あなたと共に逝きましょう の商品レビュー
夫が大動脈瘤を患い、破裂の恐怖に怯えながら夫婦でその治療に奔走する話。 同時期の短編集『鯉浄土』でも同じエピソードを扱った話があり、当時の作者を強く捉えた題材だったと思われる。或いはひょっとしたら身辺で同病を患った人がいたりしたのだろうか。 手術しなければ百パーセント助からないと...
夫が大動脈瘤を患い、破裂の恐怖に怯えながら夫婦でその治療に奔走する話。 同時期の短編集『鯉浄土』でも同じエピソードを扱った話があり、当時の作者を強く捉えた題材だったと思われる。或いはひょっとしたら身辺で同病を患った人がいたりしたのだろうか。 手術しなければ百パーセント助からないと医者から告げられながら、それでも五パーセントの失敗の可能性や後遺症のリスクに、夫婦はなかなか決断できない。耳にした民間療法や岩盤浴の温熱療法に一縷の望みを託してみたりする。 本書を読んでいて、生命というものが観念的、抽象的なものではなく、ドクドクと一時も休むことなく心臓が脈打ち、全身の隅々まで血液が送られて維持されているのだという、生々しく即物的なものなのだということを思った。
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1945年生まれ、1887年「鍋の中」で芥川賞の村田喜代子さんの「あなたと共に逝きましょう」(2009.2)を読みました。強烈なインパクトを受けた作品です。鹿丸義雄64歳と香澄62歳夫婦の物語。義雄に「動脈瘤」ができ、手術しかないという医者の言葉は聞くものの、温泉治療で、食養療法...
1945年生まれ、1887年「鍋の中」で芥川賞の村田喜代子さんの「あなたと共に逝きましょう」(2009.2)を読みました。強烈なインパクトを受けた作品です。鹿丸義雄64歳と香澄62歳夫婦の物語。義雄に「動脈瘤」ができ、手術しかないという医者の言葉は聞くものの、温泉治療で、食養療法で「瘤」が縮んでくれないかと二人で頑張る姿。でも、結局手術を回避できなくなったときの本人の気持ち、寄り添ってきた妻の気持ち・・・。読了後、握り拳ほど(約300g)の心臓の動きを感じ、心臓への感謝の念が心から湧いてきました。
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60代共働き夫婦を襲った夫の動脈瘤破裂の危機。「一個の石で電線に止まっていた二羽の鳥が一緒に落ちる」感覚を感じるところは、自分の身に置き換えても共感できる。今は夫婦共に元気で子育てに慌ただしい毎日を過ごしているが、いつかこんな時が来るかもしれない。互いを思いやり最良の夫婦関係を築...
60代共働き夫婦を襲った夫の動脈瘤破裂の危機。「一個の石で電線に止まっていた二羽の鳥が一緒に落ちる」感覚を感じるところは、自分の身に置き換えても共感できる。今は夫婦共に元気で子育てに慌ただしい毎日を過ごしているが、いつかこんな時が来るかもしれない。互いを思いやり最良の夫婦関係を築いていきたい。
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大きな動脈瘤が発見され、破裂の危険があるため即刻手術を勧められる夫。 妻は仕事をしながらも時間をやりくりして、 夫に付き添い湯治に出掛けたり、手間の掛かる食養生を引き受ける。 妻の語りで進むこの話は、一見夫唱婦随に見えるが決してそうではなく、 主観を交えず、即物的に夫の病を観察す...
