1,800円以上の注文で送料無料

山県有朋 の商品レビュー

4.1

20件のお客様レビュー

  1. 5つ

    5

  2. 4つ

    7

  3. 3つ

    4

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2014/02/11

大学教授の伊藤之雄さんによる明治以降の元老の山県有朋についての本。 山県有朋の政策や人物の是非はともかく、そしてこの本の主旨とは異なるかもしれないが、歴史認識というものの曖昧さと怖さを感じた。 山県有朋は、小説やドラマなどでは、ことごとくダメなイヤな人物として描かれている。も...

大学教授の伊藤之雄さんによる明治以降の元老の山県有朋についての本。 山県有朋の政策や人物の是非はともかく、そしてこの本の主旨とは異なるかもしれないが、歴史認識というものの曖昧さと怖さを感じた。 山県有朋は、小説やドラマなどでは、ことごとくダメなイヤな人物として描かれている。もっとわかりやすく言えば、司馬遼太郎と大河ドラマがボロクソに描いている。 歴史書などでも、政策的にも陸軍を本部主導の官僚制で統制したことで第二次世界大戦を間接的に招いたと指摘されることもある。 だが、この本を読むと、史書や書簡の解説などにより、それらの描写や指摘には疑問点があることがわかる。それもかなり反証的に。 山県有朋の是非はともかく、歴史認識が騒がれる昨今、歴史認識というものはかなり思い込みでできており、曖昧なものだと自省したな。良書だな。

Posted byブクログ

2012/10/20

 1945年の「敗戦」という「帝国の破綻」の原因はなんなのかという疑問を持って1930年代の書を読んでもなかなかその理由はよくわからないという思いを持っていたが、その原因を知るには「明治期」まで遡らざるを得ないのではないのかと思い本書を手にとってみた。  本書は「山県有朋」という...

 1945年の「敗戦」という「帝国の破綻」の原因はなんなのかという疑問を持って1930年代の書を読んでもなかなかその理由はよくわからないという思いを持っていたが、その原因を知るには「明治期」まで遡らざるを得ないのではないのかと思い本書を手にとってみた。  本書は「山県有朋」という明治から大正にかけて活躍した人物の生涯を追いかけた書である。「山県有朋」は、日本の政治システム、軍事システムの構築に大きな影響を与えたというよりも、それらのシステムをつくった「創業者」のひとりであることが本書でよくわかった。  「山県有朋」の出生は1938年(天保9年)。幕末から明治維新時には20代後半で活躍している。その後「山県有朋」は、明治政府のなかで「参議」「陸軍卿」「政治家」「参謀総長」「枢密院議長」「元老筆頭」と歴任している。彼が、なにを目指し、なにを行ってきたのかを詳細に本書は追いかけている。  これを読むと、まさに「山県有朋」は「伊藤博文」とともに明治政府という「国家システム」をつくった凄い軍人・政治家ではないか。  しかし、「山県有朋」のイメージは「暗い」。晩年の昭和天皇の結婚をめぐる「宮中某重大事件」などの「政治的敗北」もあるが、椿山荘などの大庭園をもつ「権力者」への厳しい視線は、当時も社会に広がっていたのだろう。到底「大河ドラマ」の主人公がつとまるようなロマンあふれる政治家には見えない。  本書は、「山県有朋」の生涯を知るだけではなく、「明治国家」というアジアの発展途上国がどのようにして西洋的な国家システムを導入してきたのかをも知ることができる。  わかりやすく言うと「伊藤博文」が「憲法制度」を導入し、「山県有朋」が「軍事システム」を導入したと言えるのだろう。本書を読むと、国家や軍事の諸制度は、それぞれの民族的特徴に合わせて、適合する制度を模索しながら導入するしかないことがわかる。  では、山県有朋が導入した「日本陸軍」の根幹システムは、歴史的に見た場合はどう評価されるのだろうか。  「陸軍参謀局の充実」「徴兵制の制度の強化」から、「参謀本部の独立」や大陸を見据えた「師団増設という軍拡の推進」。  本書は「山県の陸軍は太平洋戦争の陸軍に直接つながるわけではない」と結論づけているが、本書の経過を読むとその視点は違うのではないのかとも思った。  「山県有朋」は、生真面目な性格そのものに「日本陸軍」を設計し、創業した。その時点で昭和陸軍の政治を壟断した暴走を予期できなかったことは無理はないと思うが、政治と軍事の境界が不文明な創業期のシステムが、昭和陸軍の体質をつくったのではないかとも思える。  本書は、日本の明治から昭和にかけての歴史をいろいろ考えさせてくれる良書であるが、何しろ山県有朋は83歳で死ぬまで現役で政治に影響を持っていた。この長い政治・軍事生活を追いかけただけに本書も476ページの大著である。内容の検証は他の多くの別の視点からも必要かと思えた。  本書を歴史の重厚さと面白さを教えてくれる良書として高く評価したい。

