中廊下の住宅 の商品レビュー
歴史的な視点から間取り図を読み解くおもしろさを教えてくれる一冊。 明治維新以後の住宅の変遷を、間取り図を中心に分析している。中廊下(家の中を通っている廊下)が、どのような過程を経て出現・発展してきたのかという考察は興味深い。小脇に抱えて、民家園に行ってみたくなった。 「間取り...
歴史的な視点から間取り図を読み解くおもしろさを教えてくれる一冊。 明治維新以後の住宅の変遷を、間取り図を中心に分析している。中廊下(家の中を通っている廊下)が、どのような過程を経て出現・発展してきたのかという考察は興味深い。小脇に抱えて、民家園に行ってみたくなった。 「間取り図を眺めるのが好き」で「歴史的建築も好き」という人にはおすすめ!
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単に日本の住宅の変遷を追っただけの本ではない。この本の背景にあるのは、建築計画学の確立に情熱を注いだ人々が「理念と方法」を探究して歩んだその足跡でした。 この本は日本の建築計画学の確立に尽力した故青木正夫氏と、氏の教え子である岡敏江氏、鈴木義弘氏による著作です。 明治期以降の...
単に日本の住宅の変遷を追っただけの本ではない。この本の背景にあるのは、建築計画学の確立に情熱を注いだ人々が「理念と方法」を探究して歩んだその足跡でした。 この本は日本の建築計画学の確立に尽力した故青木正夫氏と、氏の教え子である岡敏江氏、鈴木義弘氏による著作です。 明治期以降の日本の中流住宅の平面プランが変遷していく過程を、膨大な資料調査・フィールドワークから明らかにして、日本の住宅が抱える建築計画学上の課題を描きだ出しています。 本書の面白さは、在来の住宅プランが政府の意向や社会の動向、一般的な日本人の生活観の変化(または変わらなさ)によって変遷していく過程を描き出している点にあります。 そこに見えるものは、理念と実践を結びつける有効な論理が明治期以降ずっと確立できていなかったことと、日本人の住まいに対する考え方の頑なさでした。 政府の意向や学者、建築家の意見は理念が先行して、広く一般的に有用な実践的かつ具体的な形(プラン)になかなか結びつかない。ようやく戦後「食寝分離論」を理論的背景に51C型プランが作られたり、建築計画学の確立のための研究が始められるに到ります。 一方で、日本人の住まいに対する伝統的な考え方や「住まい方」というものはなかなかに強固だということも、膨大な資料から伺えるもうひとつの事実でした。 印象的なのは本論の最後に、朝起きてからの洗顔・歯磨きの習慣がここ数十年で一気に変わったことを例に挙げ、伝統的なものが合理の下に一気に変わる、という件でした。私はそこに氏の建築計画学に対する期待と、ある種のアイロニーを感じます。 熱く、面白い一冊です。
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