大きな動脈瘤が発見され、破裂の危険があるため即刻手術を勧められる夫。 妻は仕事をしながらも時間をやりくりして、 夫に付き添い湯治に出掛けたり、手間の掛かる食養生を引き受ける。 妻の語りで進むこの話は、一見夫唱婦随に見えるが決してそうではなく、 主観を交えず、即物的に夫の病を観察する彼女は終止傍観者のようだ。 カテーテル検査の直前、恐怖でどんどん血圧が上がっていく夫に、 「臆病者。弱虫。意気地なし」と心の中で罵る妻。 万が一の可能性もある手術を受ける覚悟が決められず 最後まで民間療法へとあがく夫にひきかえ、 「死なばもろとも」と、早々に一蓮托生の腹を括る妻の潔さよ! 彼女はある日テレビでちあきなおみの歌を聴いてから、 女郎屋で遊女になった夢を繰り返し見るようになる。 女の情念を切々と歌い上げる「ちあきなおみ」の歌声と、 官能的な夢の世界との見事なリンクに、思わず膝を打った。 リアリティー感が半端ない文章に、数年前の自分自身の手術の経験が重なり、 実在の人物の手記を読んでいるような錯覚に何度となく陥った。 妻の淡々とした夫への視線が、時おり幼い我が子を見るような眼差しに変わったりして、 長年連れ添った夫婦の機微もしっかり描かれている。 村田さんは初読みだったが、破裂寸前の瘤をパンパンに張った水風船に喩えるなど、 何かのシンボルとしての「モノ」の選び方と比喩表現に、 卓越した独特のセンスを感じる作家さんである。
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身につまされる思いで読み終えました。 手の届くとこにちかずいた「死」、カミサンを看取るか看取られるか? それよりも残された時間を夫婦で楽しく元気ですごしたいもんだ。
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長年連れ添った伴侶に動脈瘤が見つかった。本人はもちろん、妻である主人公も病気に引きずられるように生活や思考を変えていかざるを得ない。重いテーマなのに暗くならずに読めるのがこの作者の美点だと思う。治療法や手術についてもかなり詳しかった。民間療法も取り入れる。とても興味深かった。力ま...
長年連れ添った伴侶に動脈瘤が見つかった。本人はもちろん、妻である主人公も病気に引きずられるように生活や思考を変えていかざるを得ない。重いテーマなのに暗くならずに読めるのがこの作者の美点だと思う。治療法や手術についてもかなり詳しかった。民間療法も取り入れる。とても興味深かった。力まない文章には時々おかしみさえ感じた。この作者の文章を読むのが面白い。他の作品も読んでみようと思う。
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夫に病気がみつかった。 6センチもある動脈瘤。いつ破裂してもおかしくないし 破裂したら即死となる・・・ 夫婦二人三脚で始まった病気との闘い 食事療法、温泉療法・・藁にもすがる思いで過ごす日々の後 結局手術に踏み切る 夫はどうなるのか。妻は?? まだ年齢的にピンとこないけど で...
夫に病気がみつかった。 6センチもある動脈瘤。いつ破裂してもおかしくないし 破裂したら即死となる・・・ 夫婦二人三脚で始まった病気との闘い 食事療法、温泉療法・・藁にもすがる思いで過ごす日々の後 結局手術に踏み切る 夫はどうなるのか。妻は?? まだ年齢的にピンとこないけど でも老いも死も、誰にでも来ること。 自分たちはどうだろうと考えさせられました
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もう子どもは巣立った。団塊世代の会社経営の夫と大学講師の妻の日常はほとんどが単独行であり、互いの仕事に侵食することもない。恋愛結婚で結ばれたのに、今や住まいをシェアしているだけ、なんでこんな男を好きになったのか・・などと少々うっとうしく感じていたのだ。 そんな生活が急変、夫に心...
もう子どもは巣立った。団塊世代の会社経営の夫と大学講師の妻の日常はほとんどが単独行であり、互いの仕事に侵食することもない。恋愛結婚で結ばれたのに、今や住まいをシェアしているだけ、なんでこんな男を好きになったのか・・などと少々うっとうしく感じていたのだ。 そんな生活が急変、夫に心臓大動脈瘤が見つかった。いつ死んでもおかしくない爆弾のような瘤。手術を回避したい思いで、わけのわからぬ食事療法やら岩盤浴やらに、二人で走る。必死だけれど滑稽。命に執着する姿は滑稽だけれどとても哀しい。 大学の同僚と、夫が死んだら一緒に住もうねなどとほざいでいたのに、目の前の夫の危機に巻き込まれ、翻弄されていく妻。女郎になっている自分を夢に見る。男が救いに来てくれる・・・・。誰??? いったい夫婦って何なのだろう。 瘤のある夫と手術で瘤を失い健康を取り戻したかにみえる夫。妻の中で見知らぬ人になっていく。 初老期のウツといってしまえばそれまでだけれど、ほんの小さなことでも人間の関係バランスが崩れて取り返しのつかない心境に落ち込んでいく。心って不思議。
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後10年もしたら 私と同居人はこういう立場になるかもしれないな・・ と思うと ある意味切実で でも何だか現実味がなくて 遠いようで近くて
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