Posted byブクログ

2012/09/18

地元の図書館で読む。再読です。木戸、大久保との関係か興味深いです。木戸との関係はうまくいかない。山県は派閥的動きが好きではない。木戸はそれが気に入らない。そのため出世が遅れる。それに対して、大久保とはうまくいく。ここら辺は面白い。再読の価値があります。

Posted byブクログ

2011/04/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

[ 内容 ] 陸軍と官僚を支配下において山県閥をつくり、デモクラシーに反対し、みんなに憎まれて世を去った元老・山県有朋は、日本の近代史にとって本当に害悪だったのか? 不人気なのに権力を保ち続けた、その秘訣とは? 首相、元帥、元老にして「一介の武弁」。 [ 目次 ] 吉田松陰の「忠実」な弟子-はじめに 松陰門下の青春-尊王攘夷と奇兵隊 西郷隆盛への憧れ-討幕への戦い 「狂介」から「有朋」へ-欧米巡遊・廃藩置県 山県参議兼陸軍卿の誕生-征韓論政変・台湾出兵 にがい勝利-西南戦争 陸軍の充実-朝鮮をめぐる日清対立 陸軍の長老から政治家へ-日本陸軍の大枠形成 最初の組閣-帝国議会開設・伊藤博文との対立 やせがまんの限界-日清戦争 元老としての組閣-日露協商と山県系官僚閥の形成 参謀総長として陛下に仕える-日露戦争 きどわい勝利の後の現実-桂太郎と原敬の挑戦 元老筆頭の権力-第一次世界大戦と大正デモクラシー 晩年の落とし穴-宮中某重大事件 山県有朋と日本-おわりに [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]

Posted byブクログ

2011/02/11

山県は「愚直で優しい人だった」というのを本全体で主張している。再評価系のものは少し感情的になる場合が多い。ですが、山県については悪意ある(ように見える)性格改変が結構あるので、本書を読んでおく価値は有ると思う。プラス一次史料を読んだら定説とは違った山県像が見えてくる…筈。

Posted byブクログ

2010/10/15

けっこう以前から気になっていた山縣有朋サン。 伊藤博文本を読んだ勢いでこちらも手にとってみました。 が、普通の新書の約2倍の厚さにちょっとビビリました。。。普通のノベルス位の厚みなのですよ。 ですが初心者にもけっこう読みやすく書かれていて一安心。 よくある対比で「伊藤博文=陽」...

