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2016/01/11

脳科学者、茂木健一郎のエッセイ集。 ユーラシア旅行社の『風の旅人』(現在は、かぜたび舎が年2回発行)に、『都市という衝動』(2003~2005年)、『今、ここから全ての場所へ』(2005~2008年)のタイトルで連載されたものが収められている。 著者が思考を巡らせる場所は、東京、...

脳科学者、茂木健一郎のエッセイ集。 ユーラシア旅行社の『風の旅人』(現在は、かぜたび舎が年2回発行)に、『都市という衝動』(2003~2005年)、『今、ここから全ての場所へ』(2005~2008年)のタイトルで連載されたものが収められている。 著者が思考を巡らせる場所は、東京、北京、ロンドン、ケンブリッジ、アマゾン、バリ島、イェルサレム、波照間島、米チリカウア、(九州)飯塚、渡嘉敷島、サンクト・ペテルブルク、広島、アトランタ。。。 その中で、「学生たちと夏の終わりに訪れた沖縄の波照間島は、不思議なものたちの気配に満ちていた。・・・最も見慣れた光景が、この上なく不思議なもののように思われる。そのようなダイナミクスの中にこそ、人間の魂を生き生きと保つ妙薬がある。不思議なものに出会うために、都会を出る必要はない。波照間で私が出会ったのと変わらぬ不思議が、この都市の空間の中にも満ちているはずである」という思考は印象に残る。 また、「今、ここ」は茂木氏の思考のキーフレーズのひとつであるが、本書ではそれを、「「今、ここ」において、ある文脈を引き受けているということは、その人の存在がその文脈で尽きてしまうことを意味するのではない。「行く河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」。鴨長明の『方丈記』の冒頭は、流れゆく生命の本質を表す。・・・いつかは変わってしまうことがわかっていたとしても、「今、ここ」において信じていることの中に没入することこそが、高度に倫理的な振る舞いでもあるはずだ」と語る。 「今、ここ」における著者の思考に触れられる一冊。 (2009年2月了)

Posted byブクログ