ! ちゃんとその営みや過程を吟味しないといけませんなぁ。 国債の政府預かりについては近頃新しい理論的基礎付けが行われています。MMT? インフレを招くとか言う理由で、否定的な意見が今現在でもなされております。 デフレ期なのに!適度なインフレは健全な社会状況だという認識がされておりま せんですし。ま、これ自体も成否は正しいのかわかりませんが。

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2018/11/25

ユダヤ人はロシアを含むヨーロッパで長く虐げられてきた。反ユダヤ主義は新約聖書に始まる。虐殺は幾度となく繰り返されてきたがナチスによる虐殺はスケールが異なった。ユダヤ人がまともな人間として扱われるようになったのは国民国家が誕生したフランス革命以降のことである。彼らはヒトラーを絶対悪...

ユダヤ人はロシアを含むヨーロッパで長く虐げられてきた。反ユダヤ主義は新約聖書に始まる。虐殺は幾度となく繰り返されてきたがナチスによる虐殺はスケールが異なった。ユダヤ人がまともな人間として扱われるようになったのは国民国家が誕生したフランス革命以降のことである。彼らはヒトラーを絶対悪と規定することでユダヤ人差別の解消に成功した。更に金融・メディアを牛耳ることで世界経済に影響を行使し得る権力を獲得した。イスラエル建国に際してはロスチャイルド家が資金提供し、ユダヤ人の帰国事業をプロデュースした。 https://sessendo.blogspot.com/2018/11/blog-post_25.html

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2018/09/11

ヒトラーに魅力を感じた人達が多かったというのは分かるけれど、内容に沿うなら、題名は「シャハトの経済政策」であろうなぁ。 日本も参考になる点があるのは分かるけれど、独裁政権だったというのが一番のポイントではなかろうか。

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2018/08/15

新しい視点を与えてくれる本だった。ホロコーストが注目されがちだが、なぜナチスが人気だったか、支持されたか理解するために読む価値は十分ある

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2018/02/08

ユダヤ人迫害や他国侵略ばかりが言われるナチスだが、人々が熱狂したのには理由がある。それが徹底的に社会福祉とナショナリズムを遂行した経済対策の妙だ。それも右左ではなく資本主義と社会主義の良いとこ取りをした考え方に共感した。

Posted byブクログ

2017/06/18

 ヒトラーやナチスと言えばユダヤ人虐殺を始め非道な行為ばかりがクローズアップされるが、彼らが選挙で支持を得て政権をとったのも事実だ。ではなぜ当時のドイツ人が彼らを支持したのかと言えば、第1次世界大戦に負けた結果ナンセンスと言うほどの賠償金を課せられてボロボロになったドイツ経済を建...

 ヒトラーやナチスと言えばユダヤ人虐殺を始め非道な行為ばかりがクローズアップされるが、彼らが選挙で支持を得て政権をとったのも事実だ。ではなぜ当時のドイツ人が彼らを支持したのかと言えば、第1次世界大戦に負けた結果ナンセンスと言うほどの賠償金を課せられてボロボロになったドイツ経済を建て直すために闘ったからだ。  ここまでは歴史の常識だが、具体的にナチスがどのような経済政策を行い、どのような成果を挙げたかについてはあまり語られない。アウトバーンの建設くらいは教科書にも出てくるが、それ以外に様々な政策を実行しており、その多くは現代にも通じるものだった。本書ではヒトラーとナチスの経済政策の内容と目的、そして成果を紹介している。  「国家社会主義ドイツ労働者党」が正式名称であるナチスは、その名の通り労働者のための政党だ。金持ちではなく底辺の労働者の生活を向上させることによって経済全体を活性化するという手法は、多くの成果を挙げている。もちろんすべてが成功したわけではないが、「強欲資本主義」に毒された現在の日本や欧米が見習うべき部分は少なくないと思う。  本書の記述はかなりナチスに好意的だ。非道な行為についての記述は大幅に省略されているが、その点はすでに数多くの書籍があるのだから今更繰り返す必要はないだろう。また本書によれば、英仏がドイツに対して課した要求や攻撃はドイツを壊滅させるのが目的だったと言っても過言ではない。事実上、敗戦国に対する略奪である。それだけやったらドイツ人が怒るのは当然だと思えてくる。  欧米で「ヒトラーを見習え」などと言えば大変なことになりそうなので、この本を翻訳することは難しいだろう。これが読めるのは日本人の特権かもしれない。

Posted byブクログ

2017/03/29

ヒトラー就任当初のナチスはすばらしい経済政策を行っていて、成果も上げていた。 後半、ヒトラーは暴走した。 最初からユダヤ人を疎ましく思う国民感情はあったこと。 経済政策の話がメインだけど、ゼンゴ関係も書かれていてかつ読みやすくてとても良かった。

Posted byブクログ

2017/01/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 タイトルに難がある。  正確に言えば、ここでの経済政策は、ナチスでもヒトラーでもなく、ナチス非党員であって後日ヒトラーに罷免されたヒャルマール・シャハトの経済・財政政策とすべきだろう。  また、何をしたかではなく、誰の立案かの点で、ナチス政策という大雑把な切り口に止まっているのは、解説としてはかなりの減点。  確かに、シャハトの資金捻出法は、綱渡りの裏技だろうが、支出面に関する公共投資や社会保険など各種制度は、現代日本からすればさして目新しくはない。必要なのは、それがどのような経緯で編み出されたのかということなのだが、それはない。  ただし、①累進課税制度の重視、②公共投資に振り向けた金額を労働者向けに多く配分した点(公共投資額の約50%弱)は眼を引く。つまりケインズ的な乗数効果を発揮するには、消費する層(必需品を購入せざるを得ない層)に広く、浅く分配する方が望ましいという指摘が眼を引くのだ。  ところで、著者は日本の公共事業は、ゼネコンと土地所有者に配分される額が多く、乗数効果を大きく減殺していると見るようだ。  さて、ナチスという観点で見れば、ヒトラーの言うことを聞かないシャハト(限定軍備はともかく、戦争は否定し、軍備拡大の抑制方針を提言)を政権から切り離したことが、ナチスの大きな蹉跌と転落につながったことは容易に読み解ける。それは、一見短期的な成果を獲得出来そうに見える戦争が、実のところ最も金喰い虫の政策で、非効率的だということに由来するのだろう。  こういう切り口の書であるため、ナチスのユダヤ人迫害や種々の自由権侵害には触れない。本書はあくまでも一面的な経済政策論の書にすぎないのは言うまでもない。  さて、シャハトの「経済政策は科学ではない。一つの技術である。だから確固不動の経済方策や不変の経済法則について云々するのは誤りである」とは含蓄深い発言である。    備忘録。  独内で自足可能な石炭に由来する人工石油は航空機燃料にも使えるほど高品質だったが、採算取れずじまいだったとのこと。  2009年刊行。

Posted byブクログ