中国の五大小説(下) の商品レビュー
上巻に続き、著者とストーリーを追いながら、少しずつ深掘りしていく。中国白話小説の時代的な流れから、当時の社会で、庶民に寄り添った形で読み続けられたからこそ、今日まで残ってるんだと思う。
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図書館の本棚で目につき、下巻から読了。 中国の物語が時代を追って深化を遂げている、という解説を主軸に「水滸伝」「金瓶梅」「紅楼夢」の三作を粗筋を追って平易に解説してくれる良書。 上巻の「三国志演義」「西遊記」も含めて、物語の中心に据えられているのが、いずれの作品も虚な人物であり...
図書館の本棚で目につき、下巻から読了。 中国の物語が時代を追って深化を遂げている、という解説を主軸に「水滸伝」「金瓶梅」「紅楼夢」の三作を粗筋を追って平易に解説してくれる良書。 上巻の「三国志演義」「西遊記」も含めて、物語の中心に据えられているのが、いずれの作品も虚な人物であり、それを取り巻く周囲が生き生きとしている、というのが面白い。 大長編だからなおさらそうなのかもしれない。 たしかに主人公の魅力だけで話を引っ張り続ける物語というのはそうあるものではないな、と改めて気づいた。 その関連で「水滸伝」に対して抱いていた違和感の正体が分かったのは大きかった。 少年時代に横山光輝の漫画を読んで、 ・梁山泊の首領となる宋江にまったく魅力を感じなかったこと ・物語が後半になるにつれてどんどん尻すぼみになっていくこと ・端的に言って「スッキリ」しなかったこと。 これらの違和感に対して「ああ、横山先生は三国志で力を使い果たしてしまって、水滸伝ではクオリティが落ちてしまったのかな、、」などとガキながらに不遜な分析を内心で抱いていたが、、元から水滸伝はそういう講談であったのだと。横山先生、すみませんでした。 「金瓶梅」と「紅楼夢」は歴史の授業で名前を学んだだけだったが、こちらも芳醇な物語であることがよく分かる。 特に「紅楼夢」の「家=政治」という観念の捉えられ方は、結局これ今の渡鬼だよね、とか身も蓋も無いことを思ったり。 「金瓶梅」で描かれる肉体的なエロス文化の解説のうち、纏足に関するくだりは、これほどグロテスクなものだったとは、、と怖気がした。戦慄しながらページを繰るも解説が詳細なので、精神的ダメージをかなり負った。 最後に。 「三体」を「中国からこのようなレベルの小説が出てきて驚き」などと評して、ヘイトと変わらないコメントを無意識に垂れ流しているような人は、月並みな言い方だが「中国四千年(五千年?)の歴史」に思いを馳せてほしい。 歴史を知らずして今を知ることはできないから。
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新訳紅楼夢を読了したばかりなので、興味深く読んだ。金瓶梅は水滸伝1エピソードから想を膨らませて成立しているが、作品世界の世界観は水滸伝の「侠」に対して金瓶梅は「欲」。また紅楼夢は、キャラクターや人間関係の配置、物語の展開において金瓶梅の影響が明白。ただ、金瓶梅の「欲」の世界を描く...
新訳紅楼夢を読了したばかりなので、興味深く読んだ。金瓶梅は水滸伝1エピソードから想を膨らませて成立しているが、作品世界の世界観は水滸伝の「侠」に対して金瓶梅は「欲」。また紅楼夢は、キャラクターや人間関係の配置、物語の展開において金瓶梅の影響が明白。ただ、金瓶梅の「欲」の世界を描くと共に、そこに儚く成立する少年少女の純な「情」の世界を置いて、より重層的な物語構成を生み出している。等々、なるほどと思った。いつか金瓶梅を読んでみたいと思う。
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この3つの小説の関係性が興味深い。水滸伝でもし武松が不貞の美人兄嫁・潘金蓮と西門慶とを成敗していなかったとしたらで進む金瓶梅。金瓶梅の官能の世界を美少女中心のプラトニックそして、詩文の薫り高い世界に変更したら紅楼夢。3作は巨大な作品群ですが、そのエッセンスをこの解説で十分に楽しむ...
この3つの小説の関係性が興味深い。水滸伝でもし武松が不貞の美人兄嫁・潘金蓮と西門慶とを成敗していなかったとしたらで進む金瓶梅。金瓶梅の官能の世界を美少女中心のプラトニックそして、詩文の薫り高い世界に変更したら紅楼夢。3作は巨大な作品群ですが、そのエッセンスをこの解説で十分に楽しむことが出来ました。そして紅楼夢においても舞台となった賈宝玉をめぐる林黛玉・薛宝釵たち12人の美少女たちの風雅さは正に源氏物語。清時代の貴族の生活を彷彿とさせてくれます。水滸伝の悲しい末路、潘金蓮・李瓶児・春梅の末路、賈家の没落と寂しい結末ばかりなのが、やはりドラマ性を高めているのでしょう。
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中国の五大小説のうち、水滸伝・金瓶梅・紅楼夢を紹介。平易な文章なので、それぞれのストーリーや構造、見所、世界観がハッキリわかります。著者の頭の中で完璧に整理されていることに感心しますね。また、白話小説の進化のポイントも教えて頂き、文学史からの視点も身につきました。
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水滸伝・金瓶梅・紅楼夢のあらすじを紹介している本。とてもわかり易い。 個人的には金瓶梅を読んでみたくなった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
[ 内容 ] 盛り場育ちの「面白い物語」から、作者が彫琢しつくした「精緻な小説」へ。 『水滸伝』から『紅楼夢』にいたり、中国古典小説は「完全な小説」へとあざやかに飛翔する。 それぞれに読者を魅了してやまない五大小説の愉楽を語りつくすとともに、瞠目すべき「小説」誕生のダイナミズムをときあかした本格派入門書の誕生。 [ 目次 ] 『水滸伝』の巻-一百八星、数珠繋ぎの物語(幕開きは語り物のスターから-魯智深、林冲登場 出会いが出会いを呼ぶ仕掛け-黄泥岡の大作戦 「悪女死すべし」、梁山泊の倫理とは-閻婆惜殺害、武松物語 ほか) 『金瓶梅』の巻-謎の「作者」と裏返しの悪夢(「水滸伝」からの分かれ道-武大殺しと生きのびた「悪の華」 西門家の女たち?潘金蓮の密通事件 「祝祭的日常」のリアリズム?李瓶児の登場 ほか) 『紅楼夢』の巻-「美少女の園」のラディカリズム(もうひとつの「逆転」-警幻仙姑の夢幻境 巨大な「家」と女たちの「政治」-王煕鳳の活躍と大観園造営 美少女たちが生きる「時」-林黛玉の葬花 ほか) [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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