けっこう以前から気になっていた山縣有朋サン。 伊藤博文本を読んだ勢いでこちらも手にとってみました。 が、普通の新書の約2倍の厚さにちょっとビビリました。。。普通のノベルス位の厚みなのですよ。 ですが初心者にもけっこう読みやすく書かれていて一安心。 よくある対比で「伊藤博文=陽」「山縣有朋=陰」とされていますが、私のイメージもその通りでした。 用心深く、石橋を叩いても渡らない、権力欲が強く、一度握った力は決して手放さない。 といった印象。 だけど山縣メインの作品を読んだことがなかったので、ずっと本当はどうなんだろう?と気になっていたのです。 今回手に取ったこの本はどちらかといえば山縣擁護派。 これまでに出されている山縣研究本に対して一次史料を駆使してさまざまな反駁がなされていました。 それを読んで思ったのは、史料の解釈も人それぞれなんだなぁ、という当然のことでした。 一番気になっていたのは対高杉晋作、および対伊藤の関係。 この作品では二人とは「信頼しあっていた」とされていますが、どうもそういう印象は私にはないんです。 特に高杉のほう。晋作はやっぱり松蔭先生と久坂以外はそれほどの扱いはしていないんじゃないかと。。。 ですが山縣にあげた瓢箪を惜しがってやっぱり取り返したり、反対に山縣は晋作の死後、おうのさんに吉田につくっていた庵を譲ったりしているので、それなりに仲はよかったのかなぁとも思いますが。 まあ、結局のところ自分で一次史料にあたる時間も能力もない以上、よくわからないといってしまえばそれまでなのですけど。 それともう一つ気になっていたのが赤根武人の贈位申請の問題。 明治にはいって、志半ばで倒れた志士たちに贈位されることがあったのですが、その時に第3代奇兵隊総管であった赤根についても申請があったのです。(当時山縣は総管の下、ナンバー2の軍監) でもそれは山縣の鶴の一声で却下されてしまいます。 「自分の目の黒いうちは赤根に日の目は見せない」と言っていたとか言わないとか・・・。 この件に関しての記述はこの作品では一切出てなかったのですよね~。 どう解釈されているのか気になっていたのですけど。どうも釈然としません。 全体的に解釈が好意的すぎるような気もするのは、私が持っていたイメージが悪すぎたせいなのかな。 それでもまあ、これまでの「悪」なイメージは少し払拭され、「愛すべき普通の人」的なイメージは加わりました。

Posted byブクログ

2010/07/20

読み応えのある山県有朋伝。 所々山県の心情を断定的に書いていて、小説を読んでる気になる部分がなきにしもあらず。 葬儀の模様、以前に知った時はちょっと複雑な気になっただけだったのが、この本を読み続けて最後の葬儀の記述。泣きそうになりました。

Posted byブクログ

2010/07/09

山県をかなり好意的に解釈している本。 結構突っ込みどころ満載。山城屋のところもっとkwsk! うーん、バッシングしてる本を読みたいわけじゃないんだけど、もっと中立的に山県を研究してる本はないのか… なが~く生きた人物の一生について書くと、こうなっちゃうんだろうか。

Posted byブクログ

2009/10/04

山県有朋研究に新しい局面を開いた、注目すべき書。 従来の「陰険」な「陸軍支配者」である「山県」像を、徹底的な史料の読み込みにより、説得的に反駁する。 この書により、山県は従来のイメージを脱し、以外に繊細で、気配りの男として描かれる。 一読に価する書。

Posted byブクログ

2009/10/04

山県有朋っていうと暗くて陰険で権謀術数をつかって藩閥政治を行い、軍部の統帥権の独立を確立させ政党政治を妨害した、っていうイメージが一般的なカンジなんだと思う。 だから歴史上の人物の中では極めて人気が低い。 いままで彼を扱った数少ない本(人気ないからすくないんだよね)でもそのあ...

山県有朋っていうと暗くて陰険で権謀術数をつかって藩閥政治を行い、軍部の統帥権の独立を確立させ政党政治を妨害した、っていうイメージが一般的なカンジなんだと思う。 だから歴史上の人物の中では極めて人気が低い。 いままで彼を扱った数少ない本(人気ないからすくないんだよね)でもそのあたりが強調されてますね。 しかし、この本はそういう評価も踏まえつつも彼の「愚直さ」ということに焦点をあて、明治の近代化に果たした役割を肯定的にとらえています。 確かに陰険オヤヂだけだったら、あそこまでの地位と仕事はできなかったわけですよね。 原敬あたりにもそれなりの評価を下していた点、そして明治期の日本がそれなりシビリアンコントロールを行っていた点も認識できました。 華々しい明治の元勲では見えてこない、ある明治の一断面を感じさせる本です。

Posted byブクログ