ウラノルマ(2) の商品レビュー
急に始まった過去編だけの内容で肩透かし
前巻の終わりにヒロイン【国枝あおい】を付け狙う小嶋が、あおいの秘密を知ったことでどうなるかと思っていたが、いきなり始まる過去編で大いに肩透かしを喰らう第2巻である。いわゆる「実用性」は、本巻に限りゼロと断言する。その過去編も、あおいが今の二重生活、つまりウラノルマを課すに至った経...
前巻の終わりにヒロイン【国枝あおい】を付け狙う小嶋が、あおいの秘密を知ったことでどうなるかと思っていたが、いきなり始まる過去編で大いに肩透かしを喰らう第2巻である。いわゆる「実用性」は、本巻に限りゼロと断言する。その過去編も、あおいが今の二重生活、つまりウラノルマを課すに至った経緯の半分しか描かれていない。恐ろしく不器用で男を見る目の無いファザコン優等生の、高校~大学~社会人までの恋愛と人付き合いの「勘違い」遍歴である。きちんと相談できる友人のいない不憫さも滲み出ているが、特定の分野に秀でていながら別の分野、とりわけ俗世間に無知という、典型的な学者肌なあおいが神聖視する父の、母との夜の営みを覗き見ての嫌悪、しかも母を汚らわしいと嫌悪する感覚には少し首を傾げる。その後は一途な初恋に破れたり、友人に疎まれたり、新しい恋人の軽口を真に受けて全く間違った方法で「初めて」を喪失した(ここで、別人に変装することを思い付く、現在への萌芽が見られる)のに見放されて人間不信に陥ったり、孤立をますます深めたりしながらもそれら「黒歴史」を一掃すべく邁進し、華麗に始まった社会人までが描かれているが、ではなぜあおいがおぞましかった初体験時をトレースするかのようにウラノルマをこなしているのか、こなさなくてはならないのかはまだ分からない。なので本巻は、今のキャリアウーマン然としたクールでデキる女からは想像もできないあおいの、分からないでもないがあまり共感も覚えない過去を読んで、もどかしさと歯痒さを感じつつ釈然としないまま終わるのである。正直に言って「これはないだろぉ~」という気持ちにもなる。最後に意外な引きを見せたものの再び待ちぼうけを喰らった感じで「何だかなぁ~」である。過去編長過ぎ。次巻での本編の進展に期待するしかない。
DSK
- 1