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風の靴 の商品レビュー

3.8

9件のお客様レビュー

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2023/12/06

 『かはたれ』を読んでとても好きになった朽木祥さん。この本も素晴らしかった。  ものすごく文が上手、という感じではないのだけれど、文そのものが芸術になっていた。割と量がある文なのに、詩を読んでいるかのように繊細だった。言葉に、色合い、熱量、風、意志、沈痛さなど、様々なものを感じ...

 『かはたれ』を読んでとても好きになった朽木祥さん。この本も素晴らしかった。  ものすごく文が上手、という感じではないのだけれど、文そのものが芸術になっていた。割と量がある文なのに、詩を読んでいるかのように繊細だった。言葉に、色合い、熱量、風、意志、沈痛さなど、様々なものを感じさせる含みがある。  ヨットマンだった大好きなおじいちゃんを亡くし、受験に失敗したりで追い詰められていた中一の海生は、友達の田明とその妹、八千穂、飼い犬のウィスカーと、家出する。おじいちゃんと以前よく乗っていた、A級ディンギー(ヨット)ウィンドシンカー号に乗って。  海生は、海で、亡きおじいちゃんとしたこと、話したことを思い出し、まさに今体験していることと照らし合わせて反芻し、友にも助けられながら成長していく。 ○[Aという道とBという道があって、Aを選んで転けたとする。その時自分を支えるのはAを自分が選んだという自信だ。もっともらしいだろう?だけどな、この年になるとわかるんだ。そんなかっこいいもんじゃない。どっちを選んでも、あっちにすればよかったと後悔する日は必ずある。ただ、自分で選べば、良い日も悪い日も自分で引き受けられる。ただそれだけのことなんだ。]    この海生の父親の言葉は、私もこの年になったらよくわかる。自分が辛い時に、言い訳だと頭ではわかっていながらも、親や家族を恨みたくなるのは、若い時、自分がこうしたいと思った事を貫けずに、家族の反対に押し切られてしまったからだと。自分で納得してきちんと選ばなかったからだと。  息子が今、主人公と同じくらいの年頃だ。多感な時期で、本人もだろうが、私もその変化に戸惑っている。このお話に出てくるような、よく出来た子では流石にないけれど、それでも、彼の「根っこにある良さ」を信じて、余程間違った方に行かない限り、彼の意思を、心が動く方向を邪魔せず尊重しようと、この本を読んで改めて強く思った。私と同じ失敗を子供に繰り返させないよう、肝に銘じたい。 ********* 心を動かされたところ(抜粋)  ○再び思い出したのだ。ディンギーがふいに風をつかんで走り始める瞬間、まるで高速艇に変身したみたいに駆け出す、あの瞬間を。おっかなくて、後ろに引けていた体が、次第にディンギーとひとつになる。ひとつになって、風をつかんで、思いっきり駆けていく。透明になって。風の靴を履いて。あんなふうに生きていけと、おじいちゃんは言いたかったのだ。「船と一緒に駆けていくような気がするんだ。」という声まで、聞こえてくるようだった。 ○The why of the wind. by Laura Riding 風が走るとき、我々も風と走る。 風に心をつかまれてしまうと、自分が風ではないことを忘れてしまう。 我々はもっと知らなければ、自分が何であり何でないかを。我々は、風ではない。… もっとはっきり見分けなければ、 我と彼との違いを。 "我々でないもの"は、たくさんある。 "我々が、ならなくていいもの"は、たくさんある。  ○そうなんだ。ぼくらは風ではない。風がぼくらを連れ回すのでもない。ぼくらが、風を見、風を聞き、風を読む。そうして、自分の進む針路を決めるんだ。ほんとうに行きたい方向に向かって。

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2023/07/19

めちゃめちゃ有能な少年たちの家出記録。 と言っても、ヨットで家出するし、ありえないくらい冷静で頭のいい子たち。 話がうまくできすぎてる気はするけど、夏っぽくてよかった。 子どもたちは大人が思っているほど馬鹿じゃないし、色んなことを考えてる。やりたいことも、意志もある。そういうのを...

めちゃめちゃ有能な少年たちの家出記録。 と言っても、ヨットで家出するし、ありえないくらい冷静で頭のいい子たち。 話がうまくできすぎてる気はするけど、夏っぽくてよかった。 子どもたちは大人が思っているほど馬鹿じゃないし、色んなことを考えてる。やりたいことも、意志もある。そういうのを引き出して、尊重してあげられる親になりたいと思った。

Posted byブクログ

2023/04/19

途中までは、漂流する話かと思ってドキドキしました。 後半がよかった。 他人、特に兄弟と比べられることは辛いと思います。「そんなこと、気にするな」と言うのは簡単だけど言われた方はそんなに割り切れないだろうし。 私が自分で何でも決めて、親には事後報告だったので、子どもたちにも努...

途中までは、漂流する話かと思ってドキドキしました。 後半がよかった。 他人、特に兄弟と比べられることは辛いと思います。「そんなこと、気にするな」と言うのは簡単だけど言われた方はそんなに割り切れないだろうし。 私が自分で何でも決めて、親には事後報告だったので、子どもたちにも努めて口出しないようにしています。 「(Aという道とBという道があって)どっちを選んでも、あっちにすればよかったと後悔する日が必ずある。ただな、自分で選べば、良い日も悪い日も自分で引き受けられる。ただ、それだけのことなんだ。」 〈だれでもない、ぼくが、風に靴を履かせて駆けていくんだ。〉 先に読んでしまった、朽木さんの「あとがきにかえて」の中の 「どうか一人でも多くの少年少女たちが『海』に乗り出してくれますように。 ―それぞれの風に、それぞれの靴を履かせて。 読み終わってからは、ストンと心に落ちました。 作品中に出てくる名作も含めて中高生におすすめ。

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2018/11/04

ほんと、素敵すぎる、都合よすぎる、 展開ともいえるけれど、 出てくる人たちも素敵すぎて、ってこともあるけど、 読後感は悪くない。

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2012/11/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

85点。さらっと読めてとってもよかった。なんちゃってサバイバル。男の子に薦めたい。 ただ、主人公が横浜のいいとこの子で、おじいちゃんが上等なヨットを持っていたり、それまで読んできた本が「エンデュアランス号漂流」やランサム・サーガだったりと、教養のあるおじさんが理想化して作り上げた少年ぽくて、ちょっと鼻につく。 そういうのと、突然現れる謎の青年を受け入れるところとか現代社会にはそぐわない部分が多少あるが、ファンタジーと思えば気にならない。 個人的にはキャンプファイヤーで猫じゃらしを炙って、小さなポップコーンみたいになったのに醤油をつけて食べるシーンが好き。

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2011/10/25

イイね。男の子たちの冒険と成長。児童書はやっぱりこれでなきゃ! 物語の場面が、ヨットがはしる様子が目に浮かぶようです。

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2011/04/24

中学生の男の子が家出をするというありきたりなお話。でも最後にくるまで家出してたことを忘れてしまう話の展開。ヨット。

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2010/09/04

「かはたれ」「たそかれ」に打ちのめされていたので、その後に書かれた普通の本にはがっかりしてしまいます。 これは普通に児童書としていい本だと思います。 大人の目で読むと、都合のよすぎる展開に思えてしまいます。

Posted byブクログ

2010/07/22

中学生の男の子が主人公。アビームの風、ハリヤードのカンカンなる音、ヨットに乗る感覚を思い出して、すごく懐かしくなりました。私は湖で乗っていたので、海で乗るのは潮の流れがあって怖いという気持ちが先立ちます。だから主人公の男の子の緊張感が肌で感じられました。

Posted byブクログ