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ひとの最後の言葉 の商品レビュー

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2015/06/12

夏目漱石、松尾芭蕉、渡辺崋山、正岡子規、岡倉天心といった人びとが、死に対してどのように向き合い、死に際してどのような言葉を残したのかを考察している本です。 旅をみずからの生そのものとして生き、「軽み」の境地に至った芭蕉が、死の床で見せた俳諧への情熱を手がかりに、彼のめざした「風...

夏目漱石、松尾芭蕉、渡辺崋山、正岡子規、岡倉天心といった人びとが、死に対してどのように向き合い、死に際してどのような言葉を残したのかを考察している本です。 旅をみずからの生そのものとして生き、「軽み」の境地に至った芭蕉が、死の床で見せた俳諧への情熱を手がかりに、彼のめざした「風雅」とは何だったのかを考察しているところなどは、おもしろく読みました。 また、岡倉天心が死に際してインド人女性プリヤンバダとの往復書簡を手がかりに、死にゆく者と後に残される者との交流を追った章もおもしろいのですが、もう少し他の例も取り上げてほしかったように思います。 ところで、本書の冒頭にマルセル・デュシャンの墓碑銘である「さりながら死ぬのはいつも他人」という言葉が引用されており、著者はこれを「死の忘却」に近い理解しているように読めるのですが、ここに示されているのはむしろ、「一人称の死」の不可能性を示すものとして理解してこそ、デュシャンらしいアイロニーが生きてくるのではないかと考えます。

Posted byブクログ