トヨタ・ショック の商品レビュー
刊行はリーマンショック直後なので、今とは置かれている状況が異なる。 それはさえおき、当時まさかの赤字に転落したトヨタの失速した背景を追う。台数重視の戦略、自社の強みを活かせない場所での競争、現場と中央の乖離などなど。 さて、今はどうなっているかというと2021年3月の決算を見れば...
刊行はリーマンショック直後なので、今とは置かれている状況が異なる。 それはさえおき、当時まさかの赤字に転落したトヨタの失速した背景を追う。台数重視の戦略、自社の強みを活かせない場所での競争、現場と中央の乖離などなど。 さて、今はどうなっているかというと2021年3月の決算を見ればトヨタ最強の様相を呈している。販売台数は対前年比で15%落ちているのに、営業利益率は落ちるどころか上がっている。販売台数が下がれば固定費が重荷になって利益率が下がる、なんて当たり前のような話が通用しない。 リーマンショックの反省から生まれた(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)と呼ばれるプラットフォームの共通化と原価低減を実現するクルマ作りが実を結んでいるようだ。
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昨年11月頃から自動車メーカの収益が非常に悪くなり、何度かの修正があった後に、とうとうトヨタは営業赤字となってしまいました。ショックなのは、2008年前期は、2兆2700億円の黒字(p123)だったことです! 手元資金を10兆円以上も保有して堅実経営をしていたトヨタがなぜ円高...
昨年11月頃から自動車メーカの収益が非常に悪くなり、何度かの修正があった後に、とうとうトヨタは営業赤字となってしまいました。ショックなのは、2008年前期は、2兆2700億円の黒字(p123)だったことです! 手元資金を10兆円以上も保有して堅実経営をしていたトヨタがなぜ円高、サブプライム問題があったにせよ、一気に赤字にまで転落してしまったのかが腑に落ちませんでした。この本を読んでも完全にはわかったとは思えませんでしたが、トヨタ自身が北米ビジネスにいかに頼っていたのかがわかりました。 利益の源泉だった北米がおかしくなったら利益が出なくなるのは当たり前ですね、ただ、この数年間は史上最高益を更新し続けていたこともあって、いつのまにか利益を追うことばかりに夢中になっていたようです。これから長いトンネルに入ることでしょう、トンネルを抜けると別世界になっているかもしれませんが、自動車業界の業績が深く影響する業界に身をおいているものとして、悔いのない社会人生活を送って生きたいです。 以下は気になったポイントです。 ・2008年11月6日のトヨタショックから、わずか1ヵ月半で7500億円マイナスとなった要因解析:原価改善とコスト削減で+1300、為替変動で2000(対ドル1円で400、ユーロでは60億円の減少)、販売減少で5700、金利スワップ評価で1100億円マイナス、合計でマイナス7500億円(p20) ・グローバルマスタープラン(グロマス)、その後に導入されたGPM(グローバル・プロフィット・マネジメント)によって、ボトムアップからトップダウンの会社となった(p37) ・テキサス州のタンドラ専用工場が、トヨタ経営を苦しめる元凶となる、国内元町工場ラインでは6車種の混流生産かのうだが、専用工場は柔軟性なし、なので2008年8月から3ヶ月間操業停止することに(p39) ・北米向けの輸出車部品を作っているところは、6割から7割減(p66) ・80年代まではトヨタ社員が直接下請け会社に出向いて、ノウハウを教えて検討したうえでコストダウンの努力をしていたが、今回は頭ごなしに押し付けられた(p78) ・2008年12月の国内での生産台数は、25%減少の24.5万台、世界各地の製造拠点も25%減少した(p92) ・カムリを生産(昨年まで50万台)するケンタッキー工場では、昨年半ばから25日間という異例の操業停止、インディアナ工場・テキサス工場(タンドラ、セコイヤ)も同様(p115) ・トヨタはアメリカでの収益競争において、小型車・ハイブリッドではなく、大型ピックアップトラックやSUV(タンドラ,セコイヤ)で挑んだ(p129) ・英国は2008年に気候変動法2008という法律までつくって、厳しい削減義務を課したのは、排出権取引における主導権を確保するため(p138) ・トヨタの自動車ローンは、2008年3月末で12.2兆円の貸出債権がある、自動車ローンと住宅ローンが連携する米国では、不良債権化が強い(p146) ・2009年1月の国内生産は、前年比4割減の約20万台、2・3月は11日間の臨時操業停止日を設けるので、15万台となる(p154) ・各国自動車工業会の調べでは、2009年販売予想は、日本がマイナス5%、北米がマイナス21%、その他が10~15%、全体で15%(p157) ・奥田、張、渡辺体制で、トヨタが成長のアクセルを踏むことができたのは、円安(110円台)・金融(ゼロ金利、リース)の恩恵である、トヨタの想定為替水準は105円、限界利益率は20%なので、20%近い円高にお手上げ(p175) ・ トヨタはGMに対して技術力は上でも、傘下のローン会社に資金を提供して、自らの負債で販売台数を増やすというビジネスモデルはGMと同じであった(p182) ・CSMが2008年4Qに発表したデータによれば、2007年にくらべて2014年に生産台数が拡大していると予想されるのは、世界51カ国中38ヶ国、減少は13ヶ国、アメリカは07年1054→783(09)後に、2011年に回復、日本は08、09減少(大底)、2014年に回復、欧州では2014年においても減少、2倍以上はインド、インドネシア、ルーマニア等、中国も80%増加(p199)
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トヨタの最大の特長である現場主義を離れ、机上の空論になっていたところがそもそもの悲劇の土台で、そこを世界的な不況が襲ったとの論です。マスタープランの存在がその柔軟性を奪ったという主張もありましたが、そこは一長一短のはず。マスタープランがないゆえに迷走する組織も多いのですから。
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表題から誤解させるが、最近アメリカで起こったトヨタのブレーキ問題以前の話なので注意してください。 やっぱり、アメリカ工場で北米専用ピックアップトラック「タンドラ」を作ったことがターニングポイントになったと思う。あの時、インターネットで情報を知ったとき、「この分野に参入してしまった...
表題から誤解させるが、最近アメリカで起こったトヨタのブレーキ問題以前の話なので注意してください。 やっぱり、アメリカ工場で北米専用ピックアップトラック「タンドラ」を作ったことがターニングポイントになったと思う。あの時、インターネットで情報を知ったとき、「この分野に参入してしまったか・・・」と思った記憶がある。アメリカ人の心であり、ビッグ3のドル箱であるピックアップトラックの世界に踏み込むことがどれほど危険なことかは、その後のトヨタで起こったことで証明された。それほどアメリカの政治は恐ろしい。
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ちょうどトヨタショックのあった後に買ってよみました。あの前後にトヨタ社内で何が行われていたかを知るのには良かったです。 この本から学ぶのは、外聞と自身の保身を図るために決算見通しが甘いままでいた事で、最後首が回らなくてトヨタショックを引き起こすあの決算発表となり、多くの株主に損害...
ちょうどトヨタショックのあった後に買ってよみました。あの前後にトヨタ社内で何が行われていたかを知るのには良かったです。 この本から学ぶのは、外聞と自身の保身を図るために決算見通しが甘いままでいた事で、最後首が回らなくてトヨタショックを引き起こすあの決算発表となり、多くの株主に損害を与えた事。膿は早いうちに出し、失敗は直ぐに認める事が重要だと。 今後は輸出比率の高さ、新興国のキャッチアップなどが課題になりそうですね。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「今更」で片付けてよい問題だろうか? リーマンショックで話題になったトヨタショック それに関する本が安売りされていたので、ついつい手を伸ばした 大企業病と言われる風潮が、トヨタ社内でも充満していたことが分かる カイゼン活動とは、「乾ききった雑巾から水を出す」と言われる程、知恵を絞り出すことが求められていた しかし、病に気づいた頃には、水が滴り落ちていたほど、カイゼンが行われていない それでも大丈夫だと言うおごりが、そこにあったのかもしれない 「大企業病」 大企業だからこそ、陥りやすいこの病 この企業なら大丈夫だろうというおごりが、製品の不良を招いたのかもしれない 自動車産業の裾野の広さが、経済悪化を拡大させたのかもしれない でも、それ以上に見るべき点は「トヨタに依存をしすぎた日本経済」 もし、トヨタに、自動車産業に依存をしない仕組みを作っていれば 先日のリーマンショック程の問題は起こらなかったのかも リーマンショックの問題は、アメリカに依存した自動車産業、その自動車産業に依存した日本経済 今は、回復した様に見えるが、同じ状況に陥ったら、また同じ様な事象が発生するだろう
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トヨタ方式は健在だが、肝心のトヨタという会社自体が、本質を見失ってしまった。数年のトヨタを見て確かにこうなることは予想できた。けど日本が誇るこの会社の再生は近いとも思えるし、信じたい。
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トヨタ本社内部ですごくはやっているというこの本。 現在の世界恐慌から見え始めたトヨタの失敗について、事実にかなり忠実に描いているという。 半分までしか読んでいないが、本書の要点をまとめる。 トヨタはかつて、モノづくりのリーダーとして、世の中のニーズに常に機敏に反応しつつ、 壊...
トヨタ本社内部ですごくはやっているというこの本。 現在の世界恐慌から見え始めたトヨタの失敗について、事実にかなり忠実に描いているという。 半分までしか読んでいないが、本書の要点をまとめる。 トヨタはかつて、モノづくりのリーダーとして、世の中のニーズに常に機敏に反応しつつ、 壊れにくさ、大衆の重要に応えたタイプの車種製造で世界の”客”を魅了してきた。 しかし資本主義の流れの中、いつの間にか、「より儲ける方法」=「お金ちを喜ばせる方法」を模索し始め、 ニーズの変化に対応しにくい中長期計画である「グローバルマスタープラン」を軸に沿え、 それに従って全ての動きを決めるようになった。 中心幹部はやがて、客一人一人を喜ばすことより、大きな投資をしてくれる”株主”の顔色をうかがうため、 表向きの業績の数字を、現実的なものよりかなり楽観視するような嫌いを見せ始め、 地に足のつかない経営が続いてきたという。 この本を読んでいたころ、朝日新聞の「トップランナー」の紹介に、マッキンぜー日本支社長が紹介されていた。 彼はもともとカンボジア難民としてフランスに逃げ、フランスで大学を出、いろいろな現場で働いたのちマッキンゼーに落ち着いたという。 そんな彼も、昔の日本のモノづくりを称え、同時に現在の日本のモノづくりを嘆いていた。 昔は、製造現場の人々が皆して、いかにいい製品を作り上げるか、活発に議論がなされ、それが元に方向性も変わっていく、 まさにボトムアップ式の構造だったの対し、現在はトップ以外はトップに従うだけの、トップダウン方式。 同じような話題で、ある雑誌に三鷹光器の会長の記事があった。 この会社、完全なる中小企業、一つ一つの製品を大型機械ではなくまさに「手作り」しているに関わらず、 NASAや医療現場など、世界に期待されるプロジェクトや、人の命がかかった現場における信頼を勝ち取る”レンズ”を作っている。 現在では個人向けの販売はされていないほどである。 この会社は会長が立ち上げた。彼は現在も現場で社員の指導をする。 定規から何から、すべての道具さえ、「人任せに買ってくる」のではなく、「自分で作らせる」のだという。 そんな彼が今、日本の社会に、何を思うのか。 彼は言う。 「今は、お金さえあれば何でも買える、誰かがやってくれる、という時代になっている。 人間は日々、ものぐさになろうとし続け、そのなかで何も考えず、何もできなくなっていく。」 まさにその通りだ、と感じた。 100年に1度の世界恐慌が叫ばれる中、そろそろ人間は、お金に対する過剰な期待を捨て、他人任せによる思考停止という快楽より、 自分から何かを生み出すのだという思い、行動、そしてそれに伴う困難を乗り越える達成感を選び直す時を迎えているのではなかろうか。
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トヨタの張付き記者であった井上氏が トヨタの現状を探った本。 トヨタの急激な世界展開、そして、収益性の高い レクサスへの傾斜が、良いクルマをより安く作ることを 大事にしてきたトヨタの流れを変えてしまった。 そのことが、トヨタの過去にない危機を招いていると指摘している。 あまり...
トヨタの張付き記者であった井上氏が トヨタの現状を探った本。 トヨタの急激な世界展開、そして、収益性の高い レクサスへの傾斜が、良いクルマをより安く作ることを 大事にしてきたトヨタの流れを変えてしまった。 そのことが、トヨタの過去にない危機を招いていると指摘している。 あまり思想はないが、この10年でトヨタで何が起こっているのかを 知るには良い本だ